17)事後処理
アレキサンダーには、やらねばならないことが沢山あった。
取り潰しになった貴族を裁き、捕らえた奴隷商人達を裁き、保護した奴隷達の身の振り方を決めなければならない。国に接収した財産の管理もある。突如領主を失った領地の問題もある。
奴隷売買に関わっていた嫌疑のある貴族は、取り潰しが決まった三家だけのはずがない。結果、王都に戻ることが出来ずにいた。
近習達は連絡をとるため、王都との間を何度も往復した。信頼できる侍女がいないため、エドガーの妻メアリを呼び寄せた。メアリは南の地がすっかり気に入ってしまった。小姓見習いだったエドガーとメアリの息子たちもやってきて、今や立派に小姓として働いている。
「俺はずっとここにいたい」
エドガーがそう言うのも無理はないだろう。
「メアリさんがいらっしゃる場所ならば、どこでもいいのでしょう。あなたは」
「息子たちもこっちのほうが、いいと言っている」
「母親を息子が慕っているのです。良いことではありませんか」
エドガーとエリックの相変わらずの会話に、臨時の執務室にいた面々は笑った。
差し押さえた屋敷で、使える部屋は限られている。
ローズとロバートは同室で寝起きした。着替える間だけは、お互いに部屋をはずした。それ以外は、ずっと二人一緒にすごした。夜、二つの寝台でそれぞれ眠ったが、気づくと一緒の寝台で、ローズはロバートの腕の中にいた。
それを知ったメアリは笑った。メアリの息子たち二人は、大きめの寝台を二人で使っていた。
「昼間はともかく、寝たまま、取っ組み合いをするのは止めてほしいの」
南にきてから、メアリのベールは薄手のものになった。濃いベールで見えなかった表情もよくわかる。
元気が良すぎる息子たちに悩むメアリに、ローズは同情しただけだった。
「まぁ。メアリさんも大変なのね」
その一言で、寝台が入れ替えられてしまうとは、ローズは思っていなかった。
その日、二人は大きな寝台の端と端で眠ったはずだった。朝、目を覚ますと、結局は、いつもと同じだった。
「もう、私がいなくても大丈夫でしょ」
サンドラは豪快に笑い、フレデリックと一緒に王都に戻っていった。
執務室では、アレキサンダーと近習達に交じって、ローズも取り潰した貴族の資産の記録を確認し、接収した領地の状況把握に努めていた。
奴隷として売られたライティーザの民の中には、出身地へ帰ることを望まない者もいた。そういった者達は、労働力として各地へ送られた。
問題は、出身地に関わらず労働力にならない年代の者達だった。




