表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物喰いの境界線 〜0.01の積み重ね〜  作者: ヒデまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/37

後日談 第2話:フィオナ編『王女の忍び旅と、不器用な施し』

レムリアの街角。夕闇に紛れるように、深いフードを被った小柄な人影が、ギルド裏の食堂へと滑り込んだ。

席についたシュウの向かい側に、その人物は迷うことなく腰を下ろす。

「……ようやく、見つけましたわ。シュウ様」

フードを脱いだ先に現れたのは、プラチナブロンドの髪を揺らすフィオナ王女だった。

驚きに目を見開くリィネを余所に、彼女はシュウを真っ直ぐに見つめ、少しだけ不満げに唇を尖らせた。

「王都をあんなに早く発たれるなんて、酷い方。私の『お誘い』、忘れてしまったのですか?」

「……フィオナ。……王女が、こんなところに一人で来るな」

「一人ではありませんわ。護衛は撒いてきましたけれど。……それより、シュウ様。今日は私が、貴方に『お返し』をしたいのです」

フィオナは、震える手で大事そうに抱えていた小さな包みを開いた。

中から出てきたのは、少し形が歪で、表面がわずかに焦げた手作りのパイだった。

「王宮の厨房を借りて……いえ、少しお借りして、私が焼きましたの。あの時、貴方が食べさせてくれたシチュー。あの温かさを、今度は私が、貴方に届けたくて」

かつて荒野で凍えていた彼女は、今や自らの手で熱を分け与えようとしていた。

シュウは黙ってそのパイを手に取り、大きく一口齧った。

「…………焦げている」

「っ! ……それは、火加減が少し難しくて……。……でも、毒は入っていませんわ!」

フィオナは顔を真っ赤にし、隠れツンデレな本性を覗かせながら、シュウの手からパイを取り返そうとする。だが、シュウはそれをひょいと避け、二口、三口と食べ進めた。

「……だが。……王宮の凝った料理より、力が湧く味がする。……悪くない」

「……本当、ですか?」

フィオナの瞳が、ぱあっと輝く。

彼女はシュウの隣に詰め寄り、その逞しい腕に自分の細い指を絡ませた。

「次は、もっと上手く焼きますわ。ですから……また、私の国へも寄ってくださいね? これは、王女としての命令ではなく……フィオナとしての、お願いです」

シュウの強大なステータスを持ってしても抗えない、少女の純粋な熱。

王女としての誇りを脱ぎ捨て、一人の「恋する少女」としてシュウを見つめるフィオナの横顔は、王宮のどの宝石よりも眩しく輝いていた。

次回予告

王女の攻勢を黙って見ていられないのが、シュウの膝の上を独占するあの子です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ