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51:依頼終了

「やあ、おはよう。君たちもこれから食事かい?」


 朝食券を持って王立研究所の職員食堂を訪れると今回の仕事の依頼人であった魔法使いザカリーもトレイを持って提供口に並んでいた。


「ザカリー様って研究所の開発室室長ですよね。こんなところで朝食ですか?」


 魔法使いであるマユから見ると意外なことのようだ。


「研究室で実験していて気がついたら朝になっていてね。食事をしてから帰ろうかと思っていたところなんだ。よかったらみんなも一緒に食べないか」


「はい、是非!」


 マユが勝手に返事をするがまあ構わないだろう。並んでいる間にもマユとランドの魔法使い組が何やら魔法に関する質問をして答えてもらっている。列の進みは早く俺もすぐに朝食メニューの炊いた米に塩漬け魚の切り身を焼いた物、漬物にスープという簡素なメニューを受け取る。テーブルについて食べながらもザカリーは二人の質問に答えていた。


「ここならではの土産ものかい。そうだなあ、薬草茶(ハーブティー)なんかいいんじゃないか。この近くでは魔法薬の材料として多種多様な植物を育てているからちょっと他ではないようなものもあるんだ。つきあいのあるところに紹介状を書いてあげるから行ってみるといい」


 ついでに俺が聞いた土産物に関する相談にも答えてくれる。王侯貴族が居住するこの辺りでは御用聞きがお伺いを立てる商売が普通で店頭販売は基本やらないというが紹介状を持っていけば融通してくれるだろう。


◆ーー◆ーー◆


 朝食後はマイセン地区の冒険者ギルド支部で依頼の終了報告を行い報酬を受け取った。これで今回の仕事は一応終了だが、帰路もサラのパーティーと一緒に行動しようという話にはなっている。とりあえずは紹介された茶問屋で美容にいいという薬草茶を多めに買い込んだ。そのあとセイア地区まで戻ってまずは宿を確保する。


「じゃあ仕事も終わったし今晩は各自自由行動で。出発予定は明日の昼前だからそれまでに準備しておいてね」


 リーダーのサラがそう言うとキースがさっそくサラを誘って出ていった。残りの四人で食べに行った鶏肉の香草焼きは渋めの葡萄酒によく合って杯も結構重ねてしまった。


 翌朝、すっきりした顔のサラと頭痛をこらえているキースを『やっぱり今回もダメだったか』という表情で見守る4人は出発前に冒険者ギルドに顔を出した。帰るついでに適当な依頼がないかと確認に来たのだが、俺の顔を見た受付嬢から先に声をかけてきた。


伝令人(メッセンジャー)のチャックさんですね。指名依頼が入っていますよ。依頼人は王立研究所のザカリー様で宛先はコーリー様。『溜まってる急ぎではない書類をまとめて送る。たまには顔を出せ』と口頭で連絡するよう補足が付いています」


 そう言ってまとまった量の書類を出してきた。紙だけでなく一般的な薄板も多く、これでは転送陣も使えないのだろう。サラの方を見ると手でOKのサインを出している。


「了解した。じゃあ手続きを頼む」


◆ーー◆ーー◆


 コーリーの家に到着したのはそれから3日目の昼だった。


「そういうわけで『溜まってる急ぎではない書類をまとめて送る。たまには顔を出せ』という口頭の補足だ。あとこれは土産の薬草茶だ。よかったら使ってくれ」


「ごくろうさま。お土産なんて気が利くわね。今日も泊まってから行くなら離れ使っていいわよ」


 コーリーが受取の署名をしながらそう言うのでみんなで離れに移動して休憩する。荷物を降ろして一息ついたあたりで扉がバタンと開いてコーリーが飛び込んできた。


「ねえ、最近ダンジョンの拡張が起こってミスリルがたくさん出回っているって本当なの?」


「ああ。拡張が起こったのはもう180日ぐらい前かな。ミスリルが見つかるような深層にたどり着いてからでも100日以上は経ってる。オトヤにもドワーフの鍛冶職人が来ていろいろ作ってるぞ」


 そう答えるとコーリーはちょっと考えてからこういった。


「わかった。じゃあわたしもオトヤに行く。みんなもこれからオトヤに帰るのよね」


「護衛ということなら追加で依頼出してもらうぞ」


「護衛なんて必要ないわよ。ただ付いていくだけだから。ミスリル使って実験道具を作ってほしいのよ」


「まあ自衛できるんならいいんじゃないかしら。強力な魔法使いがいるなら頼もしいし」


 サラも承諾したので帰りはコーリーも同行することになった。途中のマイケではコーリーから「このナリだと舐められるから」と買い物に付き合わされてカップルのフリをさせられたりもしたが大きなトラブルもなくオトヤまで帰還した。


「よう、帰ってきたか、色男。客が待ってるぞ」


 ギルドに顔を出すと伝令人代表のダンがニヤニヤしながら話しかけてきた。悪い予感を覚えながらどういう客か尋ねようとするとガチャリと伝令人控え室の扉が開き、奥から見知った顔が出てきた。


「久しぶりね、チャック。約束通り来たわよ」


 飛びついてきたウーラを受け止めると周囲からの視線を感じた。


「ずいぶん仲がいいみたいね。あたしにも紹介してもらえるかしら」


 説明は長くなりそうだ。

最初に10話書きためて公開した次の目標が50話の約10万字だったので一応『第一部・完』みたいな感じ。ちょいと増えちゃったけど。

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