表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
茜・パラドックス  作者: ぷちちゅん
1/14

1.突然に教室

カランという音が聞こえて、我に帰った。

目の前の机の上には数学の教科書とノートが見える。ノートにはグラフが描かれていて、赤や青の線がそのグラフに沿ったり交差したりしていた。


「おい茜、ペン落としたぞ」


隣から聞き覚えのあるぶっきらぼうな声が聞こえて来た。ゆっくり声が聞こえて来る方を見ると、そこには幼馴染の一ノ瀬悠太が座っていた。悠太はそのまま床視線を落として指を差す。

青ペンが落ちていた。


(あれ、ここは教室?わたし、朝ごはんを食べてお茶を飲んでいたはず)


「ですから、変数aの取りうる値の範囲は……」


教室では数学の授業が行われていた。黒板の前で数学の教師である、立花薫が放物線を描きながら説明をしている。

周りにはクラスメイトが座っていた。一生懸命ノートを書く人、隠れてスマホを触ってる人、眠っている人と様々であった。


「茜、どうした?ぼーっとして」


悠太は長い手を伸ばし、青ペンを拾うと私の机の隅に置く。

頭に違和感を感じて、髪に手をやる。そこにはツインテールがニョキッと自己主張をしていた。


(あ、あれっ?なぜ、わたしこんな髪型してるんだろう……)


私はより一層慌てて、自分の身なりを確認した。白いシャツに赤いリボン。ベージュ色のスカートは膝上までありとても短い。


(何このスカート、短すぎるわ!)


「わかりましたか?では五十六ページの下の問いを、えーと…… 」


黒板の前で立花が、獲物を探しているのも知らずに、私はキョロキョロと教室中を見回していた。


「柊さん、ちょっと難しいと思うけど、この問題を解いてみようか。前に出て来て」


キョトンとして自分を指差して確認してみる。


「そう。柊 茜ってこの教室であなただけでしょう? 」


呆れたように持っているチョークで私を差している、立花の鋭い目は獲物を狙う虎のそれであった。

私はオドオドしながら、数学の教科書を手に持って立ち上がると、恐る恐る黒板の前まで歩を進めた。

立花が真新しい白いチョークを半ば強引に私の手に握らせる。


「計算式を書くところからお願いね。五十六ページの下の問題ね」


立花が意味ありげに笑う。私は立花の笑顔の意味がわからない。それよりも、何故、私は教室にいるのだろう?


(寝てたのかな?いやいや、さっきまでママと楽しくお喋りをしてたのに…… )


教科書に目をやる。五十六ページの下。そこには三次方程式の変数の範囲を求める問題が書いてあった。


(この問題ね)


黒板にチョークで、まず問題を書いた。しばらく眺めた後、私は計算式を書き始める。流れるチョークの軌跡。それは一瞬も止まる事なく、問題を解き終えた。

三次方程式の図解入り。美しい数式が秩序正しく並んでいた。

暫くの静寂。

横を見ると驚きの表情の立花が立っていた。


(え!なに?間違ってるのかしら……)


不安を覚えた矢先、教室中からどよめきが起こった。


「えっ、なになに?」


私は教室中から湧き起こったどよめきに戸惑い教室中を見回した。


「柊さん!凄いじゃない!この問題は引っ掛けも有るから結構難しいのよ。先生ビックリしたわ」


教室中から歓声が湧き上がった。拍手さえしている人もいた。


(え、何々?何が起こったの?問題を解いただけ……)


私はざわめく教室をただ呆然と眺める事しか出来なかった。

評価、感想をいただけると励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ