祝宴の余韻と忍び寄る影
ギルド『レムリア』御用達の蒸し料理屋。個室には、最高級のベヒーモス肉が放つ芳醇な香りが満ちていた。
「シュウ様、あーん……してくださいっ」
リィネが頬を林檎のように赤く染め、小さく切った肉を差し出す。
「……おい、リィネ。君も自分で食べろと言っただろ」
困り顔のシュウだが、彼女の潤んだ瞳に抗えず、不器用に応じる。
「ちょっと! リィネばっかりずるいわよ! 私だって……その、今日の援護射撃は完璧だったんだから、ご褒美くらいあってもいいじゃない!」
エレインが身を乗り出し、シュウの反対側の腕をぎゅっと抱きしめる。
「……シュウ、私の隣。……離さない」
ミーニャは無言でシュウの肩に頭を預け、喉を鳴らしていた。
かつて「ゴミスキル」と蔑まれた少年は、今やギルド最高峰の美女たちに囲まれ、羨望と憧れの象徴となっていた。
しかし、その幸福な時間を切り裂くように、ギルドマスターが血相を変えて飛び込んできた。
「シュウ! 逃げろ! 中央教会が動いた!」
1. 牙を剥く「正義」
教会の測定器が、シュウのステータス 8,500という「人智を超えた数値」を異常と判断した。彼らはシュウを「災厄の種」と断定し、聖騎士団を差し向けたのだ。
「シュウ様を……災厄だなんて、そんなの嘘です! 彼がどれだけ地道に努力してきたか、何も知らないくせに!」
リィネが涙ながらに叫ぶ。だが、建物の外にはすでに、白銀の鎧に身を包んだ聖騎士たちが展開していた。
2. 圧倒的な制圧
「……リィネ、泣くな。エレイン、ミーニャ、準備はいいか」
シュウが静かに立ち上がる。その背中は、かつてフォレストベアに怯えていた少年のものではない。
「道を空けてもらおうか。僕は、君たちを傷つけたくはない」
シュウが一歩踏み出した瞬間、凄まじい風圧が周囲を圧した。
放たれた聖騎士たちの魔力拘束を、シュウはただの「足取り」だけで引き千切る。暴力ではなく、あまりのステータスの差による「現象」として、追手たちは戦意を喪失し、膝をついた。
「……信じられない。聖騎士団を一歩も動かせずに……」
周囲で見守っていた冒険者たちが、畏怖と共にシュウの背中を見つめる。
3. 街を去る「約束」
「リィネ。僕たちは一旦、この街を離れる。……だが、必ず戻ってくる。このギルドこそが、僕の居場所だからな」
シュウはリィネの手に、お守り代わりの「魔物の結晶」を握らせた。
「……待っています。シュウ様が、堂々と胸を張って戻ってこられるように、私もギルドで戦いますから!」
三人は夜の闇へと消えていく。目指すは、人跡未踏の未開域。そこには、さらなる高みのステータスへと導く魔物たちが待っている。




