お引っ越し
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ある朝のことだった。
「もうそろそろ、引っ越そうかと思う」
開口一番、親父が円形のテーブルに家族全員を集め、そう言った。
「あれだろ? この家、老朽化してるじゃん?」
こんな軽い判断をしているが、親父はそれなりに考え込んだ結果だろう。
かといっても、親父が家に戻るのは年に数回しかない。なぜなら親父は除霊師だ。全国各地を転々と移動して過ごしている。お袋もそんな親父に着いて回っている。そのため、実際家で過ごしているのは俺と妹である樟葉くらいだ。
そのせいか、俺や妹の樟葉にも霊感が現れた。樟葉は俺ほど高くはないが、霊を視認できるくらいはある。で、普通は霊を視認できるだけでも霊感がめっちゃ強い。普通、霊って触れると通り抜けちまうもんだが、俺は霊に触れることができる。
それがどれだけ恐ろしいことか。
想像するだけで背筋に悪寒が走る。
そんなわけで、家族内でも俺の霊感の高さは一目置かれている。といっても、家族内だけのことだが。
親父もさすがに俺ほどの霊感は持ち合わせていないようで、あくまで霊と話ができて成仏する手伝いができるほど。これは除霊師の基本。でも、俺はそんなことする必要なし。霊に触れることができるんだから、それを持ち上げて空へピョーン、と飛ばせば成仏完了。
霊はそのまま黄泉の国へ一方通行だ。だが、これは霊の意志を尊重していない成仏の方法。そのため、親父からは使用禁止されている。
ではそろそろ本題に戻ろう。
親父が引っ越しをする、ということだ。
この家も築二十年を迎える古い家になる。それはつまり家の建築に使われた材料も老朽化して腐る。そこに白アリが繁殖したということだ。
白アリも駆除できる範囲を越し、ちょくちょく家に現れるという結果になっている。
そこで親父が出した案が「引っ越し」だった。
話の内容を短くまとめると、ここ近くに使われなくなった家があるということだった。その家を知り合いの不動産屋にキープしてもらっているらしい。
俺たちの意見を聞くためのこの朝の家族会議だという。
「で、どうだ?」
しばらく間を空けて、親父が口を開いた。
「いや、俺はいいけど・・・・・・樟葉は?」
俺の右にいる妹――樟葉に意見を求めた。
黒髪の肩甲骨あたりまで伸びるその綺麗な髪を後ろで縛り、ポニーテイルにしている。
尋ねられた樟葉は顔に笑みを浮かべ、
「うん、それも良いと思うよ。あたしの部屋にもちょくちょく白アリが出るから、困っていたんだ」
「そうか、そう言ってもらえると助かる。母さんは?」
次に、親父の右にいる――つまり俺の左にいるお袋に今度は意見を聞いた。
「そうね、私もその意見に賛成だわ」
そして、家族全員が「引っ越し案」に賛成した。
すいません、まだ書き始めなので短いです。