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4/11

枯れ木も山の賑わい

銃の知識とかにわかもいいとこです。ガンシューの知識も同様です。あまり深く考えないでくれてると幸いです。ただの馬鹿ともいう。

 お城の中にある訓練場。そこの一角に弓や魔法での訓練用の的が一列に並んでいるところがある。時刻は昼過ぎ辺り。お日様はぽかぽかと温かく、昼寝をするにはもってこいの気候だ。



 これだけ気持ちが良い天気だと、ついつい今が非常時であると忘れてしまいそうになる。もっとも元から俺にはその自覚が薄いのだけど。



 時間が時間なだけに周りには誰もいない。休憩のため皆どっか行ってしまった。



 そんな誰もいない中、俺はたった一人で的に向かってもう何百発目になるかわからない銃弾を一心不乱に撃ちこみ続けていた。



 誰もいない訓練場におよそ中世ファンタジー的な世界に似つかわしくない火薬が爆ぜる乾いた音が断続して響き渡る。何発か打ち続けているとガチンッ、と音を立てて銃はマガジンの中の銃弾が尽きた事を俺に知らせた。



 俺は舌打ちして空になったマガジンを引き抜き、もう片方の手に()()()()()()()()()()()()()()装填。スライドを引いて狙いをつけ、再び的に向けて撃ち込み始めた。



 1マガジンの装弾数は20発。俺の手に握られている拳銃はブローニングハイパワーっていう拳銃で、実際の装弾数は約13発くらい。おい言ってることが違うじゃないかと突っ込みが来るであろうが、そこはガンシューのお約束だ。気にしてはいけない。



 的と俺との距離は約100メートルほど。命中率はまずまずといったところ。…というか、どうも俺の生み出したこの拳銃、風や気温の影響を受けないっぽいんだよね。撃ったところに当たる。そこもガンシューのお約束だ。



 さっき虚空からマガジンを出したのも、弾は基本的に無限というガンシューのお約束を現実に反映したものだ。



 撃ったところに当たるのに外してる時があるのは俺の集中力が切れてきている証拠だ。こういう時はおとなしく休息をとるのが一番だ。



 俺は息を吐き、額の汗をぬぐってから拳銃をホルスター(これはポイントによる報酬でゲットしたものだ、この銃もね、詳しくは後で説明するよ☆)に収めた。



 それから今の射撃訓練の結果を知るために自身のステータスを開き、命中率の欄を見てみる。




 |・抜打弾輝

 |・♂

 |・17歳

 |・ランクC ヘタクソ

 |・ライフ■■■■■

 |・命中率-79%

 |・総スコア3410

 |・次の報酬獲得まで590ポイント

 |アビリティ 

 |段数UP1 ボム所持(3個)キャンセルゲージ減少量UP1銃威力UP1

 |使用可能武器 初期リボルバー ハンドガン

 |固有能力(オリジナル)

 |『ガン・シューティング・アクション・リアル』

 |称号

 |神の使徒 ふにゃふにゃした来訪者 射撃の初心者



 命中率は79%。つまり動きもしない的相手に3割近く外していたという事だ。



「だから言ってんじゃねぇかよ~ガンシューは下手だってよぉ~」



 あまりの酷さに誰に言うわけでも無く言い訳じみた言葉を口から零しながら、俺は天を仰ぎ見る。



 空は青々と広がっており、雲が風に乗って思い思いに漂っている。頬を撫でる風は心地よく、今が非常時であることを思わず忘れてしまいそうな爽やかさだった。



 …仕方ないと言い訳するのは簡単だ。だが現状を嘆くばかりでその場に蹲っていても人は成長出来ない。どれだけ嘆こうが現実は変わらないのなら、もうそういう物だと割り切って前に進むしかない。



「んな事は分ってるわい…」



 頭の中の冷静な部分から染み出してくる正論にそう毒づくと、俺は訓練場の隅っこにあるベンチの上に置いてあるバケットからサンドイッチを取り出し、大口を開けてかぶりついた。



 バター香るパンに分厚いハムとシャキシャキとしたレタスが豪快に挟んであるそのサンドイッチは、くたびれた体に再び活力を与えてくれた。こいつは俺が無理言ってメイドさん(秋葉なんかじゃ目にできない本物のメイドだぜ?)に頼んだお弁当だ。



 もごもごと咀嚼しながら俺は一台のノートパソコンを虚空から取り出した。このノートパソコンは俺の能力の詳細を詳しく知ることが出来る俺限定の真実の鏡みたいな道具だ。



 サンドイッチ片手に俺はノーパソを操作し、報酬一覧のタブを開いた。



 報酬一覧

 100 ハンドガン(済)

 500 ホルスター(済)

 1000 ボム(済)

 1500 段数UP1(済) 

 2000 キャンセルゲージ減少量UP1(済)

 3000 銃威力UP(済)

 4000 カロリーバー(プレーン)

 …



 こんな感じでスコアに応じた報酬が設定されているわけだけど、報酬について説明する前にまず俺の能力がどういう物か順を追って説明いたし等ございます。



 まず俺の素晴らしい (クソったれな)能力『ガン・シューティング・アクション・リアル』について…お話しします。



 皆…ガンシューって…知ってるかな?



 ガンシューっていうのはね…例えば…ゲーセンにある銃型のコントローラーが接続してある筐体とか…あるいは…家庭用ゲーム機に専用のコントローラーを接続してプレイする主観称始点のシューティングゲームの事を言うんだ。



 …まあ糞にわかの説明など置いといて、俺の力はガンシューでできることを現実でもできる能力だ。



 具体的に言うとさっきみたいな弾数無限の銃とか、ステータスにも映っているようなライフの事とかね。



 そうそうこのライフ、実はかなりすごい物なんだ。今から三日前くらいに新兵演習について行った時のことなんだけど、演習は実際に魔物と戦う超本格的な物で、実戦なんて初めてだったからもう全然訓練道理に動けなくてさ、魔物の攻撃をよけきれずに食らっちまったんだ。それも顔面に。



 俺は死んだかと思った。でもものすごく顔面が痛いだけで生きてたんだ。訳も分からぬまま俺はそのまま訓練を続行したんだけど、ふとステータスを見たらライフが一個減ってたんだ。



 もう分るよね?そう俺はどんな攻撃を食らおうがライフが一個しか減らないんだ。ガンシューのお約束だね。だからしょぼい魔物の一撃だろうだ核爆発だろうが俺はライフが一個しか減らない訳よ。すごくね?マジで。



 まあ痛みは添え置きだから、あんまりいい事とは言えないんだけどね。本来即死するような攻撃で即死できないんだもん。その即死するような痛みが続くわけだよ?やばいぜ。報酬の欄に痛覚遮断とか無いか今度探してみようと思う。



 実戦の戦闘をして分かったことは他にもあって、どうも雑魚は弱点を撃てば一発で倒すことが出来るんだ。



 そして当然スコアもあって、体とか弱点以外は一律10、弱点は100という感じだ。スコアは戦闘ごとにリセットされるけど、総スコアとして加算されていく。そして一定のポイントに達すると報酬が手に入るってわけさ。



 スコアを稼ぎたいならまず体を数発撃ってから頭を撃ってポイントを稼ぐのが良いだろうけど、現実でそんなことしてる暇なんか無いです。そもそも当てられるかどうかも怪しいのにそんな遊んでる暇なんかないやい!



 雑魚の話の続きだけど、雑魚がいるならボスもいるわけで、そういうボスクラスの場合だと頭上にライフゲージとその下にキャンセルゲージが現れるんだ。



 別にライフだけ減らすこともできるけど、弱点狙ってキャンセルゲージを0にすれば一気に大ダメージが与えられるわけだ。それはちまちま体力を減らすよりよっぽど早い。これもガンシューの定番だ。



 でもスコア稼ぎをしたいのなら弱点以外を狙って稼ぐんだろうけど、まあこれもさっき言った理由で実践することはほぼ不可能。少なくとも火力の足らない今は。でもスコアを稼がないと新しい武器も手に入らないから難しい話だ。



 俺は水筒から水を飲みながら画面を下げ、10000ポイントのところにある報酬に目を止める。



 9000 ミネラルウォーター(500㎜)

 10000 ショットガン(ポンプアクション)

 15000 ライフUP

 …



 ショットガン。こいつを入手できれば戦術の幅が広がる。何より安心感が段違いだ。早く欲しい。でも入手までの道のりがね…。だが早いうちに火力を上げねば彼らの戦いにはついて行けないだろうし…。



「うむむむむ…」



 ノーパソを膝の上に抱えながらうんうん唸っていると、むいっと頬をつままれた。



「ふが?」



 不意を突かれた俺は変な声を出しつつ俺のムニムニほっぺをつまんでいる者を確認すると、そこにいたのは新藤君だった。その後ろには岩井さんと王女様が。



「や、弾輝君、こんにちわ」

「ほう、ひんほーふん、ほんひわ」(おう、新藤君、こんちわ)

「や~やっぱり君の頬っぺたはふにゃふにゃしてるなぁ~」

「ふがふが」



 新藤君は俺のほっぺをむにむにしまくり、岩井さんに小突かれなければずっとむにむにしていただろう。



「なるほど、噂に影ってやつだな」

「何の話ですか?」

「いんや、こっちの話さ」



 新藤君につままれた頬をさすりながらボソッと呟いた俺の独り言に岩井さんが怪訝そうな顔をするけど、俺は手をひらひらさせて大したことじゃないと伝えた。



 ちなみにだが、彼らは俺と別コースで訓練を積んでいる。そりゃそうだろう。俺みたいなよくわからない能力の奴なんかより彼らみたいな才気あふれる方を優先するなんて至極当然のことだ。文句なんて何もない。



 ただ俺がこんなとこで指導員すらなく一人で訓練する羽目になってる原因はそれだけではないんだけどね。



「どうですか?今日は『使()()()』の人たちに何かされませんでしたか?」



 王女様は心配そうに俺に聞いて来るけど、俺は特にないとやんわりと言った。



『使徒派』、それは()()使()()()()()()()()()()()()近ごろ急速に力をつけてきた新興宗教団体の事だ。もとは神様を信仰する宗教だったのだけど、減少の一途をたどる現状の改善とさらなる地位向上のために二人にすり寄ってきた危険集団だ。



 そいつら(の中でも過激な思想の連中)は使徒としてふさわしくないと俺を目の敵にしており、俺の事を神の使徒を語る異端者だの神の使徒にすり寄る醜い豚だの言いたい放題のオンパレード。びっくり! (宗教の死体に群がる) (蠅が偉そうに。)



 陰口叩かれるのはまだいい方で、最悪暴力まで振るってくる頭のおかしい変な奴らだ。そういうことをするから世間のイメージが宗教=変なのになっちまうんだ。一部の敬虔な信者が不憫でならないよ。



「気を付けてくださいね、彼らは私や響には愛想が良いですけど、弾輝さんはあまりよく思われていませんからね」

「調べた限りでは彼ら従わない者にはかなり強引な手段を使って取り入れているらしいです、噂では高い地位にいる人も使徒派に入り始めているとか、もしこのまま行けば使徒派が国教にせざるを得ないとお父様も言っておりました、それだけ彼らが力をつけてきているという事です」

「本当は僕らが君と一緒になって行動できればいいんだけど…」



 新藤君は申し訳なさそうにそう言ってくれるけど、俺は待ったをかけてその言葉を止めさせた。



「おっとそれは言っちゃ駄目だぜ」

「でも」

「でももくそもねえ、例え君らがどう動こうが連中の持つ権力はもはや個人で止められるような力じゃなくなった、と言っても俺にちょっかい掛けてくるのは極一部の屑共だけだ、…まぁそのごく一部に高い地位の奴が要るっぽいのが問題なんだけど」



 自分で言っておいてなんと気の重くなる話であろうか。思わずため息が口から出てくる。



「はぁー…、まあでも基本的に使徒派を構成している者の大半は俺みたいな搾りかすにも敬意を払ってくれるから、そう悲観することも無い、と思う」

「思うって…憶測じゃないか」

「やはり私たちなりに何か対策を立てるべきでは?ああいう手合いは放って置くと何かしら厄介なことをしでかしますから」

「実感が籠ってますなぁ」



 俺は茶化すように岩井さんに言うと。



「経験則ですから」



 と岩井さんは肩を竦めた。岩井さんはその時のことを思い出しているのか、眉間には皺が寄っていた。やっぱり巫女さんともなると何かしら家がらみの騒動とかあったのだろうか?疑問に思わずにはいられないけど、聞いていい空気じゃないよなぁ。



「とは言ったものの響さんも輝美さんも訓練を休むわけにもいきませんし、私もやらなければならないことが多くてつきっきりになるわけにもいけないですし…」

「「「う~ん……」」」



 それっきり三人は首を捻って黙ってしまった。



 重くなった空気に、俺はうんざりと首を振った。いや彼らがものすごく俺のことを心配してくれるのはありがたいのだけど、それで二人の訓練に支障が出てしまうのは避けたかった。こういう重い空気も嫌いだ。



 俺は快楽主義者なんだ。快くないことは嫌いなのよ~。嫌なことは後回しでいいじゃない。今を楽しく生きようぜ! (これを問題の) (先延ばしという)



「…まあ少し考えたところで考えつくようなことじゃないし、俺だって神の使徒の端くれなんだ、自分のケツくらい自分で拭くさ」

「でも…」

「まあまあ、そんな暗い話よか俺は君らの話が聞きたいな」

「私たちの話ですか?」



 何だか重くなった空気を取り繕うように俺は彼らのステータスを見てみたいと提案した。



「え?僕らのステータス?うん、いいよ、はい」

「全く今まさにあなたの事で頭を悩ませているというのに当の本人がそれでは」

「まあまあ良いじゃないの減るもんじゃないんだし」

「はぁー…」

「あ、あはは…」



 俺からの突然の注文にもかかわらず3人は快く応じてくれた。



「ふっふっふ、ではこの私が君らの成長を確認して進ぜよう」

「何ですかその口調は」

「雰囲気が出ると思ってね」



 岩井さんの突っ込みを軽く受け流し、俺は彼らのステータスに目を通す。



 |・新藤響

 |・♂

 |・18歳

 |・レベル12

 |・次のレベルまであと200EXP

 |・ちから170

 |・ぼうぎょ105

 |・まりょく75

 |・すばやさ170

 |汎用能力(コモン)

 |『剣術3』『身体強化2』『直観4』『光魔法2』

 |固有能力(オリジナル)

 |『神の剣(ブレイブ・ソード)

 |称号

 |神の使徒 英雄 剣の達人 博愛主義者 鈍感者 極東のサムライ


 |・岩井輝美

 |・♀

 |・18歳

 |・レベル12

 |・次のレベルまであと200EXP

 |・ちから100

 |・ぼうぎょ90

 |・まりょく200

 |・すばやさ180

 |汎用能力(コモン)

 |『弓術3』『身体強化2』『結界術2』『光魔法2』『風魔法2』

 |固有能力(オリジナル)

 |『神の弓(セイントアロー)

 |称号

 |神の使徒 弓術の達人 極東の巫女 恋に燃ゆる乙女 幼馴染ヒロインは…。


 |・エリザベス・アルカディア

 |・♀

 |・19歳

 |・レベル46

 |・次のレベルまであと6700EXP

 |・ちから500

 |・ぼうぎょ400

 |・まりょく600

 |・すばやさ400

 |汎用能力(コモン)

 |『身体強化4』『腕力強化』『脚力強化』『結界術4』『光魔法5』

 |固有能力(オリジナル)

 |『神なる光』

 |称号

 |預言者 撲殺王女 神に選ばれた聖女 大いなる果実 



 開かれた3つのステータス画面を俺は端から順番に見ていった。



「ふがふがふが」(ほげー何だこの成長幅、いくらなんでも上がりすぎだろ!)

「当然でしょう、何せ二人は神の使徒なんです、これくらいの成長幅はあってしかるべきです」

「ふがふがふが~!」(俺にはそんな気の利いたもの無いんですかねぇ!!!)



 何時の間にか背後にいた王女様に俺は訴えたが、頬っぺたを引っ張られてたから不明瞭な声が漏れるばかりだ。どうも彼女は俺がステータスを見ていた隙に背後へと回りこんでおり、俺はめっちゃ頬っぺたをむにむにされていた。密着してるからおっきなお胸が俺の背中にぐにゅ~って押し付けられてあぁ^~堪らねぇぜ!



 ていうか新藤君たちのステータスも凄いけど、王女様のステータスなにこれ?何というか見事に物理攻撃に秀でてるんだけど。おかしくない?何撲殺王女って、こわ!そりゃ簡単に引きはがされるわけだ。やっぱりゴリラじゃないか…。(呆れ)



「僕らのも見せたんだし、弾輝君のも見せてよ」

「良いよぉ~」



 俺は新藤君たちにステータスを見せつけてやった。



「ヘタクソって…なんだか評価が随分と辛らつだなぁ」

「そりゃ事実だもの、しょうがないさ」

「初日から少しは変化があったみたいですね」



 そう言って岩井さんはステータスから視線を外し、腰につってあるホルスターに目を向けた。



「まあね」


 俺はホルスターをポンと叩いて見せた。



「へえぇー、それが弾輝さんの武器なんですね」



 王女様は初めて見る銃に興味津々のようだ。



「そうっす、この時代より何世代も後の武器ですね」

「いったいどういう用途で使用するのか見た限りでは皆目見当が尽きませんね」

「簡単に説明すれば鉛でできた弾丸を音と同じかそれ以上の速さで撃ちだす武器ですかね?」

「音よりもですか?」

「音よりもです」



 その後も俺たちは軽い雑談をしてたけど、そろそろ休憩時間も終わりだからってんで二人とも俺に別れを告げて去って行った。



「すみません、私もそろそろ…」

「うん、構わないっす、王女様にもやることありますもんね」

「本当にすみません、何かあったら言ってください、私にできることがあれば何でも致しますので!」



 ん?今なんでもするって…。



 冗談はさておき、俺は去って行く王女様のその姿が見えなくなるまで手を振っていた。



「さて…」



 王女様の姿が完全に見えなくなると、俺はある一点を見つめて声をかけた。



「いるんだろ、出て来いよ」



 俺に声を掛けられもう隠れている意味も無いと判断したのか、三人の男が俺を瞬く間に囲み込んだ。



「はぁ…話してる最中に変な気配がすると思ったら()()()()()()



 こいつらが所謂使徒派と呼ばれる連中、の末端。木端の屑。組織の末端の質が良くないのはどこも同じ様なもので、こいつらは所謂過激派の者達だ。



 神の使徒なら劣っていても敬いましょうというのが使徒派の基本的な考えだ。大体の人はそれを受け入れてるけど、こいつら過激派はそれを許容できなかった連中の集まりだ。



 神の使徒として連れてこられたのなら相応に強く美しくあるべきであるというのが過激派の考え。そのどちらにも該当しないから俺はこいつらに疎まれてるわけだ。 (文句があるなら) (神にでも言え)



 ただこいつらの襲撃はある意味好都合だ。俺はおいそれと外に出られる立場じゃないから実戦経験があまり積めない。だから貴重な実践をさせてくれるこいつらの事は(トレーニング材料として)そこまで悪く思っていない。



 襲撃されるのはこれが初めてじゃない。これまでに何度もこんな風にこいつらは襲撃してくるんだ。そのおかげで気配察知や反射神経動体視力の伸びがすこぶる良い。



「やいこのブタ!また性懲りも無く使徒様たちと話していたな?いい加減にしろ、あのお方たちはお前ごときが軽々と話していい存在ではない!」

「だったらその豚の尻でも舐めてみるかい?申し訳ないけど蠅に尻を舐められて喜ぶ趣味は無いけれども」



 鼻息荒く取り巻きのリーダーらしきバカはほざくが、俺は鼻で笑いながら軽く奴らを挑発してみる。すると奴らは面白いように引っ掛かり、顔を真っ赤に怒り心頭で殴りかかってきた。



「てめぇこの野郎!!」

「フィル袋にしちまえ!」

「使徒の名を驕る豚め!」

「懲りない連中…」



 三人の馬鹿さ加減に呆れながら俺はひたすら繰り出されるパンチやキックをかわしまくった。銃抜いて撃ち殺しちまえばいいんじゃない?って思うかもしれないけど、まだ人を撃つ覚悟ができてないし、そんなことをしたら過激派の連中が騒ぎ立てない訳が無い。



 今は人類が内輪揉めをしている時ではないのだ。



 突如始まった反射神経と動体視力を鍛える訓練は小一時間ほど続き、三馬鹿の体力が尽きるまで行われた。



「ぜ、ぜぇー…はぁー…きょ、今日はこのくらいで勘弁してやる…」

「はぁー…はぁー…お、覚えてやがれ」

「げほっ…つ、疲れた…」

「またねぇ~」



 肩を上下させながら無様に背を向けて足を引きずるように去っていく三馬鹿に、俺は中指を突き立てながら手を振って別れの言葉を送った。



 そんなことをしているうちに訓練場に再び人が入り始めていた。皆これからの戦いに備え、真剣そのものの表情で訓練に取り組んでいる。さっきの不真面目な馬鹿どもとは大違いだ。彼らの爪の垢を呑めば、連中も少しはまともに戻るのであろうか?



 俺がいるこの場所にも人が集まってきていて、何人もの人が的に向かって一心に弓や魔法を撃ちこみ始めていた。



 俺もそれに倣い休憩を止め、呼吸を整えてからホルスターから銃を引き抜き、再び的に向かって銃を撃ち始めた。




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