5.お昼休み
教室では昼食時間が始まっていた。席を移動して食べる人、食堂に行く人、お弁当を手に屋上や校庭で食べる人と様々であった。
教室に戻ると数人の女の子が集まってくる。
「茜、大丈夫? 」
「倒れたって聞いたよ。どうしたの? 」
「熱とか無いの?お家帰らないで良いの? 」
矢継ぎ早に質問を浴びせられた。私は集まった全員の顔を見回した後ニッコリ笑顔を作った。
「うん、大したことないみたい。保健室の先生が言うには多分貧血だろうって」
「えー貧血、こわーい」
集まってきた女の子達はきゃーきゃーと騒ぎ出す。
(そうだ。悠太は何してるんだろう)
悠太の席を見ると、自分の席でうつ伏せになっている。多分眠っているんだろう。
(後でお礼言っておかないと)
私は集まってきた女の子達としばらく会話をした後、自分の席に座った。
チラリと横目に悠太を見る。
(寝てるみたいだから、お礼は後で良いか)
午後の授業はあと二時間。国語と社会である。机の上にカバンを乗せると、カバンの中から教科書とノート、筆記用具を取り出す。
「もう良いのか」
「ひっ」
さっきまで、寝てたと思ってた悠太の声が聞こえた。横を向くと悠太は仏頂面で私を見ていた。
「ゆ、ゆ、悠太。びっくりするじゃ無い。ね、寝てたんじないの? 」
「んあ?登校中に突然倒れられて、呑気に寝れるわけねーよ。んで?何ともねーのかよ? 」
悠太に見つめられ、少しドキドキしてしまう。
「あ、う、うん。保健室の先生は多分貧血だと思うからって…… 」
悠太に見つめられて、また頬が熱くなる。
「は?お前心配させるなよな、体調管理ぐらいしっかりしろよ」
「ご……ごめん」
悠太から心配と言う言葉を聞いて、耳まで熱くなるのを感じていた。
「ん?昨日からやけに素直だな。なんか調子狂うわ。それに、お前貧血じゃ無くって熱あるんじゃないか?」
「えっ、えっ、さっき保健室で測ったけど熱なんか無かったし」
「いや、お前、今顔真っ赤だぞ。しかも耳まで。」
「……」
悠太に見透かされた様な気持ちになって、何も言えなくなってしまった。悠太がこっちを見ているのが分かるのだが、まともに悠太の顔が見れない。
「そうか、何ともないんだな。まーいっか」
少しの間、悠太は何か思案している様だった。
「じゃあ、飯一緒に食うか。まだ食ってないだろ? 」
「ひっ!お昼ご飯?」
私は驚いて思わず悠太を見る。
「そう、弁当。いつも一緒に食ってるだろ? 」
私は周りをキョロキョロ見回した後、驚きの余りに半ば思考が停止した頭を使っても状況を理解できなくなって、自分自身を「わたし?」と指差してしまった。
「茜、本当に昨日からお前おかしいぞ?俺をからかってるのか? 」
悠太は弁当を片手に立ち上がると、私の頭に手を乗せて私の目をジッと見つめて来た。
「い、いや。からかってるわけでは……」
凛とした眼差しと頭に乗せられた手の感触を感じて、私はつい視線を悠太から逸らしてしまう。
「早く行こうぜ、昼休み終わっちまう。」
悠太は弁当を手に取ると、先にスタスタ歩いて行く。
私は突然の展開に震える手つきで自分のお弁当をカバンから取り出すと、もう教室を出ようとしている悠太を小走りで追いかけた。