崩壊の序曲
「いっけぇぇぇ! シュウ!!」
ミーニャが叫び、ワームの眼球付近を短剣で斬りつける。視界を奪われたワームが激しくのたうち、その隙にシュウが懐深く、心臓部へと肉薄した。
エレインの魔力が青い火花を散らし、シュウの左腕を鋼鉄の槌へと変貌させている。
「……終わりだ。その核、喰らわせてもらう」
シュウの指先が、鱗の剥がれた剥き出しの肉に食い込む。熱く脈打つ核の感触。
だが、その瞬間――ワームの全身が、不吉な赤黒い光を放ち始めた。
「……!? シュウ、離れて!!」
後方で杖を構えていたエレインの顔が、恐怖に凍りつく。
ワームは逃げるためではなく、自らの一部を爆発させることで敵を道連れにする**『鋼核の自爆』**の予備動作に入っていた。
――逃げられない。
あまりの近距離に、シュウは回避のタイミングを完全に失う。
さらに最悪なことに、過剰な負荷に耐えかねたシュウの肉体が、ここで悲鳴を上げた。
「ガハッ……! 腕が、動か……ない……ッ!」
エレインの『鋼の枷』が強すぎたのか、あるいはワームの魔力に共鳴したのか。シュウの左腕が、心臓を掴んだまま完全に**石化(硬質化)**し、岩壁に縫い付けられたように固定されてしまった。
「シュウ!!」
ミーニャが助けに飛び込もうとするが、ワームから放出される超高熱の魔力波が彼女を跳ね飛ばす。
「嫌……嫌よ! また、私の目の前で……!!」
エレインが半狂乱で杖を振るい、障壁を張ろうとする。だが、魔力の枯渇で魔法が霧散していく。
赤黒い光が臨界点に達する。
ワームの咆哮が、死の宣告となって岩場に響き渡った。
シュウは動けない腕を呪い、迫りくる爆炎を真っ向から見据える。
視界が、絶望の赤に染まりきった―その刹那。




