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7:装備更新

「はい、確認しました。これでチャックさんのパーティー脱退手続きと報酬の分配は完了です」


 オトヤの街に戻ってギルドの受付に書類を出すと手続きはあっさり終わった。パーティーメンバー減らすのと新しい依頼を一緒にするなとか面倒なこともあったらしいがその辺はあらかじめ何とかしておいてくれたのだろう。


「チャックさんはこれからどうされますか? 単独(ソロ)で可能な依頼を受けるか、新しく別のパーティーに所属するか。伝令人(メッセンジャー)登録もされましたのでそちらの依頼も受けられますけど」


伝令人(メッセンジャー)の依頼を見せてくれ」


 俺は受付嬢にそう告げた。


 ◆ーー◆ーー◆


「よお、新人。無事に帰ったか」


 伝令人(メッセンジャー)の控え室に通されると代表のダンが迎えてくれた。


「ああ。あちらの商業ギルドに届けてあちらの支部で報酬も受け取った。特に急ぎの返信はないということだ」


 一応こちらで受けた依頼の結果も報告する。


「何事もなければなによりだ。それで、こちらに来たというのはまた伝令人(メッセンジャー)の仕事が欲しいのかい?」


「ああ。魔物討伐や迷宮探索も悪くないが、伝令人(メッセンジャー)もなかなか面白かった。冒険者だけではわからないこともあるもんだな」


「お宝狙いとか名のある魔物を倒して名をあげるということには縁がないがな。それでも世界にゃ面白いことはたくさんあるもんだ」


 確かに冒険者登録するようなのは一攫千金か名声を目的にしているヤツが多い。たとえば元リーダーのエースは名声が目的だし、俺はどちらかといえばお宝のほう。それを知っているからこそエースは名声に近づく機会のため俺に報酬の増額を持ちかけたわけだ。


「さて、伝令人(メッセンジャー)としての依頼だが、実は今はない」


「見た感じはいろいろ荷物があるようだが」


 控え室の棚を見ると連絡用の木の板にたまに羊皮紙、植物紙などの手紙がいくつも積まれている。


「こいつらは定期便なんだ。もう運ぶヤツも決まっている。お前に頼みたいのは臨時便になるがそれは今は出ていないんだ」


「臨時便ってのはそんなにたくさん出るものなのか?」


「まあまあだな。ここから東は辺境になるから探索者が大型の魔物を倒したとか新しいダンジョンを攻略したとか、そういう情報をより大きな街へ伝える仕事はそこそこあるぞ」


「依頼の中身は知らないんじゃなかったのか?」


「あいつら依頼するときについでに自慢していくんだよ。俺の方から聞き出したわけじゃない」


「なるほど。で、今は俺の仕事はないということか」


「すまないがそういうことになる。ただ、今ギルドで受けている依頼からすると近いうちに何か動きがありそうだ。半月以内には何か仕事を出せると思うし、なにもなかったら定期便の護衛に同行してもらおうと思う。それまでは伝令人(メッセンジャー)向けの装備を整えるといい。お前の今の装備は基本盗賊用だろう?」


「そうだな。この装備も慣れているから問題ないかとも思うが専業にするなら考えた方がいいか」


「お、腰を据えてやる気になってくれたか。じゃあ店の方に紹介状を書いておこう。普通にはあまり出さない素材を使った品も優先して出してくれるはずだ」


 ◆ーー◆ーー◆


伝令人(メッセンジャー)ならまず靴を変えるべきだな。盗賊用の靴は不規則な動きでも足を痛めないよう足首までカバーするものが主流だが、長距離を効率よく歩くにはもっと足首が自由な方がいい」


 道具屋の店主でドワーフのフォージがそう言う。


「今着てる鎧は硬化革鎧(ハードレザー)か。より軽い軟質革鎧(ソフトレザー)を好むヤツは多いが、万一を考えての硬化革鎧も人気はあるな。武器は今の短剣とナイフで十分だが、道中で猟をして食料調達しようというなら飛び道具も欲しいだろう。一般的なのは短弓だが、小動物の狩り程度なら投石紐(スリング)でも十分使えるぞ。そこらの石を拾って使えるから矢をたくさん買えない連中に人気だ」


 説明にふむふむと相づちを打ちながら検討する。まず靴は変えよう。鎧はひとまずこのままで、疲労がキツくなるようならまた検討する。扱ったことがある短弓も追加だ。矢は荷物にならない数本で、弾切れの不安のない投石紐も。そういったことをフォージに伝える。


「わかった。準備するから少し待ってろ。あと、靴は足に合わせて調整するから今履いてる靴も脱いどけ」


 そういって奥へ引っ込んだフォージを待ちながら椅子に座り靴を脱ぐ。ややたって短弓と足の木型らしいものをそれぞれ数個持って戻ってきた。


「待たせたな。じゃあ足を出せ」


 そう言うといくつかの支えがついた定規らしいものを足に当てて採寸し、木型を選んでねじを使って長さや幅を調整していく。


「よし、足の大きさは普通だから一般モデルの微調整で済むだろう。三日後にまた来てくれ」


「三日後だな。自分で調整するのか?」


「ああ。ドワーフ仲間には自分で一から作ることにこだわる奴らも多いが俺はこうやって細かい調整をするのが好きなんだよ」


「それってドワーフとしては珍しいのか?」


「いやあ、多数派ではないがそこそこは居るぞ。ただ職人の助手になることが多くて一人で商売するのは珍しいかもな。さて、弓の方は一番いい感じに引けるのを選んでくれ。握りの微調整もしてやるからな」


 こうして三日後には新しい装備も揃い、扱い慣れるまでの数日間は街の外まで行って狩りの練習に励んだのだった。



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