ノージャーパニーズ!
第442連隊は、米国本土の既存兵とハワイ兵を中心に編成されていたが、些細な事から喧嘩になる事もあった。
例えば、米国人下士官がハワイ出身の二世兵に対して「ヘイ、ジャップ、ヘイ、ジャップ、サムライ、サムライ。」等と言って二世兵を馬鹿にした。これに対して、怒りを発露させたのは、二世兵ではなく、その上官である米国人下士官と同じ下士官の日系米国人であった。その下士官は、たどたどしい英語でこう言った。
「ノージャーパニーズ。我々は日本人ではない。確かに姿形は日本人そのものかもしれない。DNAの中にも日本人の血が流れている。しかし、あなたがやっている事は、子供の悪戯よりもたちが悪い。二度とそのような軽口を叩くような事があれば、その時は鉄拳制裁をくらわせよう。今日はもう部屋に戻り反省してくれ。上官にはヘイトクライムの報告をあげさせてもらった。」
そして、その日系米国人はハワイ出身の二世兵を殴り飛ばした。
「何故反論しない。自分の祖国が馬鹿にされたのだぞ?階級の差はあるかもしれないが、そこは怒って反論すべきだろう。今日は君を助ける形になったが、二度目はないぞ。」
そう言うと、日系米国人下士官は、持ち場に戻った。
「ノージャーパニーズ!」
これは印象的なセリフである。日系二世は紛れもなく米国人である。だが、日本人の血が流れている米国人である。たとえ日本が敵国であっても、ヘイトクライム(人種差別)に対しては、断固として戦わねばならない。
そもそも、これほどまでに日系人が軍隊に殺到した訳は、日系米国人の地位向上にあったはずである。日本人として馬鹿にされても怒らないのは、きっと本末転倒な事であったのかもしれない。「ノージャーパニーズ」いつまでも耳に残って離れない。




