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17:職業案内

2025/04/13 あとで書いた分と矛盾する箇所を調整

伝令人(メッセンジャー)って、儲かるの? あたしにもできるかしら」


 トクヤを出発してから街道沿いの最初の広場で休憩中、ウーラが尋ねてきた。


「ウーラは魚屋の娘だと行ってたじゃないか。家を継ぐんじゃないのか?」


「ウチは弟が継ぐことになってて親父の下で絶賛修行中よ。もう嫁さんももらってて若旦那と若おかみって感じなんだけど、おかげであたしが家にいるとなんとなく居心地悪くてねー」


「ああ、冒険者でも家の中で微妙な立場のヤツは多いな」


「で、伝令人の仕事とかどうかなって。チャックは昨日のお店でも普通に飲んでたし結構お金あるんでしょ。あのお店は結構高いけどあたしはツケがきくからおごろうと思ってたのに」


「おごろうっていうなら先につぶれないでくれ。それはともかく俺がそこそこ稼げてるのは単独(ソロ)で遠出ができるからだぞ」


「普通の伝令人だとそうじゃないの?」


「街の中で伝言を届ける内回りだと危険は少ないがバイトをしてなんとか、近距離でも外回りに出られるようになると暮らせる程度の稼ぎにはなるっていうところかな」


「それじゃあ自衛能力がきびしいあたしなんかだと苦しいかしら」


「外回りでも俺みたいな単独(ソロ)は珍しいんだ。普通は複数人で組むから自衛力がなくてもできないことはないというが、俺は最初から単独(ソロ)でやってたからな。詳しいことは伝令人をまとめてる冒険者ギルドで訊くといい。ヤコウにも支部があるはずだ」


「そうなんだ。じゃあヤコウについたらギルドに紹介してくれない?」


「俺もツテがあるわけじゃないが、案内ぐらいはできるな。しっかり説明してもらうと時間がかかるから着いたその日はきついか。次の日……は俺も届け物を済ませなきゃならんし、その次の日でどうだ?」


「あたしも家族に説明しといた方がいいからそれでいいわ。細かいところはヤコウに着いてからにしましょう」


「俺の方もギルドに着いたら伝令人志望者が来ると伝えておこう。さて、そろそろ出発するか。次のキジグ村の名物はなんだったかな」


「魚と芋の揚げ物のセットね。朝にヤコウを出発して昼ごろに軽く食べて先へ進む人向けに軽めになってるわ。これはエールに合うのよ」


「酒は一杯だけな」


「大丈夫よ。わかってるから安心して」


 そしてキジグでの昼食時、俺はここの名物だという特大ジョッキで一杯のエールに驚かされることになった。注文をウーラにまかせたらバレないようにか「同じものをこっちにも」で俺にも頼まれてしまったし。魚と芋によく合ったのは間違いないが料理も山盛りだった。


◆ーー◆ーー◆


「ここの料理は軽めじゃなかったのか?」


「軽い分だけ普通でも量が多いのよ。実家じゃあまり飲ませてもらえないし今のうちに飲んでおかなきゃって」


「見てたら他の客は小サイズのセットを頼んでたよな。そういうことなら俺まで巻き込まないでくれ。これでも仕事中なんだ。」


「だって女の方が大きいジョッキ持ってるのってさすがに恥ずかしいじゃない」


 村の広場で休憩しながらウーラに文句を言う。見栄えが悪いので部屋を取ろうかとも思ったが『昼間から大酒飲んでご休憩のカップル』に見られるのもいやで屋外で休んでいる。酔ったままだと気配感知にも影響するのですぐには出発するわけにはいかない。なお注文したものを残すのには非常に抵抗があるので完食した。


「ねえ、伝令人(メッセンジャー)の仕事って楽しい?」


「まあな。いろんな土地に行っていろんなものを見聞きするのは面白いぞ。土地ごとにうまいものもあるしな」


「あたしみたいな美人とも会えたりするし?」


「自分で言うかね。まあ見た目が悪くないのは否定しないが」


「うん、酒さえ飲まなきゃ美人なのにとはよく言われる」


「酒をやめるというのはないんだな」


「当然でしょ。お酒がなくってなんの人生なのよ」


「いっておくが酒で仕事に寝坊したら伝令人(メッセンジャー)としてもペナルティあるからな」


「ううぅ、仕事中は控えるようにがんばる」


 ちょっと話し込んでいる間にだいぶ頭もはっきりしてきた。試しに気配感知を使ってみるが感触としては問題ない。


「さて、そろそろ出発するか。今からならヤコウへ着くのは夜になるかな」


「そうね。でも上陸中の船員さん向けに遅くまでやってるお店もあるから食事は大丈夫だと思うわ」


「そいつはありがたいが、ウーラはヤコウに家があるんだろう。そっちで食うんじゃないのか」


「魚屋だからね。朝早くから市場に行くから夜は早いのよ。たぶん帰るころには食事終わってるし、間に合ってもあたしの分はないから。明日も朝は外で食べてから帰るつもり」


「一応いっておくが、ウーラの地元で二人部屋に泊まるとかはナシだからな。酒だったらおごってやるから」


「いいの。それじゃあちょっといいお店で飲みましょうか。新鮮な魚を使った煮込み料理が名物なのよ」


「酒に関してなら間違いないのはよくわかった。まかせるよ」


 ヤコウに着いて案内された店は結構大きな店構えでちょっとひるんだが、料理と酒はさすがにうまかった。ウーラもつぶれるほどには飲まずにいたので、無事に一人部屋に送り込むことができた。



「ウーラが伝令人(メッセンジャー)の仕事に興味を持つ」というだけのプロットだったんだが、どうしてそうなったというのを埋めていったらなんか思わぬ展開になったなあ。

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