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31:新人到着

 ウトクの村を出発し、山小屋で一泊して昼過ぎぐらいには山道を抜けて街道まで出る。ここからは普通に歩けば毎日村や街で宿泊可能だ。男女で一部屋ずつとれるので変な気を使わなくても済む。


「おおっ、野菜料理がこんなにたくさんあるのか」


「村ではキノコばっかりッすからねえ」


「見たことない果物もたくさんありますよ」


 最初の宿泊地オッタの村は普通に農村で宿の食堂もそんなに高級というわけではないが、村から出たこともなかったドワーフたちは豊富な野菜料理にいちいち感激している。このへんはエルフの食事情とも似ているようだが、客が来ても『俺たちの料理を食え』といつも通りのものを出すからドワーフが野菜好きという認識にはならなかったのだろう。


◆ーー◆ーー◆


 同じく農村であるウオンとアマバでそれぞれ一泊し、次のウジョウは闘技場(コロシアム)の街だ。腕自慢が賞金を目的に試合をし、それに賭ける人たちも集まって賑わっている。道場も集まっているので闘技場目的でない冒険のために鍛えたい者たちも多い。そして当然ながら武器や防具を扱う店も多く、クアンとライマーがそのうちの一つに吸い込まれていった。


「このまともに振れないような妙な形状の武器はどう使うんだ?」


「それは乗騎での立ち合い専用になっておりますね。すれ違いざまにぶつけるのでほぼ支えるだけでいいようになっています」


 クアンが目に付いた武器について店員に説明を求めている。ライマーの方は防具の方に目をつけたようだ。


「この胸と腰しか防御してない鎧はなんなんッすか」


「そちらは闘技場の女戦士に人気ですね。選手は自分に掛けられた金額の一部が渡されますが、露出が多いと賭けてくれる人が増えて収入が上がるので。成績はいまいちだけど人気があって収入が多い女戦士なんかもいますよ」


 ドワーフの男二人は話を聞いているうちに「実際に使っているところを見たい」と言い出したので、次の一日を使って観戦に出向いた。俺は二人につきあって観戦したがマユとイーヴェットの女性陣は買い物に出かけて別行動だ。


「ふむ、使いづらいかと思ったが試合の形式によっては役に立つのだな」


「うぉー、あのお姉ちゃんの格好すごいッす」


 二人とも熱心に観戦しているがポイントは違うようだ。なおこのあと女性陣と合流してこの街の名物スタミナ料理を食べに行ったが、イーヴェットの服装が少しオシャレになっていた。


◆ーー◆ーー◆


 ウジョウからリセン、アゴット、トニッセでそれぞれ一泊し、オトヤの一つ手前の学園都市ヤダイまで戻ってきた。


「買い物に行くわよ、チャック」


 宿を二部屋確保し休憩しているところで男子部屋にマユが呼びに来た。


「なんだよ、まだ奢らせようっていうのか?」


「今日の買い物はチャックの分よ。魔力をコントロールする練習がいるって言ってたでしょ。ここなら練習に使う魔法の道具が手に入るから」


 イーヴェットも魔道具を見たいと言い、クアンとライマーは街を観光したいと言うので別行動をとる。マユに案内されて訪れた店は結構大きな規模で客層は年齢低めだった。


「ここは初心者向けの道具を多く扱ってるの」


 マユはそう言っていくつかの魔道具を持ち試用室に入る。部屋に結界があるそうで妙に静かな感じだ。部屋の机にマユが透明な石が填まった道具をいくつか並べ、俺に魔力を飛ばすよう促す。俺が魔力を飛ばすと道具がいろいろな色で光り出した。


「やっぱり緑が強いわね。魔力消していいわよ」


 俺が魔力を消すと道具の光も消えた。


「これはある程度以上の魔力を受けている間だけ光る道具なの。魔力の波長によって感度が違うんだけどチャックは緑だから風属性が強いみたい」


「魔力を使い続けないとダメだっていうのは役に立つのか?」


「ランプの替わりに使うのは実用性に欠けるけど、作るのが簡単だし魔力の強さで明るさが変わるから魔力制御の練習用に使われてるわ。じゃあ次はこっち」


 次の道具は金属の筒に透明な棒が仕込まれたものだった。刃ではなく棒がついたナイフといった感じだ。それに魔力を当てる、というか狙うのはできないのでとにかく魔力を飛ばすと緑に光り出した。今度は魔力を止めても光ったままだ。


「これも魔道具作成の初心者向けで携帯用の魔法のランプだけど、光と一緒に魔力も放出しちゃうから効率悪いのよね。でも逆に目印や魔力感知の訓練にも使えるの。チャックは自分の魔力の変化を感じたいんだから同じ属性がいいはずよ」


「なるほど、魔力制御と魔力感知の訓練用か。値段はどれぐらいするんだ?」


 言われた金額はそれぞれちょっといいところでの食事一回分ぐらいだった。


「わかった。両方買おう。あとで訓練の仕方も教えてくれ。それからさっきからイーヴェットがそわそわしてるから店内の案内してやってくれ。俺は会計済ませて外で待ってるから」


◆ーー◆ーー◆


 翌日オトヤに到着し、まずはフォージのところへ三人を送り届ける。


「あと、これはパウルに作ってもらった短剣だ。フォージに見せるようにと言われてきた」


 腰から短剣を外してフォージに渡す。フォージは短剣を抜いてじっくり見ていたがやがて唸り声を上げた。


「うーむ、おのれ師匠め。歳をとっても負けず嫌いなところは変わらんな」


「こっちに帰る途中で大牙猪を相手にしたが、いい出来だったぞ」


「それはそうだろう。だが、これは鍛冶屋にしかわからないだろうが俺が渡した短剣は師匠の技法に俺が改良を加えたものを使っていたんだ。それがこの短剣はその手法を更に改良したものを使ってるんだ。俺もまだまだ修行をせねば」


 フォージが悔しがりながらも依頼書に完了確認のサインをする。これをギルドにもっていけば今回の任務も無事終了だ。

そういうわけで往路で詰め損ねた設定を帰路で使う。想定外だったが同行者増えてて反応を書き分けるのが楽だった。

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