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28:頑固一徹

2025/05/17 後書きに次話に入れるほどでもない書き残しを追加

2025/10/26 表記微調整

 林業と木工業の村ウトクを出発し、山小屋で一泊してドワーフの里ドウチに近くなると俺でもわかるぐらいに森の様子が変わってきた。背の高い樹木がほとんど無くなり、材木としては使いづらいような低い木がほとんどになっている。


「金属を精錬するのに多量の木炭を使ってたから、一時は木がほとんど伐られてはげ山になるぐらいだったって。魔力で加熱する魔法炉が開発されてむやみな伐採はなくなったけど、土地自体が木が育ちにくくなっちゃったって魔法学校で習ったわ」


「それもやっぱり魔力の流れがどうのとかそういうことか?」


「ううん、単純に土に金属のカスがたくさん混じって植物に悪影響があるだけだって。そういうのに強い種類は少ないからこんな感じになってるみたい」


 話をしながら歩いているとドウチの村が見えてきた。


「規模の割には守りが堅いわね」


 マユの言う通り村は高い塀に囲まれていた。


「フォージが言うには『職人の秘密を守るため』だそうだ。侵入だけじゃなく逃走も防ぐ形らしい」


 門に近づき門番の兵士に呼びかける。


「オトヤの街からきた伝令人(メッセンジャー)だ。入村の許可を求める」


 フォージから『ドワーフの連中は要件を手短に使えることを好むからな。細かい挨拶は抜きで用件を伝えろ』と聞いていたので余分に丁寧な挨拶はしない。


「伝令人か。門から入ってすぐの区画が外来者用になっている。その奥に用事があるなら中の者に伝令を頼んでくれ。冒険者ギルドは中門の横だ」


「わかった。ありがとう」


 門番に礼を言って門をくぐると宿に食堂、道具屋などが並んだ区画に出た。曲がりくねった通りを道なりに進むと門が見えてきたのでその脇の冒険者ギルドの看板が掛かった建物に入り、受付に声をかける。


「オトヤの街のフォージというドワーフからの依頼でここのパウルという者にメッセージを運んできた。取り次ぎを願いたい」


「ああ、親方宛ですね。文書のお届けだけならこちらで代行することもできますけど」


「いや、依頼にはオプションがついていて、文書を渡すだけでなくそのあとについても打ち合わせがしたいんだ」


 言いながら腰のナイフを鞘ごと外してカウンターに置き、柄の刻印を見せる。


「これを見せれば依頼人の使いだとわかるはずだといわれた。文書と一緒に持って行ってくれないか」


「わかりました。お預かりします。荷物は別料金になりますがよろしいですか?」


 料金を払って現地の伝令人に言づてを頼み待つことしばらく。簡潔な返事が戻ってきた。


『明朝、迎えのものを出すからこちらに来い。ナイフはそのとき返す』


◆ーー◆ーー◆


 翌朝迎えに来た使者に導かれて中門をくぐると、中の区画には槌音が響く工房が建ち並びあちこちから煙がたなびいていた。


「この先の訓練場で親方が待っている。立ち合いを望まれているからそのつもりでな」


 案内されたのは50歩四方ぐらいの丈夫そうな塀に囲われた空間だった。そこで待っていたフォージ作のナイフを持っているドワーフが彼の師匠だというパウルだろう。


「お前がこいつの持ち主か。フォージの奴も変なものを作ったな」


 そう言いながらナイフを渡される。


「もう一本の得物はあっちの模擬戦用武器から好きなのを選べ。こいつの使い方を確かめさせてもらう」


 備品の武器からいい感じの木製短剣を選び、ナイフも左手で抜く。振り返るとパウルは木製の手斧に小型円盾(バックラー)を構えていた。


「はぁっ!」


 開始の合図も無しにいきなり打ち込んできた一撃を左手のナイフでかろうじて受け流す。


「今のを()なすか。ならどんどんいくぞ」


「くっ!」


 答える余裕もなく、繰り出される連撃を避け、受け、往なしていく。タイミングを計って右手の短剣でも打ち込んでみるがそれは盾に受けられる。ちょっとこれは厳しいなと思っていると攻撃が止んだ。


「なるほど、たしかにそのナイフの持ち主に間違いないようだな」


「今のでわかるのか?」


「そんな変な調整したのをきっちり使うなんて持ち主に合わせて作った以外にないだろう。フォージのやつもなかなかいい仕事してるな」


 褒めてるのかなんだかよくわからないことを言い出した。


「しかしフォージの奴も師匠に自分の作品を見せて来るとはなかなかいい度胸だ。チャックとか言ったな。七日ほど待てるならお前さんの短剣(ショートソード)をあつらえてやろう。代金は今のを下取りしてこんなところでどうだ」


 見せられた金額は高額ではあるがドワーフに注文するには破格であったし、ギルドに預けてある金で払えない金額でもない。


「そういうことなら是非お願いしよう」


「よし、フォージの奴に師匠の威厳というものを見せてやろうじゃないか。あと派遣の人選と注文品もたしかに承った。短剣を引き渡す頃に出発できるよう調整しよう」

「フォージは『二日もあれば人選して出発できる』って言ってたが?」

「あいつは突然『外で修行してくる』と言って挨拶もそこそこに出発して行ったんだ。仕事の引き継ぎとか全部ほっぽってな。普通は七日ぐらい必要なもんだ」


**

プロットでは村の散策までいきたかったんだがちょいと長くなった。30話までで一区切りしたいんだが。

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