41 いつか王様になるあなたと
*この文章はかき上げてからAIに聞いてみました、特に路線変更や修正はしていないです*
詳しい話は11月25日の活動報告で!
お約束した日。やってきました、第2城。の麓。ローグにはお留守番を頼んである、もうお客さんが来るかもしれないからね。
警報が鳴らないなら魔術で登山を、と私はいつものマジックバッグに椅子を取り付ける。
「よっと」
このマジックバッグも自家製なんだけど、なんてったって素材がいい。小さいころに殿下と海辺の街に行って迷子になったときに、遊んだ子からもらった飛竜の皮を使っている。おかげで軽いし丈夫、そして重量軽減の刺繍で内容量の重量によっては浮く。
気持ち強めの風魔術で地面ちょっと上をぷかぷかと移動する。そこまで速度を出していないので、のんびりと移動して第2城。出入口に立つ兵士さんたちに手を振ると、うち1人が城の中に走っていって、そのうちにお姉ちゃんがやってきた。
「ヨウンソン男爵に敬礼!」
「悪いアレうちの妹。“ポーラいち有名なアルヴィ”よ」
お姉ちゃんにも手を振ると、口パクで「そこから降りて」と言ってきたので椅子から降りる。そっか、警報が鳴ってないのに魔術を使っているヒトが来たから、偉い人を呼んできたのか。
「って、お姉ちゃん偉かったんだね」
「この間いろいろあって男爵位を拝したからね。おかげで今は北ガルヴィニア国籍よ」
「へー」
なんでわざわざ北ガルヴィニア国籍なんだろ。我が家はガルヴィニア国内にあるのだし、おじいちゃんが北ガルヴィニアに住んでるから、とか?
「で、今日は何をしに第2城へ?」
「殿下が終日いるっていうから、処々相談に?」
「今日はこっちでも議会をやっているのだけど……」
お姉ちゃんは頭を抱えているが、私はちゃんと約束したつもりだぞう。
「わかった、私が案内するわ。ついてきて頂戴」
「はーい」
私とお姉ちゃんは連れ立って、大回りをしながら殿下の執務室へ歩いていく。なんでも、近道の方はさっき言ってた会議中だとかで、私は近寄っちゃダメなんだとか。
殿下不在の執務室に案内された私は、殿下を呼んでくるというお姉ちゃんと別れ、仕事中だったバルトロメオさんに簡易応接セットへ案内されてお茶を出してもらう。ちょっと濃いめではちみつ入り、大変おいしい。
2杯目を淹れてもらう頃には、盛装の殿下がくたびれた様子で戻ってきた。お姉ちゃんは不在だけど、会議は終わったのだろうか。
「……アルヴィの幻覚が見える」
「いるよ」
くたびれ殿下が私の隣に座る。でっかい溜息を吐きながらもたれかかってきたので、そのまま頭を膝に誘導して角で太ももにダメージを受けた。
視界の端で、バルトロメオさんが退室したのが見える。殿下の頭をよーしよしよしと撫でて、そのままひと吸い。ちょっと汗っこい。
「くたびれてるねぇ。今日は殿下に相談したいことがあってきたんだけど、やめておいた方がいい?」
「ん、聞こう」
まだちょっと私を幻覚だと思ってそうだけど、まあいいか。
「ついにアトリエを建築するんだけど、近くまで水を引きたいのよね。川の手続きって頼めるかしら」
「承ろう」
「じゃ、建築始めたら改めて伝えるね。あと、髪の毛抜いていい?」
「うむ」
うなじ沿いの短めの毛に指を絡ませて、勢いをつけてエイヤと抜く。よし、いい感じの本数が採取できた。ハンカチで包んでマジックバッグへ。
「? ……ん? アルヴィ?」
「ホンモノダヨー」
「アルヴィ?!」
痛みで誤解が解けたらしい、殿下の頭が私の膝から退出する。残念だ。
殿下は何度か目をこすって、それから威厳のためか咳払いをした。
「ンんっ、なぜ私の髪を?」
「素材。納品用にゴーレム作るの」
「そうか。そうか……」
殿下からそーっと『魔人族素材収集にかかる申請書』という紙が差し出された。用途はゴーレムの作成、物は髪の毛(毛根あり)、数量は10グラム、と……。
記入した『魔人族素材収集にかかる申請書』をさっと返す。殿下は懐から取り出した携帯用のインク壺とペンでささっとサインをして、執務机の上にある『承認』の箱の方へ投げた。入ってないけど。
「それで、今日は何か相談があるのだったな?」
「2つほどね。1つは身体を切り離した状態かつ同期するような魔術の特許が出ていないかなんだけど」
先生からの依頼の、『事前に首を切り離しても、飲食等に齟齬が出ないような魔術』に関することを聞いてみる。ちなみに私が考えたものは、切り離した断面を簡易癒着させて「切ってあるけど切れてない」みたいな状況を再現する感じだ。未臨床。
「近い内容では、空間魔術を使ったものがあったな。空間魔術の出入口を2か所用意し、片方から入れたものをもう片方から出す、というものだ。ある程度空間魔術の容量があれば、時間係数にかかわらず同期すると」
「じゃあそれ紹介しよっと」
ちなみに、どういう用途で使われているか聞いたら殿下が目をそらした。なんでよー。
私の相談を1つ解決できたからか、殿下は誇らしげに続きを促してくる。
「もう1つはどういった?」
「うん。私だけで決めたら殿下が怒りそうだからさ」
「ふむ?」
「アウロラ先生に“魔神にならないか”って誘われたの」
言うなり殿下の口が鋭角のへの字になり、眉間にしわが寄り、目元が険しくなる。
せっかくの殿下の顔につまらないしわが入るのが嫌で、私は殿下のほっぺたをむにむにむにして成型しなおしておいた。役得である。
「アルヴィはその、なりたいのか?」
「どっちでも。殿下は反対? それとも賛成?」
「アウロラ先生というと、緑の神アウローラ様だろう。であれば、神託として享け実行すべきだが……」
「うん」
過去1殿下の目が泳いでいる。私は意見を聞くと決めたのだから、と殿下の発言を待つ。
「魔人族としての意見は、ぜひなるべきだ。しかし個人としての意見は、アルヴィの心身に何かしらの手を入れられることは好ましく、ない」
「うん」
「これが他の神々であってもそうだ。たとえ神親でも、可能ならアルヴィの何かしらを損なうことは好ましくない」
「うん」
殿下の心の中で、賛成と反対が揺れている。ここは何か、私以外の要因で背中をドンと押せればいいのだけど。
例えば、別の神による神託とか。
「それは良いアイデアだと思うね。俺は君が末席に加わることを求めている、と伝えておこう」
応接セットのソファの裏から、回り込むように向かいの席に見覚えがある服装の誰かが座る。私はその声を無視して、できるだけ殿下しか見えないように体ごと横に向いた。
深呼吸をひとつ、これにかかわってはならないと先生に言われていたのを思い出して、殿下の美貌を見つめる。顔もそれ以外も大変好みで視線を逸らす暇がない。
「メリットもデメリットも伝えていないのに、悩んでくれるなんてよい婚約者じゃないか。式には呼んでくれるのだろう?」
「ちなみに殿下として迷うところって何?」
「アルヴィとの時間が削減されることだ」
「それはたぶんないと思うよ、今と同じくらいには確保するもん」
「今より増やした方がいいと思うよ、俺は」
殿下との時間がこれ以上減ったら私が弱るからね。ただでさえ吸い時間ないんだから。
「それに改造といった、アルヴィを損なうことは避けたい。が、神託であれば……」
「大丈夫だよ殿下、従わなかったからって問題ないって」
「従わなかったら勝手に神にするだけだしねぇ。素質十分、実績二十分、推薦は青緑白俺じゃあ」
「いや。フロー・ヴィング・バーレイグ・トルヴィル・レムリウスとして、君に躊躇いがないのであれば魔神になってほしい」
「わかった!」
そうだね、私もその方がいいと思うよ。いつか王様になるあなたと、私の価格も釣り合うってもんだ。
「じゃ先生にどういう手続きがいるか聞いておくから。殿下のサインが必要な時はまた来るね」
「理由は聞かなくていいのか?」
「私はとっくに、殿下へ命を預けたつもりだもの」
ぐうっ、と唸って殿下が丸まってしまった。最後にひと吸いをかけて、殿下を堪能する。ちょっと抱きしめてほしそうだったので、親愛のハグを返しておいた。
私は執務室を出た。廊下で立っていたバルトロメオさんに、もう1人出てくるかもしれないけれど、できるだけかかわらないように伝言をして帰路に着いたのだった。
*
アルヴィが出てすぐ。まだ温かい紅茶を手つかずのカップに入れて、男……アルヴィに名乗ったそれをなぞるなら、カーター・ロストストーンズはフロー……アルヴィ曰く殿下を見る。その視線は温度が感じられず、カーターからすればアルヴィではない方、くらいにしか認識していないことが伝わっていた。
「後押しをありがとう」
「……」
丸まった、いや、頭を下げたまま動かないフローに、カーターはやがて声をかけた。
「褒美を与えよう。神託がいいかな、物がいいかな」
「可能なら、アルヴィの実績をお教え願いたく」
「いいよ。ただし、本人には伝えないと約束してね、面白くなくなっちゃう」
返事をしないものの、フローとカーターの間には契約が結ばれた。
ひといきに紅茶を飲み干して、カーターは楽し気にフローへ明らかにする。
「俺と七つの仔らの与えた属性は12もある。火、水、風、土、光、闇、氷、雷、腐、木、祝、呪。すべてがこれで推し量ることができた星に、彼女は“それ以外”を定義した。まだ名称がないから、早く彼女が決めてくれると嬉しいなあ」
まるで夢見る乙女のように。ときめきと期待と興奮がないまぜになった赤色に頬を染める。
しかし即座にそれは反転し、カーターはソーサーにティーカップを叩きつける。
「お前はこのままならば釣り合わないな。価値も。地位も。信心も。よくも一時であろうと反対をした」
「……」
「研鑽しろ。成長しろ。そして滅亡しろ。神意である」
フローの角飾りをひとつ奪い、カーターは廊下につながる扉へ向かい、しかし戻って窓を開ける。春の訪れの感じられない、冷たい風が強くフローの頬をなでた。
「バルトロメオ・ハル=ロードス・ダゴスティーノは苦手なんだ。こっちから失礼するよ」
窓の縁に腰掛けて、カーターは背中から外に落ちる。慌てたフローが窓まで駆け寄り外を見るも、落ちるだろう場所にはなにもいなかった。




