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君の隣で眠らせて  作者: 上丘逢
7/19

接近

 電車が揺れる。微睡の中、晃宏はいつもならすんなり眠れているはずの時間になっても、うとうととしていることに愕然としていた。

 絢音にバレないように目を瞑っているが、不自然じゃないだろうか。


 眠れていないと知られてしまったら、契約を打ち切られかねない。


 自分の責務を果たさずに金銭をもらえるはずがない。そういう考えをするのが絢音だ。


 ──それだけは。


 電車の時間だけは、絢音の隣にいたい。

 契約が切れたら、絢音は通勤電車でも隣には座ってくれないだろう。いや、自分が座れなくなるかもしれない。


 薄めで隣の絢音を盗み見る。

 いつものようにスマホで映画を流していて、時折、わずかではあるものの、頬が緩んだり口角があがったり、辛そうに口をひき結んでいたりする。


 いつもの絢音に違いない。いや、むしろ、いつもよりも明るいというか、良いことがあったような雰囲気を感じる。


 バーベキューの後から今日会うまでに、絢音とは会話らしい会話をしていなかった。メッセージのやりとりだけは細々と続いていたけれど、当たり障りない会話しかできず、バーベキューの時に皆月が強引に割って入ったことを謝ろうかとも思ったけれど、それも自意識過剰な気がしてやめた。


 皆月に強引に割り込まれたくなかったはずだ、というのは晃宏の願望で、もしそうでなかったら、きっととても凹む。


 そして、その確率は高い。


 バーベキューで絢音は、末広と顔を寄せ合うように話していた。時折、頬を染めたり、沈んだ表情をしていたかと思えば、末広の言葉で笑顔になったりしていた。


 皆月をあしらいきれなかったこともあるけれど、絢音の近くに行きたかったのに、結局行動に移せなかったのは、その表情を見たからだ。


 ──俺の隣では、そんな風に笑ってくれていたっけ?


 いつも心配しかかけていなかったように思う。

 しかも、病気ですぐに倒れる面倒な体である上に、絢音とは契約の関係でしかない。


 ──そりゃあ、末広さんのが良いよな。


 でも、意識してもらえればあわよくば、とそう思った。

 末広自体は、きっと天宮に気持ちがある。だから、そこにつけ入る余地はあると、そう思っていた。


 顔を覆いたくなる衝動をグッと堪える。


 こんなことを堂々巡りのように考えているから、眠れないのだ。


 絢音には幸せになってほしい。

 そして、できればその幸せな絢音の隣にいるのは自分だったら良い。


 慢性疲労症候群を患う自分には、おこがましい願いだった。


 絢音が頬を両手で押さえて、上目遣いに末広を見る、その姿を思い出して、胸がえぐられたように痛む。


 そういう顔は、すべて自分が見たかった。


「……しのさん、東野さん」


 体を揺すられて目が覚めた。


「東野さん、次、秋葉原ですよ」

「あ、すみません」


 いつの間にか眠っていたらしい。慌ててスマホを取り出して、バイブのみのアラームを止める。


「珍しいですね。アラームで起きないの。疲れてましたか?」

「あ、ああ、バーベキューの疲れが残ってましたかね」


 絢音の顔を直視したくなくて、つい下を向いてしまった。


「大丈夫ですか? もう一周します?」

「いえ、降りましょう。大丈夫です」


 思っていたよりも強い口調になってしまったかもしれない。


 晃宏はますます絢音の顔を見れずに、電車のドアが開くと同時に立ち上がった。


 急に立ち上がったせいか、立ちくらみがしそうだったけども、なんとか踏ん張って電車から降りた。


「東野さん、やっぱり──」

「東野だ!」


 ホームに降り立つと、絢音の声にかぶさって、別の声が晃宏を呼んだ。


「皆月?」


 ロングスカートにGジャンという少しデートっぽい服装だ。絢音が晃宏と同じように、ボーゼンとしたまま皆月を見ている。


「やっときた。待ちくたびれたよ。行こう。あ、西野さん、また今度」


 わけも分からず、皆月にひっぱられて、正気に戻った。


 ちょっと、待った。これじゃあ、まるで待ち合わせしてデートに行くみたいじゃないか!


「ちが! 西野さん、違うんで──」


 皆月の手を振り払って振り返ると、絢音はいなくなっていた。


 遠くに足早に歩き去る絢音のリュックサックが見える。


「もう終わりの時間でしょう? 解放してあげなよ」

「うるさい、お前に関係ないだろ」


 いつから待ち伏せしていたのか知らないが、いい迷惑だ。なぜ、解散する駅まで教えてしまったのか。


「良いじゃん、ご飯でも食べようよ」

「待てって──」


 グラリと世界が揺れた。ヤバイ。立ちくらみだ。


「東野、大丈夫?」


 揺れる頭を押さえつつ、ホームのベンチに半ば倒れ込むように座り込んだ。

 動ける範囲にベンチがあって良かった。腰をおろしてしまったら、なかなか立ち上がれない。


「東野、ちょっと、ほんとに大丈夫?」


 さっきから皆月がうるさい。頭が揺れている中、話しかけられるのは余計に消耗する。


 前屈みになって頭を両手で支え、落ち着くのを待つ。少し休めばおそらく立ち上がるくらいはできるだろう。


「東野! 平気!?」


 皆月が腕を揺さぶってくる。その反動で頭がグワングワンと揺れた。思わず、腕を大きく振って、皆月の手を払い除ける。


「な、何よ」

「やめてくれ……。少し休めば、大丈夫だから」


 こんな時、絢音ならそっとしておいてくれる。振り絞って出した声は、怖く響いたのだろう。皆月が言葉を飲み込むように押し黙った。


 目を瞑って気を落ち着かせ、意識して呼吸を整える。


 ──大丈夫、大丈夫だ。


 秋風がホームを通り抜けていく。晃宏はブルリと体を震わせた。こういう体調になると、まだうまく体温のコントロールができない。


 具合が悪くなると、元気な自分に戻れるだろうかという不安に駆られる。


 風邪だと思っていた症状から、起き上がれなくなったあの絶望までの道のりを晃宏は忘れられない。


 そして、不安に駆られればかられるほどに、体調は大きく下降する。


 ──最近は、絢音さんがいたから。


 絢音は、晃宏がこうやって座り込むと、いつも静かに晃宏の背中をさすってくれた。その暖かい手が一人じゃないよと言ってくれているようで、とても安心できた。


 クラクラと揺れ動く頭の中に、絢音の後ろ姿がチラつく。


 自分の体が健康だったなら、すぐに追いかけて絢音の誤解を解けたのに。

 歯痒い想いに、思わず唇を噛んだ。


 頭が大きく揺さぶられるようにぐらつく。悪寒と同時に冷や汗が背中を駆け上り、顔全体の毛穴から吹き出す。ガクッとひじが膝から落ちそうに──。


「東野!」

「東野さん!」


 倒れ込むかと思った体を支えてくれたのは、皆月と──絢音だった。


 絢音が戻ってきてくれた。


「やっぱり顔色悪かったですよね。皆月さん、ちょっとこのタオル持っててくれますか?」


 タオルを渡したのだろう気配がすると、ガサゴソと絢音がリュックを漁った。晃宏のために、いろいろな道具を入れてくれているリュック。


「ちょっと寒いですよね。これ、かけてください」


 秋にはまだ早い暖かそうなストールを晃宏にかけてくれる。風が遮られてホッとした。


「冷や汗が気持ち悪いと思うので、皆月さん、拭いてあげてくれますか?」


 絢音の指示に従いながら、皆月が慣れない手つきで晃宏の額の汗を拭いてくれた。


「じゃあ、ゆっくり東野さんの背中をさすってあげてください」


 タオルをしまっているのだろうか。リュックが閉まる音がする。絢音ではない手が晃宏の背中をなでていくが、皆月の憮然とした表情が見えるような手つきだった。


「じゃあ、これ飲み物です。東野さんが起き上がれるようになったら、渡してあげてください」


「……いつも、そんなの持ち歩いているんですか?」


 デートではおよそ持って行かないであろうほどのリュック。


「飲み物はさっき買ってきたんですけどね。東野さんが体調悪くなってしまっても大丈夫なように、持ってると安心ですよ」


 今後の皆月への助言なのだろうか。今度こそ、否定しなければ。


「ちが……」

「違います。たまたま、鉢合わせしただけです。私、もう帰るので、東野お願いします」


 晃宏の絞り出そうとした言葉を遮るように、皆月が立ち上がる気配がした。


 しばらくすると、絢音が座ったのだろう。ふわりといつもの落ち着く香りがした。ゆっくりと背中をさすってくれる手が優しくて、心が落ち着いてくる。


 ゆっくりと吸って吐いてを繰り返す。何度目かの電車が発車する陽気なメロディが聞こえるようになると、やっと体を起こせるようになった。


「すみません、また付き合わせてしまいました」

「いえ、こちらこそ、余計なことをしてすみませんでした」


 絢音が言っているのは皆月のことなのだろう。


「あの」

「東野さん、体調が悪かったらすぐ言うって約束でしたよね」


 否定しようとした晃宏の言葉を絢音が強引に遮る。

 

 絢音の声が硬い。怒っているのだろうか。

 いや、怒っているのだろう。


「……すみません」

「東野さんの体調がわかるのは東野さんだけなんですからね」

「はい」


 末広に嫉妬して、絢音とまともに話せる気がしなかったからです、とは言えない。


「本当に、わかってるんですか?」


 ずい、と近づいた顔に思わずドキリとする。絢音が汗を拭いてくれた。冷や汗とは違う、普通の汗だ。いつの間にか体が温かくなっていたらしい。


「も、もちろんです」

「それならいいです」


 晃宏にお茶のペットボトルを渡すと、テキパキとリュックにストールを閉まう。


「体調はどうですか?」

「あ、はい。大丈夫です」


 じぃっと絢音が晃宏の顔を薄めで見る。そんな表情も可愛らしい。


「本当そうですね。じゃあ、行きましょう。動けるうちに家に帰った方がいいです」


 そして、その日は誤解も解けずに家に帰って、倒れ込んでしまった。


 ──バカか。俺は。


 家のベッドで寝返りを打ちながら、絢音のメールを見返す。


 お疲れ様でした。また、来週。


 事務連絡のようなメッセージに頭をかきむしる。もう少し、いやもっといつもはメッセージでも饒舌なはずだ。会話をしようという文章を絢音は打ってくれるはずだ。


──これに、どう返せばいいんだよ。


 鬱々とした気分は夜まで続き、結局夜は映画を三本流し見した。



 「アホか」


 次の週の月曜日。いつものお昼ご飯時に、初めて末広に弱音を吐いた。

 こういう色恋沙汰なことを上司に話すのは気がひける。しかも、絢音は末広に気があるかもしれないと思うと、藪蛇になることを避けたくて、絢音との契約については、いつも当たりさわりない会話だけをしていた。


「メールかなにかで早く誤解を解けばいいだろ」


 土曜日の皆月のことだ。

 まるでデートのように皆月に待ち伏せされたあの状況では、たとえ彼女だと思われても仕方がない。


「聞かれてもいないのに、誤解を解くのって変じゃないですか?」

「聞かれてもないのに言うからこそ、お前の好意が伝わるんだろ」


 それは、末広が自分に自信があるからできることだ。

 必死に言い訳して、「気にしてないです」とでも返ってきたら、寝込んでしまいそうな気がする。


「さらっと言えばいいんだよ、さらっと。約束もしてないのに来て困ってます、来週は前の駅で降りてご飯でも食べましょう、とでも言えばいいだろ」


 それを瞬時に考えつくようなスマートさがあるなら、晃宏もメッセージの一つや二つで悩んでいない。


 それに。


「契約を利用してるみたいで嫌なんです」


 電車の隣で眠る契約。山手線2週。お金という対価は払ってはいる。払ってはいるけれど。


「いまさらだろ」

「いまさらだからです」


 これ以上、病気だからと絢音を縛るような真似をしたくない。いまさらだけれど、だからこそ、もうこの病気を絢音の枷に使ってはいけない。


「病気を理由に逃げてる奴が言うことでもないけどな」


 言葉も出ない。末広ははっきりと物を言う方だが、いつもよりも辛辣に感じる。


「それは確かにそうです。でも、病気だからで終わりたくないのと同じくらい、病気だからで始まりたくもないんです」


 優しい絢音が、病気の自分を気遣いすぎて、晃宏の好意を同情で返してしまうかもしれない。


 それが真実かどうかではなく、真実かもしれないと怯えたくない。


 ガタン、と末広が席を立った。いつの間にか、末広の皿は空になっている。


「今日のお前の相談にはのれないわ。よく考えろ。お前は西野さんとどうなりたいんだよ」


 末広はそれだけ言い置くと、お金だけを置いて店の外へと出て行ってしまった。


 ──どうなりたい、か。


 伸びた蕎麦を箸で持ち上げるも、口元にまで運ぶ気にならない。

 初めは、単に眠りたいと思っていただけだ。絢音の隣で心ゆくまで眠りたい。


 ──今は。


 今も、絢音の隣で眠りたいのは変わらない。けれど、眠ってじゃあさようならではなく、肩が触れ合うのを躊躇わずに、起きた時に微笑み合うように眠りたい。電車に乗る時に、自然と隣り合わせに座るような、絢音の隣が自分の席になるような、そんな関係になりたい。


 ただ、それを思うのは、自分のエゴでしかない。


「あ、いた」


 伸びきった麺をおろして、その声に顔をあげると、目の前に皆月がいた。


「東野、これ、あの人に返しておいて」


 150円。テーブルに置かれたお金に戸惑う。

 皆月があの人と言うからには──。


「西野さんに?」

「あの人、私にまでお茶をくれたのよ。嫌味かと思ったわ」


 びっくりしたと思うからちょっと落ち着くと良いよ、と皆月が立ち上がったときに小声でそう言われたらしい。


「嫌味とか言う人じゃないよ」

「そうなんでしょうね。こっちはオロオロしてるのに、向こうは余裕でムカついただけ」


 あーあ、と皆月が声をあげると末広が座っていた席に腰を落とし、髪をくしゃくしゃとかき回した。


 いつもキレイに整えられている髪の毛があちこちに跳ねている。

 店員さんが、お水を置くと、ざるそばください、と皆月が顔を伏せたまま注文した。


「もう、やめるわ」

「何を?」

「東野につきまとうの」


 そもそも、なぜ皆月が自分にアプローチしていたのかが不思議だ。こんな不良物件をわざわざ選ばなくとも、皆月なら彼氏の一人や二人すぐにできそうなのに。


「あんたもムカつくなあ」


 その言葉に顔をあげた皆月を見て、思わず息を呑んだ。赤く潤んだ瞳が、晃宏を貫ぬく。


「私が、東野を好きだった、とか思わないわけ?」

「え?」

「わかってる。気づかなくてあたりまえだし。私、結構うまく隠してたからね」


 晃宏が体調を崩してから、確かに皆月は何かと声をかけてくれた方だと思う。けれど、それは同期のよしみだと思っていた。


「悪い」

「謝んないで。最初からむりめなところに暴走しただけだし。なんか、西野さん、末広さんに気がありそうだと思ったから、グイグイ行けば押せるかなって」


 バカだったわ、と皆月が俯く。末広に気がありそう、という言葉に心臓が跳ねた。やはり、そうなのだろうか。絢音の気持ちは皆月から見ても、末広に向いているのだろうか。


「でも、勝ち目なかったわ」

「勝ち目?」

「だって、あの人、病気ごと東野のこと見てるんだもん。勝てないわ」


 ──病気ごと。


 言いたいことを言い切ったのか、店員が持ってきた蕎麦を皆月が黙々と食べる。早食いかと思うほどの勢いで食べると、席を立った。


「これ、東野のおごりね。ムカつくから」

「は?」


 惚けていて、反応が遅れた。皆月が後ろを向きながら明るい声で言う。


「東野の体調がよくなったのは嬉しかった」


 じゃ、と皆月が手を上げると、足早に店から出ていった。まるで嵐のようだ。

 振り回すだけ振り回しておいて、振り返りもせずにいなくなった。


 すっかり伸びた麺とともに、取り残された晃宏は、伸びきった麺をつゆにつける。


「そうか」


 麺を食べながら、末広と皆月の言葉を思い返す。

 麺を平げ、晃宏はスマホを取り出すと、絢音にメッセージを送った。


 啜った麺は、悪くなかった。


 次の土曜日は雨が降りそうな天気だったけれど、体調は悪くなかった。


「絢音さん、すみません。無理を言ってしまって」

「私は良いんですが、東野さんは大丈夫ですか?」


 チケット売り場の前で、絢音が東野の顔を伺う。御徒町駅からほど近い映画館。PARCOも入っているビルだ。チケット売り場の入り口には、今話題のアメコミを実写化した映画の広告が特大のパネルで飾られていた。


 この間の埋め合わせをさせてほしい、と絢音にはお願いした。

 散々悩んだけれど、映画にしたのは、絢音の隣に座っていられるからだ。大音量がダメだった場合に備えて耳栓も持ってきている。


「大丈夫です。映画、久しぶりなんで楽しみです」


 浮かれていないだろうか。やめた方が良いと嗜められる覚悟だったのに、OKの返事が来た時には、高校生のように喜んでしまった。


「私もです」


 いつもの電車での契約ではないからか、絢音の服装もいつもと少し違う。

 ロングスカートが風に揺れている。小さめの可愛らしいショルダーバッグを肩にかけて、低めのヒールを履いている。

 通勤服とも、契約の時の軽装とも違う絢音の姿が、晃宏には眩しい。


「本当に大丈夫ですか? 電車で寝る時間を映画に使っちゃって」

「隣にいることは同じなんで。僕に体力があれば、本当はどっちもお願いしたいんですけどね」


 事前に買ってあったチケットを渡すと、嬉しそうに絢音がチケットを握り締めた。やはりわくわくしているのか、頬が少し高揚している。


「この映画、楽しみにしていたんで、嬉しいです」


 その笑顔が見られただけでも、思いきって誘ってみた甲斐があった。


「ポップコーン買います?」


 混雑しているポップコーン売り場はかなり並びそうだ。


「えっと……」


 買いたいのだろうが、晃宏に遠慮しているのだろう。晃宏の顔と混雑を見比べて眉尻を下げている。


「じゃあ、買いましょうか」


 絢音の空いている方の手をひいた。


 絢音が一瞬驚いたような顔をしたのが見えたが、そのまま表情を見ないように背をむけた。

 不自然だったろうか。恋人のようなつなぎ方は我慢して、手が離れてしまわないように、握りしめる。


 柔らかく細い指に、思わずもう片方の手で顔を隠した。

 心臓が鳴る。女性と手を繋ぐなんてそれなりにしてきたのに、こんなに緊張するとは思ってなかった。


「ハーフアンドハーフにしましょう」


 絢音の声が後ろから聞こえる。

 その少しかすれた声が晃宏の心をくすぐって、「はい」としか言えなかった。

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