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9:城壁都市

 ジガオの街の伝令人(メッセンジャー)責任者は眼鏡が似合う知的美人のクエスという女性だった。オトヤからの拡張ダンジョンの情報を渡すと軽く内容を確認したのちに用意されていただろう報酬が出されてきた。


「ご苦労様でした。ではこちらが報酬となります」


「準備がいいな。やっぱりこっちにももう情報は届いてたんだろう?」


「ええ。あのダンジョンはこことオトヤの中間ぐらいですからね。おそらくあちらにも発見報告が入って臨時便が来ると思いましたし、こちらからもオトヤへの臨時便を出してます。すれ違ったりしませんでしたか?」


「街道ですれ違ったのは冒険者たちだけだな。イッシ村で情報収集してる間に行き違ったのかもしれない」


「互いに単独行動ですからそういうこともあるでしょうね。それで、イッシの村は実際に見た感じはどうでした?」


「そりゃ今は拡張ダンジョンの噂でいっぱいだったよ。探索に向かう奴らが多くて他の依頼を受けるパーティーが少ないってイッシ村のギルド受付嬢もぼやいてたな」


「それは仕方ないですね。でもそろそろ地図屋(マッパー)さんたちもきつくなるころだから少し落ち着くでしょう」


 地図屋(マッパー)というのは情報更新の一番手報酬を狙いとにかく早い報告をする方針の探索者だ。最優先で可能な限り奥まで探索し、地図情報を報告して報酬をもらう。そのために戦闘力を重視していない構成なので魔力の濃いダンジョンの奥に住む魔物には手を焼き、ある程度で頭打ちになる傾向がある。


「こちらの情報共有ももう急がなくてもいいでしょうけど、チャックさんがオトヤに戻られるのなら最新の情報をお渡ししますよ。そっちは定期便に入れて別の依頼を受けられても構いませんけど」


「返信を届けることにしよう。こう見えてまだ新人なんでな」


「あら、そうだったんですか。オトヤからの遠距離の単独行(ソロ)だから経験豊富な方かと思ってました」


「冒険者としては3年ぐらいやってたが伝令人(メッセンジャー)登録は先月だよ」


「そうなんですね。わかりました。では明日の昼頃までに返信書類をまとめておきますのでまたお願いしますね」


「ああ。今晩はのんびりさせてもらうよ」


 ◆ーー◆ーー◆


 さて、ここジガオは国境の街である。ということは国境の守備隊も常駐しているということであり、若くて体力の余っている独身男性が多く在留しているのである。つまりは若い男向けの食って飲んで遊べるお店が多いのだ。


 俺もまずは名物の料理で腹を満たし、店を変えて味の濃いツマミで安い酒を飲む。飲みながら周りの連中に声をかけておすすめのお店などを聞いておき、夜も深まったらそういうお店へ。うん、男女混成でパーティーを組んでいるときとはまた違った開放感を味わった。


 翌日も昼頃までにギルドに行けばいいので急ぐことはない。目が覚めてもベッドから出ずにしばらくもぞもぞする。朝寝を十分に堪能したらベッドから這い出して身体を拭き、身支度して宿を出る。


 守備隊の兵士には自炊が苦手な者も多いようで朝食をだす店や屋台も多いのだ。昨日の女の子がおすすめの麺とスープのお店で朝食をとり、しばらく街を散策する。


 国境の街ということで特徴的なのはやはり他の街より立派な城壁だろう。そしてあえて迷いやすく作ってある曲がりくねった街路。万が一敵に城壁を突破されても進軍速度を落とすためだ。まあおかげでこの街に馴れてない人間も迷いやすいのだが。冒険者ギルドに到着するのが昼の結構ギリギリになった。


「こんにちは。チャックさん。依頼書と返信の書類はできてますよ」


 クエスから薄板数枚を受け取って確認する。一枚は仕事の依頼書と、いつものように数枚を重ねて封がされた書類。


「たぶん向こうに着く頃には伝わっているだろうという情報ですけどね。さぼらない程度にのんびり行ってもらって構いませんよ」


「わかった。いろいろ試したいこともあるしゆっくり行かせてもらうよ」


「試したいこと、ですか?」


「ああ、俺は伝令人としては新人だって言ったろ。装備もまだ更新して間がないし、道中での食料調達とかやってみたいこともたくさんあるんだ」


「そうでしたね。ではすぐに出発されますか? 明朝にされるのならいったん書類をお預かりできますけど」


 そう言われて少し思案する。こちらに来るまでに感じたいろいろな不満点やまだ確認できていないことなどもいくつかあった。


「そうだな。出発は明日にして今日は預かっていてもらうことにしよう。まだ少し買い物もしたいんだが、ギルドのおすすめな店はあるかい?」


「そうですね。こちらだと武器の店と防具の店と道具類は別のお店になりますけど。どちらの御用でしょう?」


「武器屋と道具屋を頼む。矢を補充したいんだ。あと細かい道具をそろえたい」


「わかりました。地図でご説明しますね」


 クエスはそう言って大きめの板を取り出す。そこに彫り込まれた街の地図を使って道順や目印などを教えてもらい、無事に装備の補充もできた。今晩は一人でゆっくり休んで明日以降に備えることにする。





「マイケもそうだったが、街だと伝令人(メッセンジャー)責任者は女性になる傾向でもあるのか?」

「ジガオの場合だと範囲が広いから街の中(うちまわり)の需要が多くて、そうなると代表も事務仕事に強い人間の方が有利なのよ」

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