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49:依頼継続

2025/09/22 後書きに食べたもの追加

2025/09/24 後書きの変換ミス修正

「ごめんなさいねぇ。ウチはこういう手続きは不慣れなもんだから」


 到着がまだ日暮れ前だったのでそのまま手続きに訪れたルマミ村の村長宅兼村役場兼ギルド出張所では村長夫人兼ギルド事務員のエルダさんが書類と格闘していた。


「ウチのギルドだと掲示板に依頼を出して、それを適当に持っていってこなした冒険者が報酬もらいに来るのがほとんどなんでな。時間かかって済まない」


 村長兼ギルド出張所代表のアランさんも頭を下げる。


「いや、こちらこそ面倒をかけて済まない。最初は自分たちがオトヤに戻って返信を待っている早馬担当に託す予定だったんだが、抜け道を通ってこっちにでた方が早いと言われてな」


 実際、魔法使いコーリーの住処からダンジョンを抜けて引き返すとオトヤまで3日とちょっと、そこから早馬で戻ってもらっても2日の合計5日はかかるのに対して、抜け道を通ってこちらのルートを採れば徒歩でも3日弱で王都に到着できる。なお早馬と呼ばれる分類でも更に上位の拠点ごとに馬と人を交代してリレーで運ぶ手段もあるがさすがにそれはよほどの緊急事態でもなければ使われないという。


「お待たせ。じゃあ確認してね。まずこれがオトヤにいるヤンさんへの伝言(メッセージ)。臨時便でいいのよね」


「問題ない。それで頼む」


 細かいことは聞いていないが『依頼の内容は承知した。詳細は別便で』という内容のはずで、これを依頼主まで届ければ伝令任務が完了する。ギルド内部書類だから定期便への便乗なら無料でできるのだが、今回は急ぎということで臨時便の代金を俺が立て替える。報酬の増額は王都で交渉しよう。


「それじゃあ次ね。依頼主は魔法使いのコーリーさんで受注先をサラさんのパーティーにチャックさんの合同に指名で、依頼者当人から登録作業を受注人に任せるという委任状あり。依頼内容はコーリーさんから受け取った魔法道具を王都にいるザカリーさんまで届けること。本来なら報酬全部か着手金を前払いなんだけど今回は信用ある相手ということでまとめて受取人払いということで。問題なかったかしら」


『依頼人から直接受けた仕事をギルドを通した指名依頼として扱う』というのはそれほど珍しいことではない。報酬の一部がギルドの取り分になってしまうが仕事の実績がギルドに記録されて『この依頼ならあいつらにやらせよう』みたいなことも起きやすくなる。


「そちらも問題ありません」


 答えたのはこっちの依頼の受注者であるパーティーのリーダーであるサラ。パーティーとして登録してあるメンバーに俺が臨時で助っ人という形になっている。相手先への身分証明が俺しか使えない魔法がかかった指輪なので同行せざるを得ないのだ。


「では、これで手続きは終了です。お疲れ様でした。今日はゆっくり休んでいってくださいね」


◆ーー◆ーー◆


 ルマミの村を通っている街道は比較的新しく作られたものだ。もともと王都から東へ向かうにはここから南のマイケの街を通る街道があって、そちらが十分に栄えていた。栄えすぎていた。それ故に混雑を嫌い抜け道として少し北のこの道を通るものも増えて、とうとう街道として整備されるに至ったというわけである。


 そんなわけでこの村もそれほど栄えていたわけではない。というのもこのあたりは土地が痩せていたので農業にもそれほど適してはいなかったのだという。そんな土地でも比較的育ちやすい豆類がこの村の特産物となり、交通量が増えた今では豆の加工品が名物料理ともなっている。


「この絞った豆の汁を固めたものを辛口のソースで和えたものは美味いな」


「チャックは辛いもの好きよね。あたしはシンプルに温めて食べる方が好きだな」


「オレは薄く切って油で揚げたやつをカリッと焼いたのが好みだな。サラはどうだ?」


「わたしは厚めに切って揚げた方が好みね。柔らかい感触も楽しめるし」


「揚げたものだと私は一度潰して具を混ぜたものが好きですね」


「僕は素材の味を生かしてそのまま食べたいですね」


 同じ食材を使いつつこれだけのバリエーションを作ってしまうというのはこれしか食べるものがなかったせいであろうか。人間の美味いものが食いたいという欲望は大したものである。


◆ーー◆ーー◆


 翌日の朝食も同じ食材を入れた具沢山のスープに炊いた米というシンプルなものであった。それに漬物が付いてくる。手早く食事を済ませると村を発ち王都へ向けて出発する。


 この依頼での俺は伝令人(メッセンジャー)ではないということになるのでいつも腕に巻いている伝令人の目印であるバンダナも荷物にしまい込んでいる。『伝令人は貴重な品物を運ばない』は守らなくてはいけない。『実は時々貴重なものを運んでいる』という噂になるだけでも伝令人の危険度が上がってしまう。


「久しぶりに伝令人ではない仕事だな」


 独り言のつもりだったがマユには聞こえたようだ。


「そうね、護衛としてじゃなく組むのは久しぶりね。よろしく頼むわよ」


一人称整理を兼ねて

チャック:俺 麻婆豆腐

マユ:あたし 湯豆腐

サラ:わたし 厚揚げ焼き

キース:オレ 油揚げ焼き

ティナ:私 飛竜頭

ランド:僕 冷奴


まあ一人称や口調は一応TPO見てということで。エライ人相手にオレとか使わないぐらいの分別はあるはず。

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