表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/53

Legend 5. ハルとの旅立ち

「さて!じゃあ出発しましょうか!」

太陽と共に起き、朝食を済ませたツィアがハルに声をかける。

「はい!」

ハルは元気に返事をした。

「ただ、ハルには注意してもらいたいことがあるの!」

ツィアは真面目な顔でそう言う。

「なんですか?」

ハルが首を傾げると、

「これから私たちは人間の行き交う街道を通って、人間の街に寄りながら魔界に向かうことになるわ!...そのためには...」

「魔物だとバレないようにしないといけませんね!」

ツィアの言葉にハルが元気よく答える。

「ええ!そうね!」

「ふふふ!」

宙に浮きながらうれしそうにツィアの顔を見つめているハル。

「・・・」

ツィアは頭を押さえる。

「...ハルに聞きたいんだけど...」

「なんでしょう!」

相変わらず大きな声で答えるハル。

「人間は空中に浮けるかしら?」

ツィアの問いに、

「浮けません!」

ハルはまた元気に答える。

「・・・」

それでも気づかないハルにツィアは先行きが不安になった。

(この子に間接的な言い方はダメね!私が気を配って逐一、注意しないと!)

そう思ったツィアはハルの肩に手をやると地面へと押し下げる。

「あっ!なにを!」

真っ赤な顔でギュッと目をつむるハル。

何かを期待しているのか、顔は上に向けている。

そんなハルにツィアは言った。

「人間だと思われたかったら、宙に浮くのはやめて地面を歩きなさい!」

「・・・」

ツィアにそう言われたハルは、目を開けるとガッカリした顔をした。

しかし、気を取り直すと、

「分かりました!ツィアさんの言う通りにします!」

大人しく指示に従うのだった。

ハルが歩き出そうとすると、

「ちょっと待って!」

ツィアがハルを止める。

「なんですか?」

また、ハルが首を傾げると、

「そのまま歩いたら足が汚れちゃう!靴を履かないと!」

裸足のハルを見たツィアは、荷物の木箱の中を探し始めた。

「大丈夫ですよ!魔物の体は魔力でできてますから、汚れたら、また再構築すれば...」

ハルはそう言うが、ツィアは一生懸命、探していて聞こえなかったようだ。

「あっ!これこれ!...これなら足のサイズが小さいハルでも履けるし、靴に慣れてなくても疲れないわ!」

そう口にすると、一足の白いサンダルを取り出した。

「可愛い!」

ハルがそれを見て声を上げる。

ヒールの低いサンダルで、足の甲と足首にバンドがあり歩きやすそうだ。

しかも、幅の広いバンド部分には花柄の模様が入っていて、ハルのワンピースとの相性も良さそうだった。

オシャレなツィアらしいサンダルだ。

「ふふふ。気に入ってくれてうれしいわ!それを履いて!」

「はい!」

ツィアの声にうれしそうに応えるハル。

そして、サンダルを履くと数歩、歩いてみる。

「これ、いいです!石を踏んでも痛くありません!」

笑顔のハル。それを見て自分も笑顔になったツィアは言った。

「良かった!慣れないうちは疲れるかもしれないけどお願いね!」

「はい!」

ツィアのお願いに素直に返事をするハルだった。


☆彡彡彡


「ふ~~~ん♪ふ~~~ん♪」

ハルのご機嫌な鼻歌が聞こえる。

二人は魔界に向け、とりあえず、次の街を目指して歩いていた。

二人は手を繋いでいる。

(こ、これはハルが迷子にならないように...)

しかし、ツィアもどこかうれしそうだった。

時々、ハルは肩を寄せ、頬をすりつけてくる。

「もう!」

そう言いながらも嫌がる素振りは見せないツィア。

(魔物って愛情表現が直接的なのかしら...って『愛情』って変な意味じゃないわよ!!...むしろ親愛に近いというか...)

なぜか言い訳せずにはいられなかったツィアだったが、ふとあることに気づく。

(ハルったらこんな近くに寄って...って私、昨日、お風呂に入ってない!!...野宿したし、へ、変なにおいとか...)

今は春の初めだ。朝夕は冷え込むが日中はそれなりに暑い。

ずっと歩きっぱなしなのも加わり、汗のにおいが気になった。

<クンクン>

ツィアはわきのにおいを確かめる。

(い、今はまだ、大丈夫みたいだけど...)

そんなことを考えていると、

「何してるんですか?」

<クンクン>

ハルも真似をしてわきのにおいを嗅いでいた。

「何もにおいませんけど...」

ハルの言葉にツィアは気になっていることを聞く。

「魔物ってお風呂に入ったり、洗濯したりしないわよね?」

すると、

「お風呂?洗濯?」

案の定、ハルは首を傾げている。

「その...体の汚れとか...においとかは...」

ツィアが頬を染めながら聞くと、

「それならさっきも言いましたけど、魔物の体は魔力でできてますから、汚れたら、また再構築すれば元通りです!服も同じです!」

ハルが詳しく説明してくれた。

「そ、そう...羨ましいわね...」

ツィアがそう言うと、

「人間はどうしてるんですか?」

ハルが聞いてくる。

「人間はお風呂に入って体を洗ったり、洗濯をして服を綺麗にしてるのよ!」

ツィアが解説すると、

「へぇ~~~~!面白そう!...どうするんですか?今度見せてください!」

ハルが無邪気に言う。

「み、見せるって!!...お、お風呂はダメよ!...洗濯は次の街でする予定だけど...」

ツィアは耳まで真っ赤にしながら答える。

「え~~~~!お風呂も見たいです!」

ハルの不満げな声に、

「お、お風呂は何も着ないで入るの...ハ、ハルのも...み、見えちゃうわよ!」

ツィアがハルの様子を窺うように言うと、

「そ、そ、それは困ります!...私、ツィアさんみたいに綺麗じゃないし...」

ハルは真っ赤になって慌てている。

「そ、そうよね...イヤよね...い、いいの!私も恥ずかしいし...」

ツィアのホッとしたような、それでいて残念そうな声に、

「...イヤじゃ...ありませんけど...」

ハルが小声でつぶやいた。

「なに?」

「な、なんでもありません!!」

ツィアが問い返すとハルは慌ててそう言った。

(と、とにかく早く次の街でお風呂と洗濯を!...急げば今日中に着けるかも!)

そう思ったツィアは足を早める。

「ま、待ってください!!」

ハルは腕を引っ張られ、慌てて駆け出すのだった。


☆彡彡彡


早足で歩くこと数時間。

(これなら今日中に着けそうね!)

ツィアが安心した時、

「あっ!」

ハルが突然、足を止めた。

「ど、どうしたの?」

腕を引っ張られ倒れそうになったツィアがハルに聞く。

「スライムの声...」

「スライム?」

ハルの言葉にツィアは耳を澄ます。

<ピ~~~~~~!!>

遠くから甲高い鳴き声が聞こえてきた。

「あの子、困ってます...良かったら...」

ハルがツィアの顔を窺う。

(本当は寄り道したくないけど...)

しかし、ハルの悲しそうな顔に『ノー』とは言えなかった。

「分かったわ!行ってみましょ!」

「はい!」

ツィアの返事に笑顔に変わるハル。

(まっ、いっか!...ハルも喜んでくれたし...)

ツィアとハルは声のした方へと駆け出していった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ