友が進んだ険しき道
春彦の親友であったロスリス・ケイザー米国陸軍三等軍曹は、春彦達日系兵よりも一足早く戦争に投入されていた。
ロスリス・ケイザーの所属する米国陸軍第103歩兵大隊は、欧州戦線のイタリア戦線に投入されていた。イタリアはまだ降伏前で、充分に力を残していて、米国としても気が抜けない状況であった。ケイザーの役割は負傷兵の救護、所謂衛生兵である。
敵弾に倒れる遊軍の兵士を応急手当するだけの任務だったが、これがまたしんどかった。出血が止まらず死ぬ兵士がいたり、モルヒネや薬品が足らず、包帯しか残っていないという状況も多々あった。
現場の現実はシビアである。実際に多くの米兵がケイザーの胸元で生き絶えている。ケイザーは、医学部に所属していたものの、途中で徴兵されることになり、大学を休学して前線に来ていた。その為、医師の資格はないが応急手当くらいなら出来るだろうと言う事で、衛生兵になった。
だが、戦場はあまりにも苛烈を極めた。舐めていた訳ではないが、医学生にはショックが大きすぎるものであった。おびただしい犠牲を払ってまで、米国は何を得ようとしているのか、分からなくなる事もあった。
その一方で、自分の身は自分で守らなければならない。衛生兵は部隊の後方に控えている事が多かったが、戦場では何が起こるか分からない。兵士の救護をしながら、己の身を守るのは至難の技である。早く戦場から離れたかった。この戦争に勝てば戦争は終わる。勝つか負けるか二つにひとつ。
どうせならここまで犠牲を払ったのだから、勝って終わりたい。ケイザーの険しき道はまだ始まったばかりである。本当に辛いのはこれからだ。




