三匹の亀さん
セレア「お、遅すぎじゃろ!! いま何時だと思ってるのじゃ!!」
紫電「ごめん……ひーちゃんとタオは悪くないんだ、俺がみんなの目覚ましぶっ壊したりしなければ……」
タオナン「モーニングはどこ? アタシ、朝は紅茶とパンケーキなんだけど……」
ひとこ「ご、ごめんなさい……緊張して寝れなくて……」
セレア「えぇいもういいのじゃっ! モーニングとってる暇はない! 今日は社会科見学なのじゃ! そなたたち、どうせ種族別のライブ特性なんて知らないじゃろ? アイドルをする上で知らねばのう。そこで、今日は『七帝』の一人である精霊アイドル『桜木烈火』の野外ライブを観に行くのじゃ。早く支度するのじゃー!」
タオナン「なんでよ、DVDで良いじゃない。今日外風強くて寒いわよ? あんたはアルファで感じないかも知れないけど……ふあぁ……」
ひとこ「マイペースだよねタオちゃん……」
紫電「まぁでもタオの言う通りだぜ。こんな悪天候の日じゃ盛り上がらなくて参考にならないだろうし、正直日を改めた方がいいと思うけどな」
セレア「ばかもの! なのじゃ!! 精霊のライブの真骨頂は、悪天候なのじゃ。まぁ行けばわかるのじゃ」
ひとこ「わかりました! ……あのー、ところで、なぜセレアさんは私たち三人を呼んだんですか……?」
セレア「あぁ、知らされてなかったかのう。研究生は最初のうちは、オーディションでの適正審査で割り振られた『七帝』の元でそれぞれアイドル研究をすることになっているのじゃ。そなたたち三人は、わらわが担当することになったから、よろしくなのじゃ」
ひとこ「えぇー!? セレアさんが!?」
紫電「マジ!?(ひーちゃんとタオと一緒だ! やったぁ~!)」
タオナン「仕方ないわね、しっかりエスコートしてよ(テイチョスの代わりの新しい使用人アルファね)」
セレア「喜ぶのはまだ早いのじゃ。なんでそなたたち三人が『七帝』の序列トップであるわらわの元に集められたのかわかるか?」
ひとこ「えっ、えーっと……仲よしだからですか?」
紫電「!(ひーちゃんに仲良しって言われた!)」
セレア「残念! ふふふ、それはのう、そなたたちは『今年のオーディション・ワースト3』に選ばれてしまった劣等生だからなのじゃ!!」
紫電「はぁー!? 俺が劣等生!?」
タオナン「えぇ!? 冗談じゃないわ! 審査員腐ってんじゃないの!?」
ひとこ「そんな!! 私もワーストなんですか!?」
紫電&タオナン「 !? !? !? !? 」
紫電「(『も』って言った!? ひーちゃんいま『も』って言った!?)」
タオナン「(お、落ち着くのよアタシ! ひとこに限ってそんなこと言う筈ないわ! き、きっと間違いよ! 家庭教師にパパって呼んじゃうのと一緒だわ! 多分そうよ!)」
セレア「うむ、そうじゃ。紫電、そなたは基礎能力はそれなりにあるけど、アイドルとしては絶望的なほどアガりやすくて服といい選曲といいセンスが乏しいのじゃ。タオナンは歌唱力とモラルがなっとらん。そしてひとこ。そなたは存在感が無さすぎて名簿に手書きで書かれとる程なのじゃぞ。目立たなくてはならんアイドル界の中で、武器がないのは致命的なのじゃ」
ひとこ「そ、そうですか……えへへ、ちょっぴり、ショック……(あんなに頑張ったのに、それでも最低レベルだったなんて……やっぱり厳しいなぁ……これがアイドルの世界なんだ……)」
紫電「ま、まぁ俺、元々アイドル志望じゃないし……妥当っちゃ妥当か……(ひーちゃんに迷惑かけてる気がする……お願い……嫌いにならないでひーちゃん……)」
タオナン「改めて冷静に言われると……なかなか堪えるわね……(そういえばテイチョスも言ってたわ……みんなアタシの歌のレベルが高すぎて正しく認識できないんだって……アタシがこの腐ってしまった世の中を変えなきゃ……お父様みたいに……)」
セレア「(……ひとこは実質、研究生でも中の上くらいの優等生なのじゃけど、逆境耐性やメンタルが弱いのじゃ。わらわが無理して組ませたのはやはり正解だったのう。本番のヤジやアンチファンは、もっと酷いのじゃから……)」
セレア「だからこそ、なのじゃ。あぐらをかいてるウサギ達に負けないよう、人一倍勉強するのじゃ! 落ち込んでる暇はない! ライブに行くのじゃ!」
ひとこ「はい!! よろしくお願いします!!」
紫電「俺も頑張るぜ!(頑張って汚名返上しなきゃ!)」
タオナン「いまにみてなさいよ!(新世界の神になるわ!!)」
セレア「よーし、その意気なのじゃー!!」
***
妖怪研究生「烈火さん~っ! 無理です! 風で音飛んじゃいますよぉ~!! きゃあぁスカートもめくれ放題です!! チャンスタイムです烈火さん~!! た、助けてください『夢來』ちゃんさん~!!」
鬼研究生「お、鬼の私でも、こんな日にライブなんて無茶だと思いますっ!! やだ、雨もふってきた!! あ、し、『しずく』ちゃんの『傷仕込み済み花札』が宙に……!」
烈火「あっははー!! だっらしないなぁ~お前っ達ぃ!! ほらほらそれでもアイドルか~!? おぉ、今日は白だね~イカちゃん!!」
妖怪研究生「だってぇ~!! きゃあぁ胸も揺れ放題です!! 烈火さんジャックポッドですぅ~!! それと私は『美水しずく』ですぅ~!! まだイカサマ根に持ってるんですかぁ~!!」
鬼研究生「ひぃっ! やだ、雷鳴ってます烈火さん! あたし雷ダメな方の鬼なんです!!」
烈火「もー、しっかたないにゃ~……全く、普段ずるがしこいのに本番に弱いんだから君たちってば……ならそこでよく見てな? 精霊の真骨頂『野外ライブ』……特別に特等席でダイサービスしたげるからさー!!」
烈火「(見てなよセレア……七帝最っ高のアイドルはこのドレプロ一の歌姫、『桜木烈火』だってこと、今度こそ教えてあげるからね!!)」