表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

花ことば

作者: 如月爛花

私には丸眼鏡が良く似合う年上でウルフヘアの煙草を吸う彼女がいる。


いつものまじめで少しかっこいい顔も好きだが私は彼女の笑った時が好きだ。


はじけるような笑顔、いつものちょっと低めな声とは違う快活な笑い声。


それだけではなく私は彼女のすべてが好きだ。


私はいつか彼女と結婚しようと思っている。


でも勇気が出なくてなかなか言えないでいる。


でも本気で彼女を幸せにする自信はある。


こんな私でも。


勇気のない私でも。


私はまだ勇気が出ないが愛の告白の仕方はすでに決めている。







いつか彼女が言っていた。


「ボク、満月よりも三日月の方が好きだな。」と。


理由を聞くと想定外の答えが返ってきた。


「だって三日月ってまだ成長途中じゃん。ボクはその時が満月よりも輝いていると思う。君の名前と同じようにね。あと三日月って縁起のいい月だから好きだな。」


彼女は夜空に咲く花のようにはじける笑顔を見せ、珈琲を片手に言った。


「キミも珈琲いるだろ。淹れてあげよう。」と言って台所で珈琲を淹れる彼女を見て決めた。




私は彼女の好きな三日月の夜に、愛の告白をする。







いつか彼女が言っていた。


「猫、飼ってみたいな。」と。


私の実家でマンチカンという種類の猫を飼っている。


彼女が私の実家に遊びに来た時も猫とずっと戯れていた。


途中からどっちが猫か分からないほど燥いでいた。


私は以前、両親が「もう一匹飼おうかな。」と言っていたのを覚えていた。


なので両親に頼んで、私が愛の告白をするときに実家から猫を譲ってもらうことになった。


彼女とは『隠し事は無し』と約束したがこの隠し事は許してもらえる。と思う。




私は彼女が好きな猫と共に、愛の告白をする。







と思っていたのに彼女は事故に遭ってしまい亡くなった。突然。私に何も言わずに。


隠し事は無しと約束したのに私は。私は約束を守れなかった。彼女も守れなかった。


喪失感と自責の念に駆られている時に、彼女の母から遺言を聞かされた。


彼女は最後に「優輝、あいしているよ。」と。


もう彼女にこの気持ちを伝える事はできない。だが想いは伝わる。


骨と化した彼女の前に紫の桔梗と九本の橙の薔薇を供え、


もっと早く言えば良かったと思いながら言った。




「紫音と、結婚したかった。ずっと。」と。




私は彼女の前で三日月の夜に、愛の告白をした。こんな私でも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  彼女のことをどう好きなのか、どう思っているか、どうしたいのか、丁寧に描かれていると存じます。急展開にビックリですか、三日月の夜での告白も、遂げることができなかった想いもやがて癒されること…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ