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Legend 4. 二人で野営

<パチパチ...>

焚き火が燃えている。

その上には鉄鍋が吊るされ、中には野菜のスープが入っていた。

それを取り囲むのは魔法使いらしき少女と、一見、可愛い女の子に見える魔物だ。

しかし、食事をとっているのは少女だけで、魔物はそれを見ているだけだった。


「魔物は食事をとらないの?」

ツィアがスープに硬いパンを浸しながら聞く。

「はい!魔物は空気中にある魔力を吸い取って生きてます!」

ハルが答えると、

「へぇ~~~!魔力って空気中にあるのね!」

ツィアは初耳のようだった。

「はい!魔物はそれを使って体を物質化したり、行動のエネルギー源にしてます!...それにツィアさんのような魔法使いも魔力を取り込んでるんですよ!」

「そうなの?!」

ハルの説明を聞いたツィアは驚く。

「知っているか分かりませんが、魔法のもとは魔力です!魔法を使える人は、体に魔力を取り込んでそれを使って魔法を使ってるんです!」

ハルの言葉に、

「そうなんだ...あっ!それで魔法を使い過ぎると使えなくなったり、時間が経つとまた、使えるようになるのね!」

ツィアは納得といった顔をする。

「そうです!...でもツィアさんはすごいですね!」

「どういうこと?」

ハルの言葉にツィアが首を傾げていると、

「取り込んでいる魔力の量が人間離れしてます!私、今までそんなに魔力を溜め込める人間...というか魔物も魔王様以外、見たことありません!!」

ハルが詳しく説明してくれた。

「そんなに?」

ツィア自身が驚いていると、

「ツィアさん、強いですよね?...多分、私よりも...」

「そ、それは...」

ハルの言葉にツィアは言い淀む。

春の精霊は普通、人間が一人で戦って勝てる相手ではない。

それなりにプライドもあるだろう。

それを傷つけるような気がしたのだ。

「ふふふ。私に気を使ってるんですか?魔物はそんなこと気にしませんよ!だって自分より強いかどうかを見極めるのも大事な能力ですから...」

そんなツィアにハルは笑って言う。

「で、でもハルにはいろんな特殊能力が...」

ツィアがフォローすると、

「それはそうですが、ツィアさんは魔力が強いだけでなく、コントロール能力もすごいです!料理をしている時に感じました!」

ハルは野営の準備を思い出しているようだった。


〇・〇・〇


枯れ枝を集めた後、ツィアが着火した時、ハルは目を疑った。

(あれだけの魔力を持ちながら、こんな小さな火をつけれるなんて...)

そして鍋に水を満たした時も、ちょうどの量を出し、多すぎも少なすぎもしなかった。

そして、野菜のカット。

風魔法を使ったのだが、実に鮮やかなコントロールで野菜の皮まで剝いていた。

(ありえないです!!どれだけ繊細なコントロールをしてるんですか?!)

ハルはこの時、ツィアと戦わなくて本当に良かったと思ったのだった。


〇・〇・〇


「うん...猛特訓したから...」

そう言ったツィアはどこか寂しそうだった。

「...好きな人のためですか?」

そう尋ねたハルも少し寂しそうだ。

「そうね...そんなこともあったわね!...でも全て過去のこと!!私は前を向いて生きるって決めたの!!」

ツィアがそんな空気を吹き飛ばすように言う。

「ツィアさん...」

切なそうなハルのつぶやきに、

「そんな顔しないの!ハルは笑ってる時が一番、可愛いわよ!」

「可愛いって!!」

ツィアの言葉にハルは真っ赤になってしまうのだった。


☆彡彡彡


そして、二人は寝ることにする。

テントは重いので持ってきていない。

寒い時でも焚き火と毛布で我慢するのが当たり前だった。

「地面が硬いわね...」

ツィアがつい愚痴をこぼす。王都に戻ってからはベッドで寝ていたので久しぶりだと少し辛かった。

「私に任せてください!」

そう言ったハルが何かを念じると、地面がお花でいっぱいになった。

「わぁ!」

目を輝かせるツィア。

早速、寝てみる。

「柔らかい...それに...とってもいい香り...」

ツィアはうっとりとする。すると、

「良かったです!」

そう言いながらハルがツィアに添い寝した。

「ハル!!」

ツィアが驚くが、体に暖かい空気が流れ込んでくるのを感じる。

「ふふふ。私の傍は常に春なんですよ!...これなら...寒くないですよね...」

ハルは頬を染めると恥ずかしそうにツィアを見つめた。

「う、うん...」

ハルを見つめ返したツィアも真っ赤になる。

(ち、近くで見たら更に可愛い...ダメ!変な気持ちにならないうちに寝ちゃわないと!!あの時言ったことが本当になっちゃう!!)

ツィアはハルに言った言葉を思い出していた。

『寝てる間にしちゃおうかしら!』

顔から目を逸らすべく、視線を下に落とす。大きな胸が見えた。

(やっぱりおっきい...形も綺麗...服の隙間から見えないかな...ってなに考えてるの!!)

そして胸の先端に目が行く。

(やっぱり...下着、つけてないよね...そういえば魔物が下着なんて聞いたことない...あの薄い布の下は...)

ツィアは体がほてるのを感じる。おなかの下が少し熱くなってきた。

(やだ!これ以上見てたら本当にハルを傷つけちゃう!!...寝なきゃ!)

そう思うと、ギュッと目を閉じ、何も見ないようにするのだった。

(なに?この気持ち...エリザの時とは違う...エリザには認められたかった...でもハルには...笑顔でいて欲しい...)

そんなことを考えながら眠りにつくツィア。


一方、ハルは目をつむってしまったツィアをじっと見つめていた。

(本当に綺麗な顔...魔界でも人間界でも見たことがないです...そして...)

視線が下に動く。

(完璧なスタイル...お胸も大きくて、ウエストも細いです。足は少ししか見えないですけど、長いし綺麗...胸だけの私とは違って、全体のバランスもいい...)

そして今日の出来事を思い返す。

(初め、会った時は驚きました。倒されるかと思いましたが、困っている私を見て、声をかけてくれました...)

魔界に仲間と帰る途中に、何人もの仲間が人間に問答無用で倒されるのを見てきたハルにとって、それは驚きだった。

(そして、どんくさい私を魔界に連れていってくれると言ってくれました...ちょ、ちょっと勘違いしちゃいましたけど...)

エッチなことをされると怯えていた自分が滑稽に思えてくる。

(でも...なんなんでしょう...この気持ち...)

ハルはツィアとの会話の途中で感じたいくつかの感情に戸惑っていた。

(『好き』って言われた時、一瞬、ドキッとしてしまいました...もちろん、そんな意味じゃないのは分かってますけど...)

ほんのりハルの顔が赤くなる。

(そして、『ツィアさんに好きな人がいる』って思ったら...なんか悲しい気持ちになって...)

次いでハルの顔が歪んだ。

(その後も、ツィアさんにからかわれてしまいましたね...私がとんな気持ちかも知らないで...ってどんな気持ちだったんでしょう?!)

ハルはそれが悪い気持ちではなかった気がする。

(そして...私に名前をくれて...)

ハルはギュッと自分の体を抱きしめた。

(『ハル』...ツィアさんだけが呼んでくれる名前...)

そう考えると、ほんのり体がほてってきた。

(な、なに?この気持ち...)

ハルは精神が興奮しているのを感じる。そして、

(あの時...本当にエッチなことをされても良かったかも...ってなに考えてるんでしょう?私!!)

ハルは自分の胸に湧いてきた感情を慌てて否定する。

(わ、私の初めては...運命の人に...でも...ツィアさんがその人だったら...ってまた!!...もう考えるのはやめましょう!)

ハルはもう一度、ツィアの寝顔を見つめる。

(本当に綺麗な人...この人と魔界まで一緒にいられるなんて...楽しい旅になりそうです...)

そんなことを考えながらハルも眠りにつくのだった。


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