表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/54

15 ダンジョンアタックの準備

12~13で契約金の話をしていたので、冒頭を少し直しました。

修正前: 幸い、土地は殿下が貸してくれることになっているし、今はまだ借りる契約が完了していないからお金は発生していない(と殿下が言っていた)。だからとりあえず、3年くらい借りれるお金があれば当面は大丈夫なんじゃないかしら。いくらで貸してくれるか知らないけど。

修正後: 幸い、土地は殿下が貸してくれることになっているし、今はまだ借りる契約が始まっていないからお金は発生していない(と殿下が言っていた)。だからとりあえず、3年くらい借りれるお金があれば当面は大丈夫なんじゃないかしら。そうすると大体300万トーカあればいいのだけど、今は売れるような商品がない。

 結局お姉ちゃんはあれから10日実家にいて、私をピッカピカとやらにし、食事制限もなくなった。

 10日目のお昼にまだパーティに合流していないと聞いて、バルトロメオさんが迎えに来た時は面白かった。

 炎の魔術と闇の魔術の打ち合いが始まって、高速詠唱をするお姉ちゃんと詠唱済で収納してある魔術を取り出すバルトロメオさんの対決は、実家(アトリエ)に飛び火して気の逸れたお姉ちゃんをバルトロメオさんが捕縛することで決着がついたし。アトリエの火? バルトロメオさんが消していった。


 さて、私がこれからやらないといけないのは、アトリエの建築費用と土地を借りる費用、つまりは初期費用をかき集めることだ。

 幸い、土地は殿下が貸してくれることになっているし、今はまだ借りる契約が始まっていないからお金は発生していない(と殿下が言っていた)。だからとりあえず、3年くらい借りれるお金があれば当面は大丈夫なんじゃないかしら。そうすると大体300万トーカあればいいのだけど、今は売れるような商品がない。

 ……殿下からお金を持たされてしまったから、本当に私が払っていることになるかよくわからないのだけど。


「大儲けしたいならダンジョンアタックよねえ」


 というわけで、私は装備をそろえるためにケントリポリ(会都)に来ている。やっぱりこういう大都市じゃないといい武器が買えないのよね。

 会都はだいたい中心にある会議城(かいぎじょう)の周囲を4地区に分けていて、その立地上大体の傾向がある。北の山方面は景色がいいから貴族の町、東の海方面は商品が来るから商業の町、南は鉱山からのルートが多いから職人の町、西の森方面は土地が豊かだから農業と平民の町。ちなみによく借りているアトリエは東といえば東なのだけど、どちらかといえば南寄りなので職人さんも多い地域にある。

 聞いた話では貧民街(スラム)が南と東の間くらいにあるらしいが、それらしいヒトを見かけたことはない。なんでだろう、殿下が怖がられてるとか?

 武器を買うなら東より南の町の方がいい。なんたって、職人さんがこだわって作った結果誰も使えなくなってしまった武器とかが売られているからだ。誰でも使える武器はどうせとっくに東のお店に売れているし。


「すみませーん」


 というわけで、今日の運勢と星の並び、後は乙女のときめきを材料にどのお店で買い物をするか素人なりに占って、ここと出たお店に入る。ここらにあるお店は基本的にそれぞれの工房が研磨やメンテナンスの依頼を受けるための窓口だけど、ここなら物を売っているだろうと。

 お店は予想通り、武器の直接販売もしているようだ。壁には剣が、棚には弓が並んでいる。

 不愛想な髭人(ドワーフ)のおじさんが、カウンターから私を見てすぐに手元の新聞に視線を戻す。


「なんだい。うちは杖の取り扱いはないよ」

「耐寒性の高い弓を買いたいんですけど、いいのありますか」

「あんたが、弓?」


 再び新聞から視線を外し、私の体躯を見られる。枝よりか少しマシな腕、細い(方に入ると思う)胴まわり、そしてまとめていない長い髪。おじさんは鼻で私を笑う。


「危ないからやめておきな。うちにある弓はあんた向きじゃない、お使いで来てるんなら使うやつを連れてきな」


 大変丁寧な門前払いだ。好感が持てる。

 しかし、弓を使う……少なくとも装備するのは私だし、売ってもらえないと占いから始めることになる。


「ひとまず見せてもらうだけでもできませんか?」

「見たら今度は試し打ちをさせろっていうんだろ?」

「そりゃまあ」

「じゃあだめだ。東の店に行ってくれ」


 話をするたび、可能ならここで弓を買いたいと思う。見るからにできなさそう、向いてなさそうなヒトはきっちり追い出す、いい店じゃないか。


「東の店の弓じゃダメ。あんなやわなの壊すだけじゃない」

「へえ」

「それに、腕で引くわけなじゃいの。魔術で引くのよ」


 そのせいで並の弓だとすぐ壊れてしまうのだけど。

 おじさんは私に興味が出てきたらしく、ショートボウをカウンターの上にのせる。


「そのやり方でこいつを引いてみろ。うちの若いのが作ったやつだ、壊してもいい」

「ありがとう」


 受け取った弓を手に取って確かめる。木製だな、触った感じからして若いニレ材かな。

 さすがに無防備にやると危ないので、遮音の魔術から派生する物理結界の魔術を使って、と。

 弓を床に置く。深呼吸をして、弓を私の魔力の制御下に置く魔術を唱える。



従属しろ(サーバント)手足となれ(プロスティーセス)違わず射貫け(テルサロー)


 前段詠唱完了。弓が制御下に入る。


矢を放つ(スターズ)矢を放つ(メテオ)矢を放つ(コメット)、」


 後段詠唱完了。質量を持つ魔力の矢が装填される。的はこの結界そのものだ。


狙え(セット)!」


 ぎちぎちみしみしべきんばきばき。しなるはずの弓はこっぱみじんに崩壊する。もった方だわ。


「ふうん……」


 私だって力いっぱい引いているわけではない、弓が魔力に耐えられないので崩壊するだけだ。

 本当なら性能が私向きの弓を使えばいい。ただ、ちょっと東の店(そこら)では売っていないのが問題なんだ。


「魔術で弓全体を制御して、矢も魔力製。そりゃ東の店にあるような並の耐魔力の弓じゃ買えないわけだ」

「そうなの!」

「だが駄目だ。あんたに売れる弓はない」


 きっぱり言われてしまった。まあ、弓を主武装に組み込んでいるヒトは普通腕で引くし、私のように荒っぽいやり方では商品(作品)がすぐに壊れてしまうから職人さん的にも駄目だろう。

 仕方ない、いいのが見つかることを願って魔術師・魔女向けの店に行こう。そう思って私はしょげながら出口へ向かう。


「おい、どこに行く気だ」

「東の“ファル=マコン魔導用具店”に」

「待て待て、あんたに持たせるなら特注品の弓だ。俺が作る、名前は?」


 しょぼしょぼ歩いていたところにうれしい言葉。名前ねえ、そしたらこれしかないわ。


「じゃあ、フェイルノート君6号で!」

「お嬢ちゃんの名前だよ」


 それは失礼。


「私はアルヴィ。よろしくお願いします」

「俺はデヤン、この工房の長をやらせてもらっている。早速だが、予算は?」


 そういうことはわからないので、手持ちを出して「払える範囲ならいくらでも」と伝える。デヤンさんは驚いていたけど、南ガルヴィニアの国家予算級とか要求されてないからいいことにしておいた。

 要求されたのは今までの弓と同じかそれよりちょっと高いくらい。要望を伝えたらデヤンさんが張り切っていたので、少しだけ色を付けてお金を渡して次のお店に行く。

 今度のお店はおおむね東と言っていい地域、ファル=マコン魔導用具店からもほど近い古着屋さんだ。お母さんがひいきにしていたので、私も面識があるといえばある。


「いらっしゃいませ」


 冒険者向けのラインナップの中で、私は店をざっと見まわして、服を選ぶのは面倒だと思いなおして店員さんに声をかける。


「すいません、豪雪地帯向きの服っておいてます?」

「当店ではちょっと取り扱いがないですねえ」


 困ったように微笑まれてしまった。もしかしたら方便かもしれないけど、特殊環境用の装備は特殊環境にしか売ってないのかもしれない。需要と供給の関係で。

 残念なことに豪雪地帯向きの服はないが、砂漠の夜向きの服はある。ひとまずはこれでいいことにしよう。

 それと、ダンジョンに行くためには……。


「あ」


 今回行くダンジョンはポーラ王国連邦に所属していない国にある。出国手続きをしないと。

 幸いポーラ王国連邦行政府の窓口は都会なのでいくつか存在する。南ガルヴィニアには最も大きい街にしかないのだ。


「会都ってべんりだわ、やっぱ」


 ちょっとだけスキップしながら行政府の窓口へ向かう。さて、後は何が必要だったかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ