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【完結】マグノリアの花の咲く頃に 第四部  作者: 海堂 岬
第十三章 それぞれの戦い
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17)窓辺

 ローズは、味気ない食事を、ただ口に運んでいた。食べたくはない。だが、食べなくてはいけない。


 数えることをやめてからも、日が流れていく。


 雨が続いていた。行き先の山道が雨でくずれ、開通を待つため、男たちは同じ宿に泊まっていた。


 ローズの耳に、歌声が聞こえてきた。吟遊詩人とその弟子らしい少年がいた。雨で同じように足止めされているのだろう。歌う少年の顔を見て、ローズはできるだけ落ち着いて目をそらした。


 少年は、孤児院にいたマイルズによく似ていた。


 吟遊詩人とマイルズによく似た少年は歌い、客達から小銭を集めた。マイルズに似た少年は、ローズを見たが、何事もなかったように通り過ぎていった。


 あまりの素っ気なさに、本当にマイルズかどうか、ローズには確信が持てなかった。


 翌日、雨は止んだ。

窓辺を見たローズは、思いがけないものを見つけた。真珠だ。真珠が2つ、行儀よく窓辺に並べておいてあった。


 ローズは慌てて外を見たが、人影などない。拾い上げた真珠を、ローズは首飾りにとおした。他の真珠と同じ大きさ、色調だ。ローズが窓から一つずつ落としていた真珠に間違いなさそうだった。


 雨が止み、崩れた峠道の脇を通り抜け、男たちは進んだ。


 峠を越えた次の宿に、吟遊詩人はやってこなかった。窓辺に真珠は並んでいなかった。 


 一晩だけだ。だが、窓辺の真珠をローズは信じた。信じて、祈るような気持ちで、ローズは毎晩一つずつ、真珠を窓から落とした。


 どうか、見つけてくれますように。どうか、跡をつけてきてくれますように。どうか、見失わずにいてくれますように。


 毎晩、ローズは祈った。


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