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12:群狼襲来

「狼たちは離れていく様子はない?」


 護衛パーティーのリーダーで女戦士のサラが野伏(レンジャー)のティナに問いかける。


「気配はあいかわらず私たちを囲んだまま一緒に進んでるわね。こっちが固まったんで様子見てるのかも」


「ともかく今は進みましょう。もう少し行けば広場があるから動きやすくなるし」


「このへんの狼は結構頭がいいからな。その前に動く可能性が高いと思うぞ」


 リーダーの指示に対して俺が意見をつける。


「じゃあ、どういう感じで来ると思う?」


「先に一匹が動いて注意を集めたところで周囲から一斉にというパターンが多いな」


「わかったわ。じゃあわたしが前でキースは後ろを警戒。右はティナでチャックは左の警戒をお願いするわね。動きがあっても警戒は維持。ランドはいつものように怪我人に備えて待機で」


「了解した。行商人さんと伝令人さんも短剣構える用意ぐらいはしといてくれよ」


 キースが応じて戦闘が苦手な面々にも指示を出す。俺も一応伝令人なんだがきっちり戦力扱いだ。警戒を解かずに進みつつ右後ろのキースに声をかける。


「このパーティーのリーダーはサラでキースは補佐という感じなのか?」


「どっちがリーダーって決めたわけじゃないけど、同じ村の出身であっちが二つ年上だからな。いつまでたっても弟扱いが抜けてくれないんだ」


「あー、うん、逆らえない相手っているよな」


「そうなんだよな。いいかげん一人前の男としてみて欲しいんだけど」


「無駄口叩いてないでちゃんと警戒しなさい、キース!」


 キースの言葉にうんうんとうなずいていると前方から叱責が飛んできた。もちろん魔力を飛ばしての警戒は怠っていないが。キースは肩をすくめて前へと向き直る。狼に囲まれた状況にしては緩い会話だとは思うがガチガチに固くなるよりはリラックスしていた方がいい。たぶん。


 もう少しで広場に到着しそうだという地点で予想通り狼たちが動いた。


『ウォォォーン!』


「後ろね! まかせたわよ、キース」


「おう、守りはまかせろ」


 後ろから姿を現した狼は雄叫びを上げ、一気に距離を詰めてくる。こちらも戦えるものは皆武器を構えるが、振り向いて数歩前進したキース以外は打ち合わせ通り警戒を続けたままだ。飛びかかってくる狼をキースが盾で防ぎ狼が唸り声を上げる。


 それを合図のように前方から二匹と左右に一匹ずつの狼が姿を現し突進してきた。だが予測していた行動なので焦ることなく対処する。俺は左から来た狼を短弓で狙うが、惜しくも外れ。


『ギャウン』

「よし、仕留めた!」


 右側のティナの長弓は見事に命中させたようだ。


「ティナ、こちらに加勢を。チャックは大丈夫?」


「矢は外したがなんとか止める。終わったらこっちも頼む」


 狼に対処しつつも状況を確認するサラに応えながら短剣を抜く。不意打ちに失敗し一匹が倒されたためか目の前の狼が慎重になっているのは幸いだ。


「キースの方はどうなってるの?」


「すばしっこくてなかなか当たらないがオレも全部防いでる。加勢は気にしなくていいぞ」


 さすがに戦士職だけあって一対一で狼ぐらいなら遅れはとらない腕前のようだ。


「たしかにこいつらすばしっこいわね。こんどは外れ。っこのぉ!」


 前方の二匹に加勢したティナの方はやや苦戦のようだ。俺の方も短剣を構えてにらみ合うが攻撃の隙がない。どうしたものかと考えているといきなり狼が左右にステップを踏むように飛びかかってきた。短剣を持っていない方から噛みつきにきたのをとっさに左腕で受けてしまう。


「ぐぁっ」


 思わず悲鳴が漏れてしまう。


「大丈夫、チャック!」


「腕を噛まれたが大丈夫だ。まだいける」


 サラの声に答えながら左手でナイフを抜く。盾がわりには少し頼りないがないよりはマシだ。


「チャックさん、回復(ヒール)は必要ですか?」


「今はまだいい。あとでまとめて頼む」


「わかりました。気をつけてくださいね」


 回復役(ヒーラー)のランドが訊いてきたが実際怪我はたいしたことはない。伝令人(メッセンジャー)としての装備をそろえるときにさらなる軽量化を狙わず使い慣れた硬化革鎧(ハードレザー)のままにしておいたのが今になって効いた。一方狼の方も動きが止まっている。左手にナイフを持ったのを警戒しているようだ。それならばと左手を脱力しだらんと下げて誘ってみる。それに反応して先ほどと同じように左から攻めてきた狼の攻撃をナイフで受け、右手の短剣を胴に叩き込む。狼は一つ叫びをあげて絶命した。


「こっちも終わったみたいね。怪我は大丈夫?」


 前方の二匹を片付けたらしいサラがこちらにやってきた。


「鎧のおかげでたいしたことはないさ。他に怪我人がいるなら回復(ヒール)はあとでいいぞ」


「オレも攻撃はくらったが鎧のおかげで無傷だ。ティナは?」


「私は距離をとって弓矢で攻撃してましたから、怪我はないですよ」


「なんだよ、怪我をしたのは俺だけか」


「一匹仕留めてるんだから上出来よ。じゃあ回復してあげてね。ランド」


◆ーー◆ーー◆


 狼たちとの戦闘で時間も使ってしまい、戦闘要員以外も緊張で疲れてしまったので今晩は街道沿いの広場で夜営することになった。


「サラさん凄かったですよ。片手の剣で一匹の狼を相手にしながらもう一匹を盾でぶん殴って。体勢が崩れたところでティナさんが弓矢でとどめを刺してましたね。サラさんも一対一になったらあっという間に倒してました」


「キースも大したものだったぞ。攻撃はくらうが固い鎧で防いで剣を当て続け、ついには狼がぶっ倒れてた。守りに自信があるというだけのことはある」


 伝令人のレーナとジョウにパーティーの戦闘の様子を訊いてみたら興奮した様子で話してくれた。どうやら戦闘力は結構高いパーティーらしい。探知呪文が使える魔法使いや罠に対応できる盗賊が入ったなら護衛以外でも実力を出せるかもしれないなと思いながら夜は更けていった。

 





 元パーティーと構成大きく変えてみようというところから女戦士がリーダーになって、防御を女性にやらせるのはなあともう一人の戦士が男になって、男戦士がいるならなんでそいつがリーダーじゃないんだというところから唐突に「幼なじみのお姉ちゃん」設定が生えてきてしまった。大まかなプロット以外はノリで書いてるからなあ。


 プロットで書いてるときは気付かなかったが、一人称視点で書いてるのに多方面で同時戦闘なんてやると本人視点以外の場所を描写しにくい。ということでラストにちょっと追加で。

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