後日談 最終話:エレイン編『魔力融合と、素直になれない楔(くさび)』
夜の帳が下りたレムリアの街。ギルドの宿舎の一室で、シュウは左腕を剥き出しにして座っていた。その腕に刻まれた複雑な幾何学模様の紋章――「楔」を、エレインが指先でなぞっている。
「……はぁ。見てなさいよ、この無茶苦茶な魔力の奔流。王都でアルトリウスを叩き潰した時より、さらに質が悪くなってるじゃない」
エレインは毒づきながらも、その瞳には隠しきれない熱が宿っていた。彼女の指先から、青白く鋭い魔力がシュウの腕へと流れ込む。それは、膨張し続けるシュウのステータスを「制御」するための、彼女だけの特権だった。
「……エレイン、熱い。……少し、出力を下げろ」
「うるさいわね! 貴方の『器』がデカすぎるのが悪いのよ。……ほら、じっとしてなさい。楔を打ち直さないと、そのうち内側から弾け飛ぶわよ?」
エレインはそう言いながら、シュウの腕をさらに強く引き寄せた。
かつては「贖罪」のために貸し与えていた彼女の魔法。だが、今の彼女にとってこの時間は、シュウの強大な力に「触れ、混ざり合う」ための、最も親密な儀式に変わっていた。
【現在のステータス:16,200】
シュウの血管を流れる魔力が、エレインの魔力と衝突し、火花を散らす。
「……エレイン、味付けが薄いと言っただろう。……お前の魔力くらい、もっと尖らせてもいい」
王都でシュウに言われたその言葉を思い出し、エレインの顔がカッと赤くなった。彼女は強引に魔力を増幅させ、シュウの意識を自分だけに向けさせようとする。
「……っ、望み通りにしてやるわよ! 誰にも真似できない、私だけのトゲを貴方に刻み込んでやるんだから!」
荒々しい言葉とは裏腹に、彼女の指先は愛おしむようにシュウの肌を滑る。
ひとしきり調整を終えると、エレインはシュウの腕に額を預け、小さく息を吐いた。
「……ねえ、シュウ。……貴方がどれだけ遠くへ行こうとしても、この楔がある限り、貴方を繋ぎ止めておけるのは私だけ。……分かってるんでしょうね?」
究極のツンデレが漏らした、切実な独占欲。
シュウは答えの代わりに、エレインの肩を軽く叩いた。
「……腹が減った。……明日も、お前の『尖った』魔力が必要だ」
「……当たり前でしょ。一生、私が面倒見てあげるわよ」
エレインは不敵に、そして幸せそうに口角を上げた。
最強のステータスを持つ「魔物喰い」の少年と、彼を繋ぎ止める四人のヒロイン。
彼らの物語は、これからも騒がしく、そして極上の味を求めて続いていく。




