18)南の町
ローズを連れた男たちは、目的地らしい町についた。南の町だ。外を行き交う人々の中に、サイモンと同じ色の肌の人がいた。ミハダルの民か、ミハダルの民の血を引く者達だ。
ミハダルでは奴隷は当たり前の存在だ。
ライティーザの南に奴隷市場があることはわかっていた。国境の町など、戦争の度に支配する国が変わる。南に支配されたら堂々と奴隷を取引し、ライティーザに支配されている間は秘密裏に商売は続けているのだろう。
商売人が逞しいのは良い。禁止されていない別の商売を開拓することに、その逞しさを発揮してくれたら、問題はない。
ライティーザの南、ミハダルとの間には広い草原地帯がある。身を隠す場所などないため、ライティーザとミハダルの間の戦争は長年行われていない。それでも、ライティーザの各地で、人買いや人攫いは絶えない。多くが南に連れて行かれ奴隷として売られているという噂があった。取り締まろうにも、南に領地を持つ貴族達は、奴隷市場の市は毎回変わるからわからないと言うばかりだ。言い逃れだと、アレキサンダーは悔しがっていたが、証拠が無かった。
ミハダルへ売られた奴隷は、焼き印を押され、足枷をつけられるのが常だ。稀にライティーザまで逃げ帰ってくる者達は、ミハダルでの奴隷としての過酷な生活を語った。
ローズ自らが、囮になってしまった。助けが間に合わなければ、ローズもどこかに売られてしまう。きっと、追ってきてくれている。たった一度、窓辺に並んでいた真珠をローズは信じるしかなかった。
ローズがいるのは、見世物小屋のような場所だった。
通りに面した大きな窓には、鉄格子が嵌められ、牢屋か檻のようだった。鉄格子の向こうから、様々な人がローズを見ていく。品定めだろう。
禁止されているのに、こんな建物があるのだ。此の地を治める貴族が関わっているに違いなかった。
ローズはただ、人形のように椅子に座っていた。
鉄格子の向こうには、様々な人がいた。肌の色からミハダルの民と知れる人々は、様々な衣装に身を包んでいた。奴隷が合法の存在であるミハダルの民だけではない。ライティーザや、ティタイトの衣装に身を包んだ者もいた。
ライティーザでは奴隷は違法だ。ティタイトでは、奴隷という制度は馴染みがなく、下働きの人手だと教えられた。
品定めをする様々な人の視線に、ローズはただ黙って耐えていた。




