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11-シルシ-

年内最後っ!!

皆様、こんな駄作を読んでくださってありがとうございますっ


『王族について


 王族とは、ヴィパル王国(以下、王国)を治める家であり、また王国内で起こった騒動・戦争などの争いを鎮圧するとともに王国の安全や経済について考える者たちのことである。王族と話せること自体が限りある人物に限定される。

 彼らは、我らアンフォッシ家を筆頭にし数名の貴族を従え、《王国直下軍》というものをつくり、主に国の警護や戦争の伝達などの仕事をさせた。

 王国には《王国直下軍》のほかに、王位を継いだものの命令しか聞かない七人で構成された戦闘員がいるとされる。この七人は《王族直下軍》にあるアンフォッシ家の下にある三家のどれか一つを選択して従えることができ、この七人が主に戦争の鎮圧をするとされている。ただし、七人の名前、顔、名前など明かされているのはたったの七人だけだということである。


 王族の者は皆、特殊な能力を使える。ただ、その能力はすべて同じもので並外れた能力を持つ者はいなかった。また、王族ではなくても特殊な能力を持つ者は王族に近しい存在になれた。

 王族の能力は明かされてはいないがかなり強力だとされている。それがどのようなものかは不明だ。しかし王族は能力を持ち、また〝王家の印〟を持つものに王位を継がせている、としている。

 王家の印さえ、王族は明らかにしていないが今までの王族の写真からいくつか想像ができる。まず、髪の色だが、これはほぼ色素があまりない薄い茶色を持っているのが特徴であり、これに関しては王族全体に見られる。次に、瞳の色である。これは、青と黒が混ざり合った深い色をしているのが特徴である。最後に、これは確証がないのだが身体に必ず傷がある。その傷の形・大きさは現段階では判断ができないが線がクロスするようになっていてそれがある場所は人それぞれだろうと推測されている。

 また、王族内でも元王位また現王位に近しいものであってもその特徴が必ず出るとは限らず、血のつながりが薄いとされるものの中から王位の印を持つものが生まれることもあるため、王族内では生まれたときにすべてが決まる。さらに、王家の印をすべて持つものが生まれているときは他に何人生まれてこようと王家の印は出ないとされる。つまり、王位を継げるのはたった一人とされておりその継いだものが死するときまたは王位を継いだ時のみ出るされている。』


 王族に関するのはまだあと何ページかあったが、全体・六百ページほどの十分の一にも満たされないページ数であり王族について分かっていないことが少ないのだと推測される。

 颯希は考えていた。冷静だった。


 王家の印と、自分の特徴について。


 王家の印は三つあり、一つが髪の色、二つ目が瞳の色、三つ目が身体にある傷である。髪の色・瞳の色は全く同じで、思わず息を止めてしまった。呼吸が止まるほど、大きな不安に襲われた。三つ目の傷も、最近できた傷がその特徴にあっていた。『線がクロスするように』そこの文章だけが異様に頭に残る。何度も響く。背中にある傷は、二本でセットになった線が縦と横にクロスしていて真ん中にちょうど四角い場所ができるような傷だ。特徴に、当てはまる。線がクロスしているのは間違えがないのだ。


 颯希は焦った。ただものすごく大きな焦りと不安に襲われた。


 もし、今こうして探している王族が自分だったら?


 そういう不安にただただ駆られた。でも、それはあまりにも現実味離れしている。なぜなら、『王族内では生まれたときにすべてが決まる』と言う文章があるのだから、王家の印は、王族にしか出ないはずだ。この姿は、祖母が外国人だから仕方の無いもので、母はハーフでそうしたら必然的に自分はクォーターと言う立場だ。四分の一だが確実に外国人の血が流れている。弟の雄介だって同じだ。祖母の母国は聞いていないが、きっと、地球のどこかの国だろう。ただ。颯希の頭の中に今まで得てきた数少ない情報の中から仮設が組み立てられていた。自分の考えが嫌になる。目を細めて思った。


――地球の人がヴィパルに行けるのなら、ヴィパルの人だって、地球に行けるのでは?


 (かぶり)を振る。そんなはずはない。絶対にありえない。

 しかし、とそれを拒否する考えがある。つまり、ヴィパルと地球とが行き来できることを認めているのだ。

 例えば亜妃。はじめあったときは考えもしなかったがなぜ亜妃は朽ちた木の穴に落ちれば地球に戻れることを知っていたんだ。

 そう考えても颯希は自分の考えを真っ向から否定した。どこにも、証拠はない。


 王家の印が傷以外の二つに当てはまる自分がいるのだから彩里たちは顔が、顔がと騒いだのだろうか。黒のコンタクトで、目の色をぼやかしたほうが早いとそう思ったのだろうか。もし背中の傷に気が付いたら、ここの三人はどんな行動に出るのだ。


 突然、言いようのない恐怖が襲った。


 もし、本当に王家の印と一致していることがばれたら、わたしはどうなるのだろうか?


 息を飲む。そして、本に向かって俯いた。何度も読んでも、そこにあるのは颯希の特徴だけだ。


「颯希?」


 滉だった。颯希のいつの間にか震えていた肩を抑え話しかけてくる。


「大丈夫か?」


 ああ、滉は知っていたんだ。否、滉を含む全員が知っている。唐突にそう思った。全員は分かっていたのだ。〝王家の印〟を。それに怯える、自分のことを。

 颯希は深呼吸をした。滉が目をしっかりと見ているのが分かり、その奥で彩里も亮も心配そうにこちらをうかがっていたのに気付いた。きっと三人は、味方だ。


「うん、大丈夫。……多分」


 滉が頷いた。そして、肩に置いた手を颯希の頭に乗せる。そのまま滉は、颯希から一番遠い先ほどからいた位置に陣取り、また本を読み始めた。滉は本が好きなのだろうか。出会った時からずっと本を読んでいる。何を読んでいるのだろうか。ぼんやりとそう思う。


 深呼吸をする。大丈夫だ。みんな味方だ。ここにいる三人は、少なくとも。


 王族に関する続きのページをめくって、それを読んだ。


『 王族は基本、姿を見せないが式典の際にその姿を見せる。その姿を見たものは、気持ちがよくなりそして忠誠を強く誓う。誓いなおすというのが正しいのか。それが王族の能力に関係しているのかは不明だが、王族には不思議な力があるということは周りの人々にも周知の事実である。』


 たった数行だけ読んだ。どうやらあとは、王族の家系図があり、ところどころに写真があるだけである。この本が書かれたのは十年以上前だ。王族全員の顔写真が載っていなかったのであまり深くは見なかった。


「颯希、休憩する?」


 彩里が言った。いつの間にか近くに来ていた彩里のそばは、いい香りがして安心した。ありがたいことに彼女は、周りの人に気を使うのがとても上手で、その声は落ち着きを取り戻させた。


「ううん、もうちょっと」


 思わず顔の力が抜けた。今迄顔がこわばっていたのかと颯希は驚き、どんな顔をしていたのだろうかと想像する。


「そう? でも明日もあるし、もう夕方よ。夏といっても、ここはそんなに日が長くはないわ。というか、季節の区分があまりないわ」

「え、そうなの。……ても、うん。ありがとう。なんか、もう少しで掴めそう」


 自分で言って自分で驚いた。掴めそうとは、何事か。何が掴めそうなのか。


「がんばれ」


 彩里がそう言った。心の中に、温かな陽だまりができた気がした。安心する暖かみだった。ただ、彩里の顔が何かを含んでいたのだが。


 颯希は考えた。掴めそうだ。何が? そして思った。能力についてか、と。


 王族の能力。たった数行に書いてあった情報は少ない。『王族の姿を見たものは気持ちがよくなり、忠誠を強く誓う』内容的にはこうで、それが能力と言えるものなのか、まったく思えなかった。それは単純に、(たみ)が思うことなのでは、と言う気持ちが颯希を捕まえてならなかった。


 もっと他に、王族の能力について書いてあるもの……。ぴくっぴくっと手が動く。

 ページを眺め、家系図で止まった。はじめ見たのは名前だけだったが数ページ後には写真があったのだ。そこにあった先代王女の写真に目が釘付けになる。そんなはずはない。その思いが頭をよぎるが、確かめることができるのは家に帰ってからだ。

 颯希はそう思って、机の上にあった五冊の本の中から、『我々の力』という題目の本を手に取った。


読んでくださって本当に本当にありがとうございました<(_ _)> 

今年最後の更新です。来年もよろしくお願い致します。

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