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64:完売御礼

「じゃあしばらくよろしくね、”お兄ちゃん”」


 抜け道を通ってルマミの村に近づいたあたりでコーリーが呼び方を変えてきた。老化抑制魔法を使っているコーリーは見た目では幼い少女であり、一人で出歩くと色々面倒だからと隠れ家からの外出時にはちょいちょいつきあわされているのだが、その際には俺とは兄妹という設定になっている。最初は夫婦でと提案されたが俺の趣味が危ないことになってしまうので兄妹で落ち着いた。ちなみに前任のザビーのときは父娘の設定だったらしい。


「ここなら正体知られてるから関係を騙ることもないんじゃないか」


 ルマミにはもう何度か一緒に買い物に来ているが、前任者のころから十年以上ほぼ変わらない姿だというので魔法使いで実年齢がもっと上だというのもバレているし家族関係が偽装だというのもわかっているだろう。


「前から付き合いがある人は『護衛に家族のフリしてもらってる』ってのも知ってるから、逆にわたしが家族だといえば護衛と思ってもらえるわよ」


 もっともらしいことは言ってくるがどうも俺をからかって楽しんでいるような気がしてならない。そうこうしているうちに村にたどり着く。


「じゃあ今日はここで一泊ね。兄妹なんだから宿の部屋は一つでいいわよね。お兄ちゃん」


「いや、やっぱりからかっているだろう」


 そういえばこれまで買い物に付き合うときは日帰りもしくは買い物が終わったら解散で泊まりは初めてであった。なお実際に宿の部屋は一つになったがコーリーのほうが圧倒的に強いので襲いかかるような真似はしていないし襲われてもいない。


◆ーー◆ーー◆


「今日はちょっと急いで早めに次のカオカで休みましょう。明日は夜明け前に村を出て早めに王都について、夕方にはアルノのお店に行く予定よ」


 宿の朝食は塩漬け豆を発酵させたペーストを使ったスープにたくさんの具が入ったものと炊いた米に漬物というのは以前と同じだったが、コーリーはそれに追加して糸を引いた豆をつけている。腐っているのではと聞いてみたがこれで身体には害がないし独特の旨味があるのだという。


「王都は広いから早めに移動したいというのはわかるが、それでもちょっときついだろ」


「わたしが身体強化の魔法かけたげるからペース的には問題ないはずよ。効き目を落とせば長時間強化しっぱなしにできるから」


「なるほど。それは納得した。しかし夕方にアルノ地区へ到着したとして宿はどうするんだ。役人たちの居住区だから普通の宿はないんだろう」


「大丈夫。わたしの知ってる宿を使えるから。王都までいけばわたしのツケがきくところが多いからお金の心配もないわよ」


「それならいいが、あんまり分不相応な宿はやめてくれよ。かえって眠れなくなりそうだ」


「大丈夫よ。ちゃんと従者用の控室もあるから」


「やっぱり豪勢な宿じゃないか」


 そんな会話をしながら朝食を終えて出発。カオカで一泊して翌朝予定通り早めに出発し、王都のセイア地区へ到着したのが午後。そこから隣のアルノ地区にある素材屋にはなんとか予定通り夕方にたどり着いた。


◆ーー◆ーー◆


雪割茸(ゆきわりだけ)が品切れですって?」


 店の中でコーリーがちょっと声を荒らげていた。ちなみにこの店は普通の人が使うような店頭に商品を並べている店舗ではなく店員に注文書を出して商品を渡してもらうという専門家相手の店である。


「申し訳ありませんが、もともと需要が少なく入荷量が少ないものですのに当店で契約している採集人が負傷してしまいまして初期の入荷分しか無かったのです。その者の復帰までしばらく掛かりそうですので今期の入荷は見通しが立っておりません」


 さすがに一流店の店員だけあって王立研究所の魔法使い相手にも堂々としたものだ。コーリーもそれ以上の要求をすることはできず引き下がった。


「そんな希少なものならザカリーに連絡したときに押さえててもらえばよかったんじゃないか?」


「今まではそうしてたけどちょっと連絡遅れても十分間に合ってたのよ。今回は久しぶりに外出したくって直接買いに来たけど、入荷が少なかったって言うから数日早くても入手できたかは微妙なところね」


「なるほどな。しかし売り切れてたって言うならこれで今回の買い物も終わりってことだよな」


「なに言ってるのよ。こうなったらわたしが直接取りに行くからチャックも付き合ってよね」


「いやちょっと待て。店にないから自分で採りに行くまではわからんでもない。だが俺に同行しろっていうのはさすがに契約外だろ」


「あら、ちゃんと契約内よ。契約書読んでサインしたでしょ」


 そう言われたのでバッグから契約書の羊皮紙を取り出して確認する。


『コーリーが雪割茸を入手する際の護衛任務』


 なるほど、確かに購入の際の護衛ではなく『入手』の際の護衛任務として受けている。しかし普通に買い物のつもりだったのが売り切れていて自己調達などとは想定外だ。


「契約書にあるんだから諦めなさい。とりあえずわたしの家に戻って採取の計画立て直すわよ」


 こうして簡単な買い物の付き合いのはずだった依頼は難易度高そうな素材採集へと変わってしまったのだった。




松屋の朝定豚汁定食に納豆つけるのいいよね。

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