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外れない枷

作者: 沙雨 奏

 人類が月面着陸を成し遂げたことによって、私は現実を突きつけられた。

 遠い昔、物心がついた時から私は月が大好きだった。それは単なる見た目の美しさや、その月が照らす光によって浮かび上がる夜の婉美の話ではない。私が真に惹かれていた月は御伽話を初めとした創造に登場する月だ。

 月に関する話といえばかぐや姫が真っ先に脳に浮かぶ。それ以外にも数多くの月を題材にした創作物が昨今も存在していて、ある時には神秘や秘密を、ある時にはロマンチックさを象徴とした存在として月は描かれている。(不思議なことに表裏の関係にある太陽には何の魅力も感じない)

 だが現実の月はどうだろう。「月」「画像」で調べたら出てくるような、水も植物もない冷たく薄暗い荒野つき。そこに在るは漆黒よりも暗く果てしない宇宙と光り輝く星々、地球。

 美しいと言う人もいるだろう。しかし私にとっては幻滅という言葉しか出てこない。はっきり言って知りたくもなかったし、見たくもなかった。私の中の月は、ある日はかぐや姫のようなお姫様が住んでいた。ある日はうさぎの街があった。ある日は月光を纏った花の海が咲いていた。それらはもう無い。

 人類が月に旗を立てている写真を見た以降、私は苦悶の渦中にいる。月が好きだ。でも現実の月ではない。「違う、そうじゃない」というこの気持ちを自分から切り離すことはなかなか出来ない。愛しくてたまらなかったものが理不尽にも破壊されたような気分が永遠を思わせるほどに続いている。


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