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71:冬山下山

2026/03/01 ミスタイプ修正

「もう朝か。おはよう」


 コーリーが沸かしているお茶の匂いで目が覚めた。昨晩は雪割草を採取した後に洞窟の奥まで確認していくつかの素材を採取した後に、少し戻って地熱で多少なりとも温度が高い雪割草の採取地点近くで宿営している。地面も多少ぬかるんでいるがコーリー所有のシートは防水も完璧だった。


「外は見えないけどわたしの感覚だとまだ朝早いわね。お茶どうぞ」


 差し出されたカップを受け取り軽く吹いて一口飲む。山に入ってから火起こしする余裕があるときは毎回飲んでいる体を温める薬草茶(ハーブティー)だ。堅パンと干し肉も取り出して薬草茶でふやかしつつ胃袋に落とし込む。


「もう採取は全部終わってあとは帰るだけでいいんだよな」


「素材はもう十分だけど、山を降りたら食べる分の狩りもお願いしたいわ。フィンのところにも持っていきたいし」


「ああ、怪我をしてると買い出しも大変だからな」


 この後のことを確認しながら食事を終えた。人がいた跡をできるだけ消してから出発する。用心深い獣だと近寄らなくなるかもしれないが採取場所をあまり荒らすのもまずいという。


「あら、外はよく晴れてるわね」


 洞窟を出るとスッキリした晴天だった。朝日は背後の崖に隠れて見えないが青空が広がっている。


「帰りの天気は心配なさそうかな」


「山の天気は変わりやすいっていうけど、これだけ晴れてれば山を降りるまではもちそうね」


 実際コーリーの読み通りに下りは順調だった。コーリーが残してきた魔法の目印のお陰で方向を誤ることもなかったし、来るときに残してきたロープで崖を降りるのも問題はなかった。下りでは体重の軽いコーリーのほうが安定しているほどで、俺がうっかり足をすべらせて魔法でフォローしてもらったときのドヤ顔はちょいとムッとするほどではあった。


 無事に下山して麓で天幕(テント)を立てて一泊してから山道を三日でフィンの住むセンジ村へとたどり着いた。やや時間がかかったのは途中で狩りをして獲物の処理などもやっていたからである。


「よう、無事に帰ってきたんだね。問題なかったかい?」


 雪割草の引き渡しでフィンの家に行くと元気な口調で挨拶された。怪我はしているが体調自体は問題なさそうだ。


「雪割草は見つけたわよ。あと途中で雪熊(スノーベア)が出たけどなんとか退治したわ。フィンは一人のときはどうしてたのよ」


「ああ、アイツラは時々縄張りを変えるけどよく見てれば樹に爪で縄張りの目印つけてるのが見つかるからな。ぐるっと迂回するんだよ。出会っちまうとは不運だったな」


 フィンはちょっと肩をすくめて見せる。


「まあ細かい話はあとにしようや。今日も晩飯食って泊まってくだろ」


「ありがとう。お邪魔するわ」


 フィンに招き入れられて食事をしながら簡単な報告をする。


「雪割草の近くに高く買い取れそうな素材もいくつかあったわよ。あとから見本を渡すわね。目印はチャックがあの粘土で付けといてくれたから」


「だいたい基本通りに目印付けたからな。探しやすくなってると思うぞ」


「それはありがたいね。雪割草よりも高く売れそうなのはあるのかい」


「価格だけなら雪割草が一番ね。でも雪割草よりも長い期間採れるものもあるから総合的に安定して収入になるのはあるわ。わたしが個人的に欲しいものもあるからそれも後で説明するわ」


 食事を終えると現物も取り出して詳しい説明を始める。


「まずこれが例の毒草ね。花粉が付着すると肌荒れの原因になるしたくさん吸い込むと風邪っぽい症状が出るけどマスクして早めに拭き取れば問題ないわ。これ自体がその症状の薬の原料になるから採ってきたら対策できるようになるわ」


「出発前に言ってたあれかい。病気ってほどじゃないけど地味にきつかったから対策できるならありがたい」


「割と簡単な加工で薬にできるから後で説明してあげる。で、次は奥に生えてた苔なんだけど……」


 そうしてコーリーによって数種類の植物についての説明が行われた。俺が発言したのは付けてきた目印について言及したときぐらいだ。


「これで素材については一通り説明したわね。さて、相談なんだけど……」


 コーリーが続いて商談に入る。内容としては簡単に言うと『雪割草を一度売りに行って戻ってきて代金払うのは面倒だから手持ちのお金と素材・アイテム等であらかじめ料金分を払っておき、売った代金はそのまま受け取って帰りたい』というものだった。それについてもいろいろとやり取りがあったが、フィンからの評価が高かったのは採ってきた雪熊の毛皮とコーリー謹製の冬装備だった。


「雪熊の毛皮ってちょっと魔力が残ってて雪の中でも暖かいんだよ。話を聞くとコーリーの装備品もなかなか性能がいいみたいじゃないか。冬山で活動する身としてはぜひ欲しいね」


 その後も色々と交渉して雪熊素材とコーリーの冬装備に現金少しと採取して来た素材を三割ほどにコーリーが身につけていた装身具などで話がついた。


「交渉成立ね。それじゃあ怪我が治ったら他の素材もよろしくね。お店の方にはわたしが買い取りたいって言っておくから」


 こうしてコーリーの雪割草入手も無事終了し、俺の受けた依頼もようやく終了したのだった。

第7章終了です。最初のメモ「コーリーとデート」をなんとか膨らませた。

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