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29:職人集団

2025/05/18 19:20 表記ブレ修正

 オトヤの道具屋フォージの師匠でドワーフの里ドウチ村のパウルに短剣(ショートソード)を作ってもらうことになったので、その完成とオトヤへ派遣される人員の準備が済むまで七日ほどは滞在することになる。


「宿は中門の外だろう。期限付きの通行証を出してやるから、こっち側も見に来るといい」


 パウルの好意で滞在中の通行証をもらったので付き添いがいなくても中門を通ることができるようになった。親方といわれるだけあって村では顔が利くらしい。


 せっかくなので訓練場に通って自主練したりたまにやってくるドワーフと手合わせしたりしていたら、噂になって結構な人数がやってきたりした。腕前を見せて自分専用の武器を求める人間(ヒューマン)が来ることはそこそこあるようだが、前衛の攻撃系がほとんどで俺のような短剣を使う盗賊系は珍しいらしい。


「実戦で使ってるやつの動きを見る機会は少ないからな。すまんが相手をしてやってくれ」


 そういうパウルは数人のドワーフを率いて順番に手合わせしている。


「思ったよりも外に行きたい若いやつが多くてな。鍛冶の腕も合わせていろいろ選抜してるところだ」


 ドワーフは人間(ヒューマン)より頭一つぐらい背が低くがっしりした種族で俺から見るとほとんどは立派な壮年に見えるが、パウルが相手をしている連中は若者らしい。


◆ーー◆ーー◆


 夕刻近くになるとマユと待ち合わせて食事に行く。


「今日は中の区画にあるお店にしましょう。魔法使いの寄り合いでいいお店があるって聞いたの。坑道あとを利用して栽培されたキノコ料理が名物でドワーフ向けの味付けなんだって」


 マユは昼間はだいたいドワーフの魔法使い達と交流しているらしい。俺と訓練場で話している連中は職人肌というか鍛冶の話と戦闘の話しかしないが、魔法使い達は雑談も挟んでいるようだ。そのおすすめの店でドワーフ好みの強い酒に合う料理を食べながら昼間の情報交換をする。


「ドワーフにも女の子の魔法使いってけっこういるのよね。レベルの方も結構高いし」


「そうなのか。外ではドワーフの魔法使い自体がめったにいないだろ?」


「魔法炉を扱うのに魔法使いの適性は重要なのね。だから適性があるドワーフはほとんど魔法炉の担当になってるらしいわ」


「魔法使いのドワーフをあまり見ないのはそういうわけだったのか」


「そうなんだけど、やっぱり魔法使いの素質があるのに同じ仕事ばかりだとつまらないみたいでね。みんなで勉強会開いてるんだって。あたしもいろいろ訊かれたわ」


 どうやら鍛冶職人だけでなく魔法使いのほうも外の情報には飢えているようだ。


「食事が終わったら買いものに行かない? 中の区画(こっち)にいい感じのお店があるんだって」


「そうだな。オトヤの連中に土産も買いたいし」


 食事を済ませておすすめの店に移動する。扱っている品目は主に日用品という感じだが装飾が施されたものが多い。ウトクの村では木製のコースターを入手したしこちらでも実用品をと、小型のナイフを選んだ。テーブルで果物を剥いたりちょっとした作業に使える程度の日用品だ。


「ねえ、チャック。このネックレスあたしに似合うと思わない?」


「はいはい似合ってる似合ってる。また土産が欲しいんだな。買ってやるよ」


◆ーー◆ーー◆


 六日目、いつものように訓練場に出向くと鎧を着込んだパウルが待っていた。


「お前の短剣がだいたいできたぞ。刃付け前だがちょっと試してくれ」


 パウルがそう言いながら手斧と盾を構える。そのための鎧だったか。たしかに型をなぞるより実際に使ってみるのが確実だ。


「そうだな。じゃあ相手をしてもらおうか」


 もちろん刃が付いていないとはいえ試合では寸止めで行うが、振りやすく思ったところできっちり止まる。数回の試合を行うとバランスの良さが実感できた。


「すごく扱いやすいな。文句なしだ」


「ではこのまま仕上げよう。明日には連れて行く連中も紹介できるからそのときに渡そう。そのまま出発でいいか?」


「わかった。こっちもそのように準備しておこう」


◆ーー◆ーー◆


 明けて七日目、冒険者ギルドの前にはパウルと旅支度をした三人のドワーフがいた。そのうち二人は訓練場でも何度か見た顔だ。


「男二人はウチの弟子だ。女の方は魔法使いだが是非にということで同行してもらうことになった」


「クアンだ。フォージとはほぼ同期だがあいつの方が少しだけ早く弟子入りしてる。あいつが村を飛び出たときに尻拭いさせられたから一度文句を言いたかったところだ」


「自分はライマー。一年前にやっと見習いを卒業させてもらったところッす。外に出れば自分でもミスリルとか扱えると聞いて志願したッす」


「魔法使いのイーヴェットです。マユさんから外に派遣される人を募集してると聞いて。専門は回復魔法だけど魔法炉も扱えますし家事全般も得意なので是非助手としてと」


「俺たちの自己紹介はいらないかな。今回の依頼では護衛ではなく案内人として同行することになる。もちろん無事に送り届けられるよう全力を尽くすが、いざというときは自衛してもらいたい。よろしく頼む」

「ここでは鉱石の採掘から精錬までやってると聞いていたが、山は見当たらないな」

「鉱山っていっても山とは限らんぞ。平地だろうと地下に鉱脈が伸びていればそれが鉱山と呼ばれるようになる。この村だと一番奥の区画が鉱山の入口だな」

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