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【完結】マグノリアの花の咲く頃に 第四部  作者: 海堂 岬
第十五章 王都への帰還
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1)帰還

 数カ月ぶりの王太子宮だ。ローズは、ロバートが差し出した手をとり、馬車から降りた。


「ローズ」

飛びついてきたソフィアを、ローズは抱きしめた。

「ローズ、だいちゅき」

「ありがとうございます。ソフィア様。ローズもソフィア様が大好きですよ」

「だいちゅき」

抱き合うローズとソフィアを、ロバートは穏やかな顔でみていた。


「ソフィア、お父様にも、ご挨拶をしておくれ」

アレキサンダーの言葉に、ソフィアは、アレキサンダーに抱きついた。

「ちちうえ、おかえりなちゃいまちぇ」

「ソフィア、会いたかったよ」

アレキサンダーが、ソフィアを高々と抱き上げた。

「アレックス」

「グレース」

抱き合い、再会を喜ぶアレキサンダーとグレースに、王太子宮は喜びに包まれた。


 ライティーザ王国が始まって以来の大規模な奴隷市場の摘発を成し遂げ、関わっていた貴族三家を取り潰し、囚われていた人々を開放した王太子アレキサンダーと一行の帰還だ。

王太子宮は喜びに包まれた。


 今回の件を報告する御前会議は五日後に開かれることになっていた。


 報告書は既に何度も送っていた。返書も受け取っていた。現地で処理に当たっていたアレキサンダー達と比較し、王都の返書に熱意は感じられなかった。


 距離という問題もある。御前会議に出席するような高位貴族にとっては、人攫いだ、奴隷だと言っても他人事だろう。王都で、安寧を貪っている貴族達が、市井の者達が、生活苦から子供を人買いに売る悲しみや、突如、妻や子供を連れ去る人攫いに感じている恐怖を知れと言っても無理な話だ。

 

 王都から人を連れ去る手段があるならば、自らの子女もその対象となりうるという危機感を持ってしかるべきだが、それも無い様子だった。王太子宮で保護されているローズが連れ去られたのだが、孤児だという立場故に、他人事なのだろう。


 領地を南にもつ貴族であれば、奴隷売買には、取り締まる側であれ、利権を得る側であれ、関わっている。危機感はそれなりにはあるはずだ。


南は乾燥により作物の育成は良いとは言えない。ライティーザに平定された時期も比較的遅く、弱小貴族が多い。御前会議に出席する家はない。


 アーライル家が侯爵家に返り咲き文武の均衡はとれたが、御前会議はライティーザの貴族全体の代表というには程遠い。


 一つ課題を片付けると、別の課題が見えてくる。


報告書だけで、南で何が起こっていたか、伝えることは難しい。人の言葉のほうが、事態の緊迫感は伝わるだろう。アレキサンダーもロバートも、ローズに攫われていた当時のことを、語らせたくはなかった。身寄りのない子供達は、孤児院に預け、幾人かは王都に近い場所にいる。ローズと同じ理由で子供たちに語らせるのは哀れだった。

 

 保護すると約束した老夫婦、オリヴァーとバーバラは、ダミアン男爵家を取り潰すための手駒だ。表に出せない。


その前に、片付けなければならない問題もある。ロバートは、微笑むグレースに目を向けた。


アレキサンダーは、アスティングス侯爵家には、幾度も封書を送っている。一度も返事がない。来いということなのだろう。


そもそもは、彼らの招きに応じたことが始まりだった。グレースの行動がどこから漏れたのかも問題だ。その後、グレースの王太子宮への帰還にも、ローズの救出にも、その後の事後処理にも、一切協力しなかったアスティングス侯爵と、早急に会わねばならなかった。


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