モンテカッシーノの戦い③
歩兵と一言で言っても、やるべき事は多岐に渡る。ヨシナガ・ハルヒコ・ジョニーが任されたのは、主として偵察や歩哨を主任務とする偵察兵であった。命の危険は機銃兵や突撃兵に比べれば、比べれば少ないかもしれないが、情報を得る為に敵の地雷網や銃弾飛び交う主戦場を潜り抜けなければならず、その情報を元に攻撃や守備は実行される。
任務の失敗は軍にとっての打撃のみならず、その命すら失う事を意味していた。今回の作戦においても、マーク・クラーク大将はまず、ヨシナガら10人程の偵察兵に情報を入手させ、その上でかなりの強行軍を決定した。ヨシナガは思う。
「これだけの地雷源が有る中で、火力でも相手を下回ると知ったのに、その上で兵を進めるとなると、かなりの犠牲者が出る事は目に見えている。」
それでも、米国が一日も早くこの世界大戦を終結させる事を望み、強行するならそれは仕方無い。そうも思えた。ヨシナガにとっては、初めて尽くしとなった。敵に銃弾を発射したし、敵兵をナイフで殺害した。無論、それは世界平和の大義の元である。相手は銃を持った戦闘員。殺すのを躊躇えば自分が殺されていた。
日本国籍と米国国籍を持つ日系米国人であるヨシナガでも、それ位の分別は尽く。戦争になると、冷静な判断力が失われると言われるが、ヨシナガにとっては、目の前の敵を倒すと言う事はそうした冷静さを決して失わないと言う事と同意であった。結局、多くの犠牲者を出しながらも、米国軍はモンテカッシーノの戦いに辛勝する事が出来た。




