17)窓辺
ローズは、味気ない食事を、ただ口に運んでいた。食べたくはない。だが、食べなくてはいけない。
数えることをやめてからも、日が流れていく。
雨が続いていた。行き先の山道が雨でくずれ、開通を待つため、男たちは同じ宿に泊まっていた。
ローズの耳に、歌声が聞こえてきた。吟遊詩人とその弟子らしい少年がいた。雨で同じように足止めされているのだろう。歌う少年の顔を見て、ローズはできるだけ落ち着いて目をそらした。
少年は、孤児院にいたマイルズによく似ていた。
吟遊詩人とマイルズによく似た少年は歌い、客達から小銭を集めた。マイルズに似た少年は、ローズを見たが、何事もなかったように通り過ぎていった。
あまりの素っ気なさに、本当にマイルズかどうか、ローズには確信が持てなかった。
翌日、雨は止んだ。
窓辺を見たローズは、思いがけないものを見つけた。真珠だ。真珠が2つ、行儀よく窓辺に並べておいてあった。
ローズは慌てて外を見たが、人影などない。拾い上げた真珠を、ローズは首飾りにとおした。他の真珠と同じ大きさ、色調だ。ローズが窓から一つずつ落としていた真珠に間違いなさそうだった。
雨が止み、崩れた峠道の脇を通り抜け、男たちは進んだ。
峠を越えた次の宿に、吟遊詩人はやってこなかった。窓辺に真珠は並んでいなかった。
一晩だけだ。だが、窓辺の真珠をローズは信じた。信じて、祈るような気持ちで、ローズは毎晩一つずつ、真珠を窓から落とした。
どうか、見つけてくれますように。どうか、跡をつけてきてくれますように。どうか、見失わずにいてくれますように。
毎晩、ローズは祈った。




