10)土地の者達
予想外の光景に、戻ってきたエリックは目を見張った。
「戻るなり驚かせましたね。大所帯になりました」
森の民の人数が、倍以上に増えていた。何があったか知りたいが、報告が先だ。
「無事、騎士団に、伝える事ができました。レオン様から、先に口添えいただいていたようです。既に、御出立しておられるとのことです」
エリックは、出立している人物、アレキサンダーの名を言わなかった。
「お役目ご苦労でした。レオン様にもお会いしたら、御礼を言わねばなりません。ご配慮もいただいているようですね」
「はい」
ロバートの隣には、見慣れない男が立っていた。
「リチャードのお知り合いで、このあたりを縄張りにしている方が、奴隷商人に一泡吹かせたいと、協力を申し出てくださいました」
ロバートに紹介された男は、居心地悪そうにしていた。
「お前の上品な言葉遣いで言うと、なんか、まるで違うもんに聞こえるな」
乱暴に頭をかくと、男は歯をみせて親しげに笑った。
「俺は、サミーだ。でかい山だと聞いてきた。なにせ奴らは金を持っているからな」
エリックは、眉根を寄せた。サミーの目的は、奴隷商人達から金を奪うことにしか聞こえない。
「よろしいのですか」
エリックの疑問にロバートは肩をすくめた。
「彼らであれば、土地の者に溶け込むことが出来ます。働いていただく分の賃金です」
ロバートは時に妙に合理的だ。
「だって、お前らが金を持っていても、仕方ねぇだろ。どうせあるんだし」
サミーの言葉に、ロバートは首を振った。
「使い道はいくらでもあります。今回、売られようとしている人々を助けた場合、その者達の食事や寝床が必要です。故郷へ帰すならば、その間の費用も必要です。奴隷の売買に関わっていたものは、出来るだけ生け捕りにします。訊問せねばなりません。そうなると、彼らの食事も、最低限であっても必要になります。刑罰を執行するにも、金はかかります。処刑人の給与も必要ですから」
「お前、綺麗な顔をして、最後に随分とエゲツないこと言ったな」
サミーが顔を顰めた。
「エゲツないとは?」
ロバートが首を傾げた。育ちの良いロバートが知らないのも無理はない。エリックもエドガーがいなければ、知らなかっただろう。
「酷い、残酷という意味だ」
リチャードが、説明してやっていた。
「お貴族様は、知らねぇのか」
サミーが口笛を吹いた。
「私は貴族ではありません。使用人です」
「はぁ、俺にとっちゃ似たようなもんだ」
「違います」
何がおかしいのか、サミーは腹を抱えて爆笑した。
「お前は変なやつだ。それにしても、本当に、奴隷市場を本気でなんとかしようってのか」
「そうでなければ、このような回りくどいことはしません」
険のあるロバートの口調に、サミーが首を傾げていた。




