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セレアの挨拶

紫電「社長の演説なげーなぁ……」


タオナン「セコいシステム作って業界シメたからってセレブきどってんじゃないわよ」


ひとこ「ちょ、ちょっと……それは聴こえたら流石にまずいよ……」


紫電「お、『七帝(セブン・エンペラーズ)』のナンバーワン、セレア・エアリスの挨拶だってよ」


ひとこ「えー!? 生セレアさん!? わぁー! 私、ライブでもうしろの方からしか観れたことないんだぁ!」


タオナン「(セブン……? セレア……? 何それ、庶民のマイナーな自動車メーカーか何かかしら……)」


研究生達『(キャー!! セレア様ー!!)(こんな近くで見れるなんて!!)


セレア「あー、てすてす。……皆さん、まずは合格おめでとう。ここに集まったのは、プロが見つけた原石なのじゃ。胸をはるがよいぞ」


研究生達『(本物だー!!)(美しいー!!)(こっち向いてー!!)』


セレア「…………」



セレア「(はぁ……。毎度これなのじゃ……。こやつらはもうアイドル……わらわと同じアイドルなのに、自覚というものがない……。だから、アイドルのトップに立つわらわが檄を飛ばさなくちゃいけないのじゃ……。こやつらの為にこころを鬼にしなきゃ、なのじゃ……)」



紫電「なぁひーちゃん、セレアってどんな子なんだ? そんな凄いのか?」


ひとこ「うん、アイドル界で初めてのアンドロイド『アルファ』のアイドルだよ。セレアさんがトップアイドルになってから、世間のアルファに対する見方が大きく変わって、AIでも人間と変わらないんだって証明したの」


タオナン「あぁ、そういえばアタシのテイチョスも昔は機械人間だって言われてて、扱いも雑だったらしいわ。そのアルファがアイドルだなんて、凄い時代よね」


ひとこ「テイチョスさんアルファだったんだ! わからなかった!」


タオナン「わからないように沢山モデルチェンジしたのよ。必要ないって反対されたけど、アタシはテイチョスを機械だなんて思いたくないわ」


紫電「タオん家って凄いんだな……アルファの維持費って凄い高いってきくぜ。使用人に雇えるって、凄くお金持ちだ」


タオナン「お金だけあったって個人の実力じゃないんだから自慢できないわ。だからアタシ、お父様に内緒でアイドルに入ったんだもの……」


研究生達『(あとでサインください!!)(憧れてアイドルになりました!!)』


セレア「……うるさいのじゃ!」


研究生達『(…え?)(セレア様?)』


セレア「いつまでお客様のつもりなのじゃ、お前達。アイドルになったのじゃぞ!?」



パァン!!



研究生達『(……!!)(ひぃっ……!!)』



セレア「よいか、研究生。アイドルを目指すということは、ファンを味方につけるということ! それは、周りのみんなとこれからライバル同士になるということなのじゃ。なぜファンが一個人だけの味方になるかわかるか? それは、応援するアイドルはお客様にとっての『オンリーワン』だからなのじゃ。応援して、他の子と差をつける……。自分の応援した子を勝たせるためなのじゃ。そうして、みんなから応援され、世界に認められた者たちが『七帝(セブン・エンペラーズ)』の座に立ち、次の世代……つまりお前たちの目標となる! 勝つためには周りを超え、いずれわらわ達をも超え、自分こそがアイドルなのじゃと証明しなくてはいけないのじゃ! だからドレプロ入りを果たした以上、もう他のアイドルばかり見上げるのはやめるのじゃ! これからは敵同士! わらわの座を狙う敵となるのじゃ! 以上!」


研究生達『(ざわ……ざわ……)(セレア様が……敵……?)(激励じゃないの……?)(せっかく、近づけたと思ったのに……)』


セレア「(……可哀想じゃが、これで折れるようならアイドルは難しいのじゃ……。アイドルは、厳しい世界なのじゃ……)」


紫電「……待ちやがれ!」


セレア「……!」


紫電「待てっつってんだよ、ロボチビ! 故障でもしてんのか!?」


ひとこ「(紫電ちゃんーーー!?)」


セレア「あれれ、ちょっと聴覚らへんの回路がメンテナンス不足だったようなのじゃ。もう一度言ってくれんかのう? 研究生?」


紫電「研究生じゃねぇ! 紫電だ! 俺の名前は『しでん』! むらさきのでんきって書くんだよく覚えとけ! む、難しいことはよくわかんねーけどな、お前が俺達に喧嘩売ってるってことだけはわかったぜ! みんな落ち込んでるじゃねーか! 好き勝手言いやがって、のじゃのじゃうるせぇんだロリババア! な、なめんなよてめー! えっと、ば、ばーかばーか! お、お前偉そうなこと言ったってな、ゲーセンの格ゲーならお前なんて強パンチでボッコボコのギッタンギッタンだかんな! 上手くハメたって俺のシマじゃノーカンだ! 誰だよこいつを帝とか言った奴出てこい! そ、そういうゲームじゃねーんだからなアレ!」


セレア「のじゃ!? な……なっ、なん……じゃとぉ……!?」


タオナン「あ、そういうことね!? やっとわかったわ! そういうことならアタシもピキーンってきたわ! ピッキーン! って! あんた、セレアだかセレーナだか日没産だか知らないけどね、島国のちっこいメーカーで成功してたからって世界を敵に回すもんじゃないわ! 本場じゃATなんか通用しないんだから! こちとらそんなぬるい会社より断然(グレイテスト)(モーターズ)! なんといっても60~70年代を代表するマッスルカー、シンボラーのマリブルSSのパワーは最高にワルよワル! 七帝? 何それ? お高くとまっててもアタシのエンジンの前では紙屑同然! 「V8」よ「V8」! 車検なんて知らないわ! アタシ最初から左ハンドルしか認めてないんだからね!」


セレア「な、なんの話をしてるのじゃ一体!!」


ひとこ「(ひゃああぁぁぁっ……だ、駄目だよぅ二人ともー!)」


セレア「む……?(こやつ……アイドルの生命線とも言える顔に大きな傷……そのゆるゆるの頭……。なるほど、さてはこの鬼があの噂のパフォーマンス部門と勘違いしてアイドルになってしまった、持ち前のずぶとさにくわえ、いざ誉められれば逆境の中でもノせられる騙されやすさを評価されて半ば実験的に最終候補に選ばれたという、問題児の鬼の子……!)」


セレア「(そして、こっちは名家中の名家、バックにつくは怖いもの知らずの黒服達……逆の意味で天井知らずの歌唱力を自信満々で審査員に披露し、『プロ確定でしょ! よろしくね!』と自己アピール、解散の合図も待たず警備員すら無視して即帰宅したという、強靭なメンタルをもつ人間……。どちらも尖っているが、なるほど……『大物』じゃのう。じゃけど…)」


セレア「……お、お前達……。威勢が良いのは結構じゃけど空気は読むのじゃ……。アイドルの世界は大前提として実力重視。経験も浅くまだ味方も少ないお前達が大きく目立ってしまっては、敵を作るだけなのじゃ。ここは意外性だけで生き残れる業界じゃない。これが他の会社のアイドル達も出席する場であったら、挽回のチャンスも貰えないまま追い出されてしまうのじゃ……」


紫電「ぐぬぬ……(難しい単語ばっかで何言ってるのか良くわからない……)」


タオナン「うむむ……(もしかしてこれ車の話じゃなかったのかもしれない……)」


ひとこ「す、すとっぷ! すとっぷです! 三人とも!」


セレア「……のじゃ?」


紫電「ひーちゃん!?(し、しまった、ひーちゃんに迷惑かけちゃったかな……)」


タオナン「ひとこ!?(し、しまった、内容がコアすぎて引いちゃったかしら……)」


ひとこ「すいません、セレアさん! 二人ともたぶん、お話を勘違いしてるだけなんです……。けど私、セレアさんも言い過ぎだと思います! だって、楽屋裏でもアイドルはアイドルだって、2014年『Nyan☆nyan』12・1月特別合併号の64ページ三段目の右から8行目『あなたにとってのアイドルの心とはなんですか』という編集部・坂津(さかつ)さんのインタビューで答えていたじゃないですか……! 嘘つきはアイドル失格なんです!」


セレア「の、のじゃぁ!?(アンドロイドのアルファであるわらわだからこそわかるこの正確さ……確かに、『いつどこでもアイドルであることを忘れず、ファンに応えることなのじゃ。いやいや、嘘じゃないぞ☆嘘つきはアイドルじゃないからのう!』と答えた記憶がメモリーにあるのじゃ……。けど……に、人間の記憶力じゃないじゃろそんなん……! 何者なのじゃ一体こやつ……!!)」


ひとこ「君たちも、言い過ぎだよっ! アイドルは笑顔をあげるお仕事なんだから、笑顔笑顔! ね? 仲直りしよ?」


紫電「あ、あぁ…ごめん、セレア。アツくなっちゃって……。悪かった……」


タオナン「アタシも、悪かったわ……。別に国産車が嫌いな訳じゃないのよ……この国じゃ規制がきついから肩身せまくて……」


セレア「え、あ、そうじゃな……良くわからんが言い過ぎじゃったな……(まとまりおった……)」


ひとこ「うん、よしよし! みんな、せっかくアイドルとして出会えたお友達なんだから、喧嘩は駄目だよ! それとセレアさん、お忙しい中の演説、とても身にしみました……! みんなを代表してお礼いたします。しばらく研究生として、お近くで勉強させていただきたいと思います! これからよろしくお願いします!」


研究生達『(ざわ……ざわ……)(誰、あの子……)(しめちゃったけどいいの……?)』


セレア「……うむ。場を収めてくれてありがとうなのじゃ。しかしなぜそなたが代表するのじゃ……?〆の言葉は代表生が行うのじゃ、とっちゃ駄目じゃぞ……?」


ひとこ「え……? あ、あの……研究生代表に選ばれたの、私ですけれど……」


セレア「……!(そういえば今年の代表は、オーディションでオール平均値、愛想も悪くなく、そつなく歌も躍りもなんでもこなし、ビジュアルもそこそこ、受けた評価は『これはこれで綺麗だしなんかもう磨く必要ないんじゃないかな的な普通すぎる原石』の、あまりにも目立たないが成績は普通に良かったという、ドノーマルじゃが……普通なあまり、審査員がみんな名前を忘れてしまったらしい人間の……)」


セレア「お主、名を名乗るのじゃ!」


ひとこ「霜月(しもつき)ひとこ。です。これからよろしくお願いします!」


セレア「……ふふふ、アルファのわらわが記憶メモリーでしっかりと覚えておくのじゃ。よいか、いつか誰にも忘れられないアイドルになるのじゃ、ひとこ!」


ひとこ「……? は、はい!」


セレア「みんな! 明日からの練習、厳しく行うので覚悟すること! そして改めて歓迎するのじゃ! ようこそドレプロへ! お主達の成長を期待しておるのじゃ!」


研究生達『(セレア様ー!)(よろしくお願いしますー!)(頑張りますー!)』


紫電「ひーちゃんごめんな! 挨拶かっこよかったぜ!」


タオナン「ごめーん! 今度お菓子作ったげるから、許してっ!」


ひとこ「もぉー、心臓ばくばくだよぉ~……。まとまって良かったぁ~…」




セレア「紫電……タオナン……そして、えーっと……あ、ひとこじゃったな。危ない危ない……。ふふふ、今年は荒れそうじゃのう……。本当に、楽しみにしておるのじゃ。ふっふっふ……」

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