台風が去った後のまさかの雨
BGM:「あの夢をなぞって」yoasobi
2007/08/13
「あや!すごい雨脚だ!」
健太が風呂から出てきて言った。
いつもの食卓に並ぶは、興津さん弦賀さん寿樹だ。
如月じいは病に臥せっている間、興津さんが助っ人に来て食事の世話をしてくれている。
鬼空はアメリカへ行っている。
健太の声で皆外を眺める。
「台風は行ったというのに、次の日からこれではな…」
寿樹が言う。
「一体全体どーしたっていうんだ?」
真正家の庭はぬかるんでとてもお参りに来れない状態であった。
「枝が折れて、垂れ下がってしまっていますね。」
興津さんが心配してくれている。
雨が止んだら台風の後をカタズケようと皆思っていたらしいが、これでは足の数だけ庭がぐちょぐちょになってしまう。
「これじゃあ、庭師を頼んでも無理のようですね。」
冷静に弦賀さんが言う。
「如月さんがお休みしてからというもの、庭は荒れ放題になっているからね。」
本来、御師が庭掃除をするものだが、庭が広いのでみんなで手伝っているのだ。
この頃の寿樹は奉仕をあまり行っていなかった。
健太に言われたものだから寿樹は慌てる。
「私が庭を直せというのか?」
「そうとは言ってないけど。」
健太の功績が物を言う時がやって来た瞬間だった。
「最近、やけに草が目立つと思いました。」
「弦賀まで!!」
更に寿樹が焦る。
「寿樹、一緒にやろうか。」
健太が誘う。
罰の悪くなった寿樹は、一人で晩酌を進める。
健太が晩御飯のカタズケを興津さんと終えると、部屋に戻るのだが、21時前に終わると必ず寄るところがある。
寿樹の部屋だ。
おこぼれを貰いに尻尾を振るのだが、まぁまず無い。
障子を開けると何やら荷物を詰めている。
「寿樹、明日はどこか出かけるの?」
「ウム、内の庭は地が固まるまで手は出せんから。無人の神社の方へ様子を見に行こうと思ってな。」
ハッと気が付いた。
寿樹は怠けていたんじゃなくて、ちゃんと担当区域の神社まで状態を考えていたんだ。
管轄はこの神社なのだが、最近神主さんが居なくなった神社も受け持っているのだ。
お金になる仕事ではないので、ある意味仕事量が増えただけの損なんだけど。
神業ってこれだからやる人がいないんだよね。
「それじゃ、大変だから僕も行くよ。」
「お前は仕事に行け。」
そう、この頃の僕はサラリーマンをしながら、寿樹の屋敷でおこぼれ…間違った。寝泊まりをさせてもらっていた。
いつか、マスオさんを夢みて。