夕飯
久々の更新、でも量が少ない
ところで、今俺たちがどこにいるかというと、午後家から帰ってきて――といっても一時間程度しか家を空けていないが――荷物の整理をしているところだった。
まあ遊びに行ったことを話に入れても読者のみなさんはつまらないことだろうから省かせてもらう――おっとこれはあんまり言ってはいけないことだ。あくまでプロローグだけでの使用だ。
で、家具の整理はまだ終わってはいないが、まずは自分部屋を整理するとのことだった。
引っ越し屋さんに運んでもらったベッド類を自分の好みに配置し、ひと段落着いた俺は、ベッドに横になっていた。
しんと静まり返る部屋に、突如来訪者が訪れる。
「お兄ちゃん、配置終わった?」
ふすまを開け、そこから顔をのぞかせているのは妹の樟葉であった。
「どうした、何か用か?」
「いや、別にそこまで大した用じゃないんだけど、夕飯、何にする?」
部屋に体を滑り込ませるように入ってきた樟葉に、俺は、
「何でもいいよ、しいていうなら簡単なものでいいんじゃないか? カレーとか」
「そう? 一応お父さんからお金貰っているんだけど・・・・・・」
「親父から・・・・・・?」
珍しいことだった。親父はケチな人だ。なんたって、この空き家の掃除をするのに、わざわざ俺たちに行かせるほどだ。
そう考えると、引っ越しなんてことはとんだ判断だったことだと改めて思う。
それはともかく、そんなケチな親父が俺たちになんの理由もなく樟葉や俺に金を渡すということは、天文学数値に等しいのであった。
「ねえ、どうする? それでもカレーにする?」
「いや、せっかくの親父の好意甘えさせてもらおうぜ。樟葉の得意なやつでいいよ」
樟葉は分かったと言うと、買い物に出かけた。
さてと、俺はそのうちにお宝本を隠す場所でも探しておくか。
夕飯の時間がやってきた。
台所で樟葉がトコトコやっているときに、俺はテレビを見させてもらっていた。
手伝おうか? と聞いたところ「手伝わなくていい!」という返答が来たのでこうさせてもらっている。
時刻は午後六時になっていた。家から持って来た時計がそう示していた。
ニュースが流れている最中、俺はどうしても気になることがあった。午前中に聞こえた足音だ。聞いたと思うがその足音を出した人の姿が見当たらない。空耳だったということであのときは結論を出してはいたが、やはり、今の今まで頭の隅で考えていた。
こうして何もやることもなくなり見ているテレビもつまらないため、そういった頭の隅で眠っていた考えがとうとう頭の中の在庫が少なくなってきたから出てきてしまったのだ。
そう考えていると、夕飯が出来あがったらしく、テーブルに並べていた。
料理は野菜炒めに味噌汁、それに日本人の主食であるご飯を並べたものだった。
なんと素朴な――いや、そんな風に思ってはいけない! 考えてみろ。俺に何の料理が作れるっていうんだ・・・・・・卵焼き? たったそれだけだ! それに比べ、樟葉のメニューを見てみろ。野菜炒めに味噌汁。うまそうじゃないか! せめて俺が作るであろう――仮に俺が作る事になった場合の話――卵焼きに比べれば、数段――いや、次元が違うではないか。
俺はなるべくそんなことは考えていないぞーというような表情を保って、料理の前に座った。
その後、樟葉もひと段落ついて、俺の目の前に座った。
「では、いただきます」
と言って、食事を始めた。
数分経ち、俺は食べ終わると、ご飯を咀嚼している樟葉に声をかけた。内容は今朝の足音についてだ。
「なあ樟葉、朝の足音について、やっぱ何か知らないか?」
「ん? 朝の足音?・・・・・・ああ、あれのこと。別に、何もないけど、何? お兄ちゃん、怖くなって眠れそうにないの? 」
ごくん、とご飯を飲み込み、また面白そうな顔をして尋ね返しくる。
「そんなんじゃねえよ。ただ、気になったから・・・・・・」
「ふーん、怖くて仕方なかったら一緒に寝てあげよっか?」
俺はその質問に対して「結構」の二文字で済ませ、部屋へと行った。
片づけは樟葉がやってくれるだろう。