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40:樹上土産

 空中回廊の末端に位置するゾーンと呼ばれる街で一泊した翌朝、三人で朝食をとったあとでジョウは道具屋へ行きたいというしネイはお茶にしたいというのでそれぞれ単独行動となり、俺は土産を買おうと飲食物を扱っている店に入って店員に相談していた。


「こちらの名物だとやはり蜂蜜酒と樹液酒が人気ですね。二本を一緒に買って行かれる方も多いですよ」


「ちょっと遠いから重たいものはできれば避けたいな。あと拠点にしているギルド支部で配りたいから小分けしやすいものだとありがたい」


「それでしたら蜂蜜を使った焼き菓子はいかがでしょう。水分少なめに仕上げていますから日持ちしますし重たくありませんよ」


「それはいいな。事務の女の子たちも喜びそうだ」


 俺がそういうと店員の女性の目の色がちょっと変わった。


「女性向けということなら、こちらの高級蜜蝋を使った化粧油(クリーム)が絶対のおすすめです。わたしも使っていますが他のものとは全然違いますから!」


 迫力に押されて見本品を手に取って通常品と比較してみる。確かに微妙だがちょっと感じが違う。


「これはもしかしたら巨大蜂の巣から採れた素材を使っているのか?」


「そうなんです。普通に飼われている蜂のとはまったく違うんですよ」


 やはりさっき感じた微妙な違いはわずかな魔力のようだ。巨大蜂自体が魔物であるのでその生成物である蜂蜜や蜜蝋にもわずかな魔力が移動しているのだろう。


「いいもののようだな。じゃあこれとさっきの焼き菓子に、蜂蜜を小瓶で一つ頼む」


 小瓶のほうはギルドの給湯室に置いておけばみんなで使ってくれるだろう。あとのものは人数に十分行き渡るように数をそろえるが化粧品なら小さいのでそれほどの荷物ではない。代金を支払って品物を受け取り、待ち合わせ場所である階段前に向かうとネイが既にそこで待っていた。


「ネイだけか。じゃあとりあえずこいつをもらってくれるか」


 言って先ほど購入した化粧油を渡す。


「これをわたしにですかー」


拠点(オトヤ)の女性陣への土産と言ったら店員から強力に薦められてな。ここの高級蜜蝋を使った化粧油だそうだ」


「そういうのでしたかー。なら遠慮無くいただいておきましょうねー」


「よう、待たせたな。二人とも用事は済んだか」


 遅れてジョウも合流してきた。


「ちゃんとみんなへの土産も買えたぞ。そうだ、これを渡しておこう」


 そう言ってジョウにも化粧油を渡す。


「なんだこりゃ、化粧品か? 俺はこんなの使わないぞ」


「そいつはレーナの分だよ。ウチの女性陣みんなに渡すのにレーナだけないってのもなんだし、ジョウからわたしといてくれ」


「わかった。ありがたくもらっておくよ。じゃあそろそろ降りるとするか」


 降りようとするとこちらの階段には合図の鐘がないのに気がついた。


「こっちの階段は降りるときに合図をしなくていいのか」


「こっちは終端ということもあってすれ違い待ちするのは面倒だからな。使う木材が倍になってしまうから大変だったらしいが地元の商店が金出し合って上りと下りの二本を作ったそうだ」


「それはありがたいことだな」


 なんでも下りと上りは樹を挟んで反対側になっているらしい。踏み板の隙間から下をのぞいていると確かにときどき上っている人間が目に入るがすれ違いはしなかった。一応休憩のための広くなったスペースもあるが下りでもあり順調に下まで辿り着いた。


「ここはだいぶ賑やかなんだな」


 ゾーンの街は地上もかなり立派なものだった。


「街道としては途中なんだが、ここから分岐していく普通の道がかなりあるからな。行き交う人も多いんだ。道は険しいが王都方面へ抜けられる近道もあるぞ」


 ジョウにそう言われて周囲を観察してみると確かに徒歩の人間が他所よりも多い感じだ。


「そういうわけでこちらのギルドにも引き渡す書類はあるからな。さっさと手続きして次に進もう。次が最終目的地のエイアンだしな」


「エイアンが目的地ってことはここよりも栄えてるのか?」


「エイアン自体はそれほどの街じゃない。ただ北の国へと繋がる道に通じてるんだ。そっちとのやりとりでも使われるからギルドの支部も大きめになってて便利なんだ。北へ向かう道はまだ十分整備されていなくてすぐ北のミーダまでしか街道としては整備されていないがな」


◆ーー◆ーー◆


 数日ぶりの地上は最初ちょっと違和感があった。空中回廊は全面が木材でほぼ平面だったが、整備された街道とはいえ地面は凹凸もあり時々は小石も転がっている。視界も遠くまで見通せた回廊とは違って地面の起伏や木々で見通しが悪いところも多い。


「いったん空中回廊に上ったらなかなか降りたくならないのは入場料金だけの話じゃないのかもな」


「確かに回廊から降りたがらないやつも多いって言うな。いろいろと物の値段は高いから仕事もせずに居続けるのは難しいが。上で商売やってる連中でも交代制で店員を送り込んでるのが多いぞ」


「結構小さい屋台が多かったが個人は多くないのか」


「組合がしっかり押さえてるからな。屋台もほとんどは地上に店があってその出張販売みたいな扱いだ」


 そんな話をしながら日暮れまで歩いて目的地のエイアンへと到着した。




日付変わってしまったが寝る前だから週末更新でいいよね。

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