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66:適材適所

「普段採っている人に場所を聞くっていっても、普通そういうのって秘密にしてるんじゃないか。その前に店の方だって仕入先は教えてくれないと思うんだが」


 俺が用意した朝食を食べながらコーリーに疑問をぶつけてみる。仕入れの止まった雪割草を自分で採りに行くためとはいえ商売上の秘密というものもあるだろう。


「そのへんはお金と交渉でなんとかしてみるわ。一応わたしは王立研究所の結構偉い人なんだから交渉の材料は色々あるし」


 そういえばそうだった。容姿が幼く見えるからどうしても偉い人という感じが頭から抜けてしまいがちだが。


「わかった。いつ出発するんだ。冬山装備はもう用意してあるぞ」


「それじゃあ最後の確認をして今日の昼にも出ましょう。抜け道(ショートカット)を使ってこの間と同じコースでいいわね。わたしは転送魔法円つかって王都のザカリーにお店の方へ事情を伝えてもらっておくわ」


◆ーー◆ーー◆


「ザカリー様よりご要件は承っております。ですが商売人として取引先は秘密でして」


 俺達、というかコーリーが店に顔を出すなり奥の応接室へ通され、今まさに商会代表とコーリーが話している。軽い挨拶の後での代表の言葉は予想通りのものだった。ザカリーは言われたとおりに話を通してくれていたようだ。俺は護衛としてそれを少し離れて立ったまま聞いている。


「ここを通さず直接取引したいってわけじゃないの。たしかいつも卸してる人が怪我をしたから採取にいけなくなったってことだったわよね。だったらその人も収入が減ってるはずだし『代わりに採取に行ける臨時雇い』が欲しいんじゃないかしら」


 コーリーがそう持ちかけると代表はふむと少し間を置く。


「つまり手伝える人材として売り込めということですな。そちらが採取してあちらに引き渡し、我々はいつもの相手と取引するだけと。雪割草が品薄なのは事実ですし入手可能になるなら当店としても悪い話ではない。わかりました。連絡はしてみましょう。そちらの条件はどのぐらいまでとお伝えしてよろしいのでしょう」


「王立研究所の研究者で雪割草が必要になっている。一度全部引き渡していつものように卸したあとこちらの店から買い取る形にする。代理で採集に行く報酬は要相談だけど、雪割草を購入したいのが一番の目的だからそれ以外の採取物から報酬にもらう条件でも可能というあたりかしら」


「ではその筋で連絡してみましょう。返信まで最短で二日はかかると思いますがご連絡先は王立研究所でよろしかったですか」


「今はここで研究所が押さえてる宿に泊まってるからそっちでお願いするわ。ドロエ通りホテルはわかるわよね」


◆ーー◆ーー◆


 コーリーが用意したのは前回と同じく護衛付きの人間が止まるような宿だった。もちろん主人用の部屋はコーリーが使っている。「来客用に一年中確保してる部屋が空いてたから」とは言うが一介の伝令人としては従士用の部屋といえど落ち着かないので勘弁してほしい。


「お待たせしました。お相手からは直接お話しをしたいのでご自宅へ来ていただきたいということです。ここから北のセンジ村のフィン様をお尋ねください」


 返答が来たのは三日目の朝だった。いつでも出られるようにはしていたのでそのまま出発し、夕方にはセンジ村に到着した。


「雪割草が欲しいっていうのはあんたかい」


 村外れの小さな家に住んでいたフィンは小柄ながらもがっしりした体格の壮年女性だった。左腕には包帯を巻き、右足は添え木と包帯で固めて杖をついている。


「それで雇って欲しいっていうのは店に筋を通す名目なんだろう。あたしが雪割草の場所を教えることでなにが得になるんだい」


「お店を通して伝えてもらってると思うけど、まずは怪我をしているあなたに変わって採ってきた雪割草は全部引き渡すわ」


「うん、でも怪我が治るまでぐらいは蓄えでなんとかなりそうなんだ。冬の備えで溜め込んでたし」


 どうもあんまり乗り気ではない感じだ。


「じゃあこういうのはどうかしら。雪割草が採れる付近でこちらで買い取れる素材を見つけたらその情報も教えるわ。こちらで文献調べたけど同じような条件で色々ありそうなの」


「それもまあ無いよりはいいというぐらいかな。雪割草の売り上げだけでも女一人で生活するにはそれほど困っていないんだ」


 やはり採取場所を教えるというのにはそれなりの抵抗があるようである。


「あとはそうね。雪割草を採りに行ったあとって決まってお肌が荒れたりしていない?」


「ああ、そういえば確かに毎回肌荒れとかが酷かったな」


「これもこちらで調べた結果だけど、雪割草の近くには毒草も一緒に生えやすいみたいなの。かき分けたりして傷がつくと毒の入った成分を撒き散らして、人間だと肌が荒れたりちょっと風邪っぽい症状が出るみたいね」


「風邪の方も心当たりはある。流石に山の寒さは違うと思っていたがそうじゃなかったのか」


「その可能性は高いわね。それでその毒によく効く塗り薬と飲み薬を調合できるわ。買ってもそれほど高くないけどこれも多分近くに材料の薬草があるかもしれない」


「わかった。その条件を飲もう。雪割草の採取地はここから北西、川を超えたニシビ山の洞窟だ。詳しいことは晩飯食ってからでいいか」




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