プロローグ
さて、久しぶりの追撃行きます。随分間が立ちました。
『私はサキュバスの娘です 第二章 始まりの王都』
女神エリス様はあれ以来私の母親を自称するようになりました。
といっても表だってはそのことを口にすることはありません。
基本は天界にこもりっきりです。
しかし、そこは女神様です。 やはり忙しいのでしょうか?
あまり下界には降りてこないのでした。 母を自称している割には放任主義だと思うのです。 私だって実はちょっと甘えたいときぐらいはあります。まあ、言ったところでエリス様には甘えられませんが………
私としてはシスティーナが育ての親であるという事実は変わりありませんでしたが、本当のお母さんであるカルラの存在を知ったことで、三人の母親の娘という立場になってしまい少々複雑です。 お父さん一体どんな人なのか気になるところです。
あの母親達が選んだ人なのですから、きっと素敵なひと……だと思いたいです。
あれ以来私の目標は女神様を出し抜くことになりました。
聖剣ラグナロクと賢者の力を使ってしまうと女神様の思うようにしか動けなくなってしまうのです。 聖剣などと言いつつ、まさに呪いのアイテムですね。
しかし、その理由はひとえに私の本来の力量が低いことにあるのではないでしょうか?
恐らく自身で力を制御できるレベルに達していない。
それが体が勝手に動いてしまう原因ではないでしょうか?
私はそう考えたのです。
賢者の力なしでも戦えないと、私に女神エリス様に対する抵抗力を身につけることはできないのです。
それからというもの密かな修行が私の日課となったのです。
相手は基本的にシスティーナかノアなのですが、私が急に修練に前向きになったことで、多少違和感を感じているようでしたが、追求されることはなかったのです。
女神エリス様の神託によって、王都経向かうことが決まってからというもの、
私は剣を振り続けました修練に次ぐ修練、修練をすることで己の弱い部分と向き合うのを否定しているようでした。
エリス様と向き合うのは怖いです。
母親となったとは言え、実感は薄いというのが本音でしょう。
だって、だって私には三人のは母親がいるのですから……
そんなこんなで私は王都へと向かう馬車に揺られています。メンバーはシスティーナ、ノアで馬車をに揺られていますが、荷台には居候となったカイルが揺られています。
彼はどんな気持ちで揺られているのか時折視線を送っても我関せずで、マイペースに獣のに肉などを平らげながら豪快に笑っています。 独り言? いえ、当然馬車を引く行商などと会話するのがが得意なのです。 流石元旅人ですね。
王都はシスティーナの故郷だと言うことですが、いまいち実感がわきません。
システィーナに育てられる毎日でしたが、彼女が自分の過去を語ることは今の今までありませんでした。
それは今も変わらず、馬車で揺られ続けるのです。
私達は田舎の教会で育った為に、外の世界を知らないお上りさんだったのです。
馬車とは言え田舎からの長い道すがら、とにかく揺れます。 舗装されていない山道を下っているためでしょう。 乗り慣れない馬車は難敵と言えました。
ゴトン、ゴトン、と。馬車の揺れが心地いいとは、とても思えなかった。
舗装されていない道を、木製の車輪が無理やり進んでいく。車体が上下に大きく揺れるたび、座っているお尻が軽く浮く。何度目かの揺れに私は思わず顔をしかめた。
「酔った?」
隣に座るノアが、私の顔を覗き込む。いつも通りの、呑気な声。でも、彼の目がほんの少しだけ心配しているように見えて、私は首を振った。
「ちょっとだけ、平気。……慣れてないだけ」
田舎育ちの私にとって、馬車に長く乗るのは初めてだった。王都へ向かう旅。女神エリスの神託によって決まった行き先。私にとっては、あまりにも突然の“再出発”だった。
――でも、本当に再出発なんだろうか?
窓の外に目を向けると、景色はほとんど変わらない。丘、木々、小川。どれも見慣れたはずの風景なのに、どこか他人行儀に思えてくる。きっと、私の心が少しずつ“遠く”に向かっているからだ。
「セリカ、少し眠ったほうがいいわよ」
前方の席から、システィーナが静かに声をかけてくる。いつもと変わらない、落ち着いた声。けれど、その表情はどこか硬い。私に言っているようで、自分に言い聞かせているようにも見えた。
システィーナは、王都が近づくほどに口数が少なくなっていた。
私は知っている。彼女が王都に戻るのを、ずっと嫌がっていたことを。
彼女の出自。過去。……本当の立場。
今さら何もかもを打ち明けられても、私の中の“母”という存在は変わらなかった。だけど、彼女の方は――違ったのかもしれない。
(何が待っているんだろう、王都には)
怖くなって、私は自分の太ももを軽く叩いた。
修練が足りない。そう思った。
力がなければ、また操られる。女神エリスに、感情をねじ曲げられて、誰かを傷つけてしまう。あの時のノアの顔が、今も焼きついている。
私は、この旅の途中でも、隙あらば剣を振った。止まれば体を動かし、寝る前には魔力の流れを感じる訓練を繰り返した。
(強くならなきゃ。自分の意志で立てるように)
私の中には、もう一人の私――“シリカ”がいる。
彼女の力に頼らなくても、戦えるようにならなきゃいけない。
そうでないと、本当に私は、誰かの娘じゃなくなってしまう気がする。
――私が私であるために。
だから、王都へ行く。そこに、何があったとしても。
「……見えてきたよ」
ノアの声で顔を上げる。
開けた視界の先に、白い壁がそびえていた。高く、遠く、立ち入りを拒むような荘厳さ。尖塔がいくつも伸びて、青い空を切り取っている。
王都・アリステーゼ。
私の知らない、“母”のふるさと。
そして、女神エリスが用意した舞台。
馬車が、門をくぐった。
その瞬間――
『――我は女神エリス。今は亡き姫君、システィーナ・フォン・アリステーゼとともに、ここに帰還した――』
天が震えた。王都の空気が変わった。
兵たちは膝をつき、民たちのざわめきが広場に渦を巻く。
(システィーナが……姫様?)
頭がぐらついた気がした。いや、違う。心が、軋んだのだ。
教会の、あの静かな聖堂で。笑いながら読み聞かせをしてくれた人が。
私の魔力が暴走した時、迷いもせずに抱きしめてくれた、あの人が――。
「ふうん、なるほど。そう来たか。お姫様ねぇ、地味すぎて気づかなかったけど」
(システィーナが……王女様?)
私はずっと教会の娘だと思っていた。優しくて、ちょっと厳しくて、それで――十分だったのに。
「お姫様のくせに、随分地味に生きてたのねぇ、あの人」
耳元で、あの声が響いた。ぞわっとするような甘ったるい声。
(……シリカ?)
「うん、こんにちは。いや、こういう場面は黙ってられないでしょ?」
(……なんで、今)
「だって面白くなってきたから。
ねえ、セリカ。あんた、どの“お母さん”を選ぶの?」
私の胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
システィーナが誰であろうと、私の母親だった――はずなのに。
突然、頭の奥で声がした。
――シリカ。
私の中にいる、もう一人の“私”。
(なんで今……)
「だって、これ、見過ごせないでしょ?
王女、シスター、そして女神の娘――どんだけ母親属性盛ってくるのよ」
(……黙ってて。今は……)
「無理。あんたが混乱してるの、丸わかりなんだもん」
心の奥で、にやにや笑っているのが分かった。
でも、私はその挑発を無視できなかった。
(……あの人が、姫様でも関係ない。私にとっては、ただの“母”だよ)
「それ、ほんとに言い切れる?」
ぐさり、と胸に突き刺さる。
私が今、口にしたそれは、本心だろうか? それとも、言い聞かせてるだけ?
「選ばなきゃいけない時がくるよ、セリカ。
お姫様に、女神様に、そして――“ママ”に。
あんたは、どの『母親』を選ぶの?」
――その言葉が、妙に冷たくて、妙に優しかった。
ーーとげとげしさえ感じる子供っぽいと同時に甘ったるい色気のある不思議な声音。
彼女はおそらくカルラこそがホントの母に決まっていると言いたげです。
確かにそうでしょうが、私は安易にそれを認めることができないのでした。
理由は色々と思い浮かびますが…… それをすぐに言うのは無理です。まずは気持ちの整理からです。
ノア視点ーー
「な、なんだって……?」
俺の声はかすれていた。
耳が勝手に、女神の声を繰り返している。
システィーナが、王族――
あの人が、王都の姫君だったなんて。
そんなの、想像したこともなかった。
でも、考えてみれば当たり前かもしれない。
あの振る舞い、教養、剣術、魔法、すべてが“教会のシスター”に収まるものじゃなかった。
……なのに、俺は――
その人を、好きになってたんだ。
立場も、過去も知らないまま、ただの村の少年のくせに。
バカだな、俺。
でも、今さら引き返せるわけないじゃないか。
だって、あの人は――
今も、教会で俺たちを守ってくれた“システィーナさん”なんだから……
どうでもいいですが、これある程度おわったら、カクヨムでも一作品投下しようかなとか思いました。週6作更新結構きつそうですねW 格の早いからと秀一だからなんとかなってる感じでしょうか?
ゲームほとんどやらなくなったのもあるけど、テニスとかやってるから時間余ってるわけじゃないし、個人的な遊び時間がとれない……