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【完結】マグノリアの花の咲く頃に 第四部  作者: 海堂 岬
第十五章 王都への帰還
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9)ローズの見舞い

「ロバート」

ローズは現れるなり、目に涙を溜め、ロバートの頬に触れた。傷に遠慮しているのだろう。いつもなら、抱きついてくるはずだ。


「ローズ」

ロバートは、ゆっくりとローズを抱きしめた。

「痛みは」

「ゆっくりと動けば、痛みません」

熱を持った傷が疼くが、動いた程度では、然程変わらない。それよりも、ローズが気がかりだった。


「どうして」

ローズの目から溢れ出た涙が頬を伝う。

「あなたが気に病むことではありません」

その涙をそっと指で拭ってやる。事実、ローズのせいではない。


「今回の件は、そもそも、彼らのような連中の襲撃を防ぐことが出来なかったことが原因です。私には、その責任があります」

「でも、ロバートのせいではないわ。だって、普段よりも護衛は多くいたもの。予想外の事態だったのと、町の警備隊が機能しなかったのと、城門を不審な馬車が素通りできてしまったことが、重なったのよ」

ローズはローズだ。敏い。だが、面子を重んじる貴族の性質をわかってはいない。


「ローズ、あなたの言うとおりです。だからこそ、彼らは責任転嫁の相手を探しています」


 王都はいくつもの区画に分かれ、その区画ごとに警備隊がいる。警備隊は高位貴族の管轄だ。貴族により警備隊の精錬度に差があり、地区毎の治安は見事にそれに比例している。アスティングス家は、残念ながら熱心とは言えない。


 古参と新興の啀み合いの一つでも有る。


 王家と共にこの国を作ってきたという自負がある古参貴族と、途中から併合された新興貴族では、王都の治安に関する責任感や熱意が違う。

「アスティングス家が責任転嫁をしようとしている証拠が手に入ったのです。程度は少々想定外ですが、ローズ、泣かないでください」


 御前会議まではあと四日だ。アレキサンダーは、御前会議で、王都の治安の改善を訴え出る予定だ。

アレキサンダーの計画通りに物事を運ぶため、必要なものは、揃える事ができている。


 用意された機会を、逃す手はなかった。アレキサンダーがロバートの考えていたことを知ったら、激怒するだろう。そのためにも、一度レオンと、できればバーセア伯爵とも打ち合わせておく必要がある。

「あなたは無事でした。それで十分です」

ローズは生きて無事で、この腕の中に帰ってきてくれた。本当に、ロバートは、それで十分だった。


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