歪な三位一体
ギルド『レムリア』の喧騒の中、リィネの隣に立つ二人の女性を見て、シュウは思わず眉をひそめた。昨日、リィネが言っていた「盾と杖」という言葉から、勝手に厳つい戦士を想像していたからだ。
「さあ、紹介しますね。シュウ様のサポート役として私が厳選した、腕利きの二人です」
リィネが弾んだ声で紹介すると、まず一人が勢いよく前に飛び出してきた。
「よっ! 私、ミーニャ! 東の獣人国から武者修行に来たんだ。アンタが噂の『魔物喰い』? 案外細いけど、いい目してるじゃん!」
ピンと立った猫耳を揺らし、短い尻尾をパタパタと振るのは、軽装の鎧を纏った猫耳族の少女ミーニャだ。腰には二振りの短剣。その身のこなしは、立っているだけでバネのようなしなやかさを感じさせる。
「私はスピードには自信あるからさ! アンタが重い一撃を叩き込むまでの『隙』、私が全部作ってあげる。その代わり、強い魔物の肉、私にも一口ちょうだいね?」
屈託のない笑顔で笑う彼女は、強さを求めるストイックさと、それを微塵も感じさせない快活さを併せ持っていた。
そして、その後ろで静かに佇んでいるのが、深いフードで顔を隠した長身の女性だ。彼女がゆっくりとフードを外すと、周囲の冒険者たちから息を呑む音が漏れた。
「……エレイン、と呼んで。事情があって、名前以外は教えられないけれど」
透き通るような肌、鋭くも慈愛に満ちた碧眼。そして、フードの間から覗く尖った耳。絶世の美女と呼ぶに相応しいエルフのエレインだ。彼女が手にする古びた杖からは、底知れない魔力の波動が静かに漏れ出している。
「リィネから話は聞いているわ。あなたの『器』の限界……私の治癒魔法なら、崩壊を食い止めながら戦わせることができる。ただし、代償は覚悟しておいて」
訳ありであることを隠そうともしない冷徹な態度。だが、その瞳の奥には、シュウの「壊れゆく力」に対する、どこか共鳴するような色が宿っていた。
シュウは二人を交互に見据えた。
一人は、超高速の動きで敵を翻弄し、シュウに「必殺の瞬間」を献上する斥候。
一人は、自壊するシュウの肉体を、魔法という外装で無理やり繋ぎ止める癒し手。
「……パーティなんて組んだことはない。俺が走れば、お前たちは置いていくぞ」
「あはは! 追いつけなかったら、その時は置いていっていいよ。でも、私を振り切るのは相当大変だと思うよ?」
ミーニャが不敵に笑う。
笑う。
「……追いつく必要はないわ。あなたの背後に、私の魔法を常に這わせておく。逃げられると思わないで」
エレインが静かに告げる。
リィネが満足げに頷いた。
「これで決まりですね。初仕事は、街の南に現れた『黒鋼のワーム』の討伐。Bランク上位、物理防御に特化した難敵です。……シュウ様、期待していますよ」
シュウ、ミーニャ、エレイン。
一人では決して到達できない、神の領域への階段を、シュウは登り始めた。




