19:家族面談
ヤコウの街で代理注文を終えての翌日の昼。待ち合わせ場所の広場に現れたウーラは普通に町娘という感じの服装だったが、じっくり見ると素材や仕上げなどに手がかかっている感じもうかがえる。思い返すと高い店を知ってたりツケがきいたりとただの庶民ではないらしい行動もちょいちょいあった。
「昨日はちょっと驚いたが、こうしてみるとたしかにいいところのお嬢様って感じだな」
「あたしの中身は魚屋の娘だからね。爺ちゃんの開いた小さなお店も覚えてるし」
「この間は酔ってるからかと思ったが、やっぱり外見については否定しないんだな」
「子供のころから看板娘で可愛い綺麗は言われ慣れてるのよ。おかげで10代のころはいろいろ大変だったけど」
「今はもうそんなことはないのか?」
「いろいろあったし、地元ではもう本性も知られてるから。それよりそろそろ案内してよ」
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「いったいどんな子が来るかと思ったらオットー水産のお嬢さんかい」
ヤコウ冒険者ギルドの伝令人代表ジーナもウーラのことは知っていたようだ。
「家にいりゃ別にお金に困るってこともないだろうに、なんで伝令人になりたいとか言うんだい?」
「弟も嫁さんもらって夫婦仲もよくて仕事も順調で。みんなあたしに気は使ってくれるんだけどちょっと居心地が悪いの。だから独立したいなって思ってたんだけど、チャックに話を聞いたらなんだかやれそうな気がして」
「お嬢さんは前からお使いでちょいちょい街の外にも行ってたしね。でもいつもは隊商と一緒にいたのにどうしてチャックと一緒に?」
「酒飲んで寝坊して置いて行かれたそうだ。お金払って同行契約してるのでなきゃ置いていくよな。それで一人で帰ろうとして野犬に追われてたところに俺が行き会ってここまで同行してた」
「はあ、まだお酒で失敗してるんだね。大事にならなくてよかったよ。じゃあ志望動機は聞いたってことで、伝令人についての説明をはじめようかね」
ジーナの説明でウーラが一番食いついたのは伝令人特典の仮眠室利用だった。さすがに宿代を節約して酒に回す女だ。
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「今日はお世話になったわね。お礼に夕食をごちそうするわ」
一通りの説明を受けて冒険者ギルドへの登録も無事終了したところでウーラから食事に誘われた。
「ああ、ウーラの選ぶ店なら外れはないだろうからな。よろしく頼むよ」
「信頼してくれるのはありがたいわね。じゃあ案内するわ」
大通りを市場の方へと向かって歩いてしばらくするとオットー水産が見えてきた。ウーラは1階の小売りスペースに手を振って通り過ぎると角を曲がる。
「目的地はこの先ね。看板とかないけど気にしないで」
そういいつつウーラは一軒の家の戸口に立ち扉をノックする。ちょっと間を置いて開いた扉の向こうには精力的という感じの男性が立っていた。
「やあ、チャック君だね。わたしはニール。オットー水産の社長をやらせてもらってる。娘が世話になったときいて招かせてもらったよ」
急な展開に頭がついていかず横目でウーラを睨む。
「昨日も誘ったけど嫌がられたし、黙って連れてきちゃえばなんとかなるかなって。ちゃんと夕食はごちそうするし嘘は言ってないわよ」
「招待の手段は娘にまかせたのでね。まあとにかく入ってくれたまえ。食事の仕度もそろそろ終わっているはずだ」
招かれた食堂のテーブルには既に3人の男女が着席していた。俺たちもあいている席に着き、全員が着席したところで社長が開始の音頭をとった。
「昨日も話は聞いていたが改めて紹介しよう。ウーラが世話になったというチャック君だ。今日はゆっくりしていってくれたまえ」
俺と先にテーブルについていた人たちも挨拶をする。先にいたのはマーク君とその奥さんヴィータに、俺は初対面の社長の奥さんがウィラというそうだ。
夕食のメニューは魚介類と野菜を使った煮込み料理だった。魚と野菜を水だけで煮込んだ状態で出され、数種類のタレで各自が味付けして食べるという。
「もともとは漁港で漁師さんたちが大鍋で煮込んで各自が好きな味付けして食べてた料理なの。隠居してる爺ちゃんの家だと家族で一つの鍋からとってるわね」
ウーラが説明してくれるところによると庶民的な料理のようだ。
「さて、チャック君。ウーラは伝令人として採用されたのかな」
「基本は冒険者と同じで仕事を斡旋してもらって報酬をもらうんで、登録はよっぽどじゃなきゃ受け付けてもらえますよ。仕事がもらえるかは能力や信頼度によりますが。隊商にくっついていくのであってもナヤマまで往復できるんなら大丈夫じゃないかと思いますけど」
「ふむ、そうなのか。まあどうしようもなくなったらうちに帰ってきてもいいしな」
社長はそう言うとチラリとウーラを見て言葉を続けた。
「一度は嫁に行ったのに帰ってきたんだし」
「ぐふっ」
ちょっとむせた。
「姉さんは酒飲みすぎるって理由で嫁ぎ先から返されたんですよ。チャックさんも下手につかまらないよう気をつけてくださいね」
「いや、冒険者なんて酒癖悪いやつが多いですからね。暴れたり騒いだりしないのなら上品な方ですよ」
「父ちゃんもマークも言わなくてもいいことまで言うし」
ウーラがちょっとすねている。
「そういうことなのでな。娘は結婚生活に向いてないから嫁にもらってくれとかは言えないが伝令人の先輩として仲良くやってくれるとありがたい」
「ウーラがここで活動するんならオトヤが拠点の俺とは接点少ないと思いますが」
「それなんだけどね、あたしはここだと良くも悪くも名前と顔を知られてるし別の街を拠点にしようかなって。知り合いがいると心強いし連れてってくれない?」
面倒な話になってきた。
「俺も冒険者はそこそこやってるけど伝令人としてはそれほど経験ないんだって。新米を世話するほどの余裕はない」
「そこをなんとか」
断っても食い下がられるので根負けして条件を出す。
「ここの代表のジーナさんにオトヤへの定期便に同行する仕事もらえたなら、あちらに来たときにギルドへ紹介しよう」
「うーん、仕方ないわね。しばらくこっちで信頼を溜めましょう。でもきっとそっちに行くから」
問題が先送りになっただけの気もするがとりあえず結論には到達した。なおちょっと酒に逃げてしまったためこの晩は泊めてもらうことになってしまった。
キャラクターの動くにまかせたらなんかフラグが立ってくるなあ。なおウーラがバツイチ設定は登場時点からの構想にありました。あとは隠れてる設定はないけどそのうち生えるかも。




