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【完結】マグノリアの花の咲く頃に 第四部  作者: 海堂 岬
第十五章 王都への帰還
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4)王太子宮

 王太子宮につくや、出迎えて馬車の扉を開けた者が、そのまま腰を抜かして倒れてしまった。


「何をしている、担架を用意してあるはずだ。ハロルドにも連絡しただろう」

アレキサンダーの声に、我に返ったのだろう。担架でロバートが運び出された。


 部屋に運び込まれたロバートは、服を脱がされ、その傷を見たハロルドは顔をしかめた。

「これは」

上半身は痣だらけで、何箇所も(すじ)状に皮膚が裂けている。首には絞められた跡があり、絞めた指の痕まではっきり残っている。そっとハロルドが傷に触れ、ロバートがうめいた。

「折れている。息を吸うと痛むな」

ロバートが頷く。


「裂けている。鞭か。深いな」

ハロルドの眉間の皺が深くなった。

「手当するが、当面は、安静だ」

「御前、会議が、近々」

ロバートの掠れた声に、ハロルドが顔を顰めた。

「やめろと言いたいが。俺の立場では、どうしようもない」


 ハロルドは、ロバートの口元に布を差し出した。

「噛んでおけ」

傷の処置は痛みを伴う。叫ぶならばまだよい。ロバートは堪えてくいしばる。歯が砕け、唇や舌を噛んで怪我をする可能性がある。素直に口を開けたロバートに、ハロルドは猿轡を噛ませた。


ノックと共に扉が開かれ、軽い足音がした。

「ロバート!」

ローズの声だった。


「止めろ、部屋に入れるな」

アレキサンダーの命令は間に合わず、ローズが寝台にうつ伏せに寝かされたロバートに駆け寄った。近習の一人が慌てて、ロバートの身体に布をかけたが、間に合わなかった。


「どうして、こんな、ひどい」

ローズの手が、ロバートの首の痣に触れた。猿轡を噛まされたままのロバートが、ローズの手をとった。

「酷い」

ローズの目から涙がこぼれ、そのまま倒れてしまった。近習の一人が支えた。


「誰だ。連れてきた者は」

「申し訳ありません。先程からローズがロバートを探していたので、馬車が見えた時に、帰ってきたと伝えてしまいました」

アレキサンダーに答えたのは、ティモシーだった。


 事情を知らなかったとはいえ、ローズをつれてきた間が悪過ぎた。

「ローズは部屋で休ませてやれ。侍女の誰かをつけろ、ローズを一人にするな」

「はい」

ローズは、ティモシーに背負われて部屋を出ていった。ロバートの目が、ローズを追う。


「ロバート。動くな。手当をしたら、ローズに会いに行っていいから、今はおとなしくしろ」


 ハロルドは、弟子とともにロバートの手当を始めた。

「くうっ」

ロバートが呻き、手がシーツを掴む。

「ほら、全員出ていけ! 見世物じゃない」

ハロルドが怒鳴った。




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