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59:山菜三昧

「朝から甘い物というのはどうなんだろうと思いましたが、なかなかいけるいものですな」


 ブライスが少し戸惑っていたケンジョーの宿で出てきた朝食はクリームたっぷりのパンケーキセットであった。さすが酪農が盛んな地域だし牧草だけでなく小麦も豊富なようでお値段もお得だ。


「今日は朝から乗馬の講習で体力使うと思うから元気が出る甘いものはいいわね」


「私とブライスさんは馬車の扱いですけど、しっかり食べておいたほうがいいのは変わらないですねね」


 ウーラとゼナの女性陣は普通にパクパクいっている。


「疲れたときには甘いものとはいうが、疲れる前からというのも悪くはないんだろうな」


 俺は砂糖も入れない珈琲で甘いパンケーキ流し込みながらいう。甘いものは嫌いではないが主食にはどうかと思う派だ。


「まだ教習開始には余裕があるでしょうけど食事を済ませたら移動しましょうか。遅れるよりはいいでしょうし」


 ゼナの提案に誰も異論はなく食事を済ませた俺達は講習受付のある馬房に移動した。受講証の木札を渡すと待つこともなく馬場に案内される。


「開始の刻限よりも早めに来たつもりだったが、もうできるのか?」


 俺の問いに担当の教官が答える。


「初心者講習なら初歩からきっちり教えるが、経験者の半日講習だろ。よほどひどいことがないならま乗り方を見て気になることろの助言をするだけなんだ。相手のクセによって助言の内容も変わるから準備することもほとんどないしクセを見る為色々な状況で乗ってもらうから早いほうがいい」


「使える時間を考えるとたしかにみっちり教えてる時間はないな。だが中にはもっと基礎から教えないと無理だってやつもいるんじゃないか」


「そういうときは受講の延長をおすすめするさ。じゃあまずは乗り込んで平地を歩くところから始めようか」


 そうして始まった半日の経験者講習だが、俺の馬術は地元でちょっと乗れる近所の兄ちゃんに教わったもので結構ひどいクセが付いていたらしく姿勢から体重のかけ方まで細かい点をたくさん指摘された。一方のウーラは基本を習った相手が正統派だったらしくちょっと注意受けてからはほぼ様子見ながら乗っているだけだった。


◆ーー◆ーー◆


「私たちの方は最初から馬車の扱いを一通りおさらいして、その反復確認でしたね。ちょっと悪い道を通ったりもしましたが、基本は街道を普通に走るという想定でした」


 午前の講習を終えて昼食を取った俺達は温泉地への道を登りながら互いのコースについて情報交換をしていた。ゼナたち事務方組の受けた御者コースは普通に基礎から教えてもらったようだ。


「わたしとしてはもう少し特殊な状況に対応するやり方も学びたかったのですがな。そういうのは半日コースでは教えていないようで、追加コースをお勧めされましたな。時間の余裕があれば習いたいところでしたが」


 ブライスの方は内容が軽すぎてやや物足りなかったようだ。


「職員旅行で使うのだったらしっかりやりたい人のプランも作るといいかもしれませんね。興味がない人は早めに温泉に行ってもらってやりたい人は一日じっくりとか」


 優秀な事務員のゼナは本番の職員旅行についての下見だということを忘れず構想を練っているようだ。


「乗馬の講習中に聞いたがあそこでは貸し馬もやってるらしい。この道も馬で登ると楽なんだろうが高くつくから職員旅行ではきついだろうな」


「半日でつくんだからもったいないわよね。温泉では返せないから泊まるなら一日借りることになっちゃうし」


 商家出身のウーラは無駄遣いにも厳しいようだ(酒以外は)。そうやって歩いていると夕刻前に温泉旅館の建物が見えてきた。


「昨日のうちに伝言(メッセージ)を出しておきましたから夕御飯もすぐ準備できると思いますよ。まずは食事にしますか?」


「あたしはお酒も飲みたいから先に温泉のほうがいいな」


 ウーラでも呑んだ状態で風呂はまずいという意識はあるようだ。


「明日はゆっくりする予定だから食事して温泉にも入ってからじっくり飲んだほうがいいんじゃないか。明日の予定がないならウーラは潰れるまで飲めるだろ」


「そういうことならそれでいいわ。じゃあついたらまず食事でその後お風呂、その後は寝るまで飲みますよ」


 温泉宿で出てきた食事は温泉の湯を使ったという温泉卵に地物の山菜を使ったというあっさりした小鉢がたくさんのメニューだった。


「これ絶対お酒に合うから、一杯だけ」


 ウーラはそう言って一杯だけ頼んだ酒を料理と一緒にチビチビとやっていた。俺を含めた他の三人は温泉を堪能したあとで飲むからと今は控えている。


「あたし一人で呑んでるとすごい酒好きみたいじゃない」


「いや、全く否定する要素がないと思うが」


「うー、またチャックが意地悪なこと言うー」


 いつもの調子でウーラにツッコミを入れていると普段見慣れていないブライスがニコニコしながら見ていた。


「いや、本当にお二人は仲がよろしいですな」


 まあ仲がいいのは否定できない。

温泉に入るところまでいくと長くなりそうだったので次回に回してそこまでをちょっと引き伸ばした。

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