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3/11

I am trigger happy!!!

 空間が完全に破壊された後もしばらくの間、体は奇妙な浮遊感に包まれていた。視界は完全に真っ白で、その浮遊感も相まって、まるで真っ白な宇宙空間に放り込まれたみたいだった。



 俺は奇妙な浮遊感に身を任せながら、宇宙に出た宇宙飛行士たちもこれと同じような感じなのだろうか?とか考えていた。ぼんやりとそんなことを考えていると、今度はフリーフォールに乗った時みたいな急降下に襲われた。



「みょあああああああああ!!?」



 唐突の事で理解が追いつかず、なっさけない絶叫が口から洩れる。仕方ないじゃないか。絶叫系のアトラクションは苦手なんだ!あんなのに好き好んで乗りたがる連中の気持ちがわからない。どうして進んで恐怖を味わいに行くんです?



 と、軽い現実逃避をしてる間にも落下の速度はどんどん加速していく。恐怖でたまきんが縮み上がる感じがする。もし今の俺の顔を鏡で見たら、きっと真っ青な顔をしているに違いない。



 吐きそうになって思わず下を向くと、真下に小さな点のようなものが見えた。何だと思っていると、その点はみるみる大きくなっていく。最早点ではなくなったそれは、緑と青の色彩に彩られた球状の物体だった。



 そこでやっと物分かりの悪い俺でもそれの正体が分かった。



 そうだ、あれは世界だ。あの神様が言っていた神様が統治する世界。どんどんその星へと俺たちは近づいて行く。いや引き寄せられてゆく。まるで地球の重力に捕まった流星のように。



 成層圏を抜け、雲を突き破り、広い街並みが一瞬だけ見え、その一角にある大きな城に向かって俺たちは急降下。俺は来るべき衝撃の予感に思わず目をつぶる。



 しかしいくら待って持っても衝撃は来ない。備えていた衝撃が来ずに拍子抜けして目をぱちくりして周囲を見回すと、すげー広い中世ヨーロッパ的な広間に俺は立っていた。見上げるとこれまたでかくて豪華なシャンデリア。床はテレビでしか見た事無い様なレッドカーペットが一面に敷かれている。



 目の前には一段と高い玉座の上から王様らしきおっさんが俺たちを見下ろしていた。そして俺たちのやや前に跪いて地面に手をついている召喚を行ったと思わしきシスターの恰好したどえれー美人さん。そして二人を守るように立っている物々しい鎧を着た騎士様方。



 語彙力の無い俺ではすげえすげぇぐらいしか感想が出てこない。だってあからさま異世界召喚の一場面ですよ!しかも俺当事者ですよ!テンションアゲアゲ!頭ふわふわ。お目目ぐるぐる。



 背後にいた男女二人も興味深そうに辺りを見回している。その時の二人の顔は初めて見る物に対する興味と初めて連れてこられた所に対する漠然とした不安が現れていた。。



 その様子を見て始めて俺は二人が手も届かないような神様みたいな存在じゃなくて、年相応の少年少女の様に思えた気がした。まあそれでも彼らが俺みたいなのじゃ一生かかっても手の届かない人なのは変わりが無いのだけれども。



 しばらくすると跪いていたシスターさんが立ち上がり、俺たちに視線を合わせ、迎えるように両手を広げた。



「私たちの呼びかけに応じてくださいましてありがとうございます、勇者様方!私はアルカディア王国の王女エリザベスと申します」



 そこまで言うと王女様は優雅に一礼をして見せた。



 王女様!?マジですかい!?確かになんかそれっぽい風格のようなものを感じたけど、王女様がシスター兼任してるなんてそんなのアリ?



 プロバガンダ目的だろ。



 頭の中の冷静な部分から漏れ聞こえる冷たい一言を頭の奥底へと押し込み、とりあえず挨拶を返そうとしたら背後の二人が横からずいっと出てきて俺の前に立って挨拶を決めた。



「僕は新藤響です、それでこっちが」

「私は岩井輝美です」



 二人は臆すること無く王女様の前に立ち、会話に花を咲かせはじめた。さすが美男美女。挨拶だけでも様になるなぁ。なんというか格の違いをまざまざと見せられているようでちょっと悲しくなってきたぞ。なんて考えながら二人の背中を見つめていると、何とそのまま話が進もうとしているでありませんか。



「ちょ、ちょっと待ったあああああああ!!お、俺、俺もいるよおおおおお!!!」



 と、二人を押しのけて王女様に俺の存在をすかさずアピール。二人は驚いたような顔で俺を見る。何で君らが驚いてんのよ!こっち見んな。



 美男美女の間から突然見るも無残なブサメン(勢いでブサメン何て言ってるけど、そこまでじゃないと思うんだ、かっこいいとかは言われたことは無いけど、可愛いとは言われたことあるぜ!)が出てきてぎょっとする王女様。あっいたのみたいな反応をする騎士様方や王様……っておい!



 騎士様はともかく王様!高いとこから俯瞰して見てるあんたが俺の存在に気づいてないってのはどういうことなのオオオオオオ!?国王が下々を正しく認識できないってのは問題ではなかろうか?ノブレスオブリージュって知ってる?



  (糞が。)



「俺、抜打弾輝、抜打です!お願い無視しないで!」

「あ、あわわわわすみません!」



 あぁ俺をスルーしたのは素なのね。俺の存在を無視していたことに気づいた王女様はすげー申し訳なさそうな顔で頭を下げて謝ってくれた。めっちゃあわあわしてる。かわいい。あ、あと頭を下げる際、修道服の上からでも見える豊かなお胸がめっちゃ揺れてた。すごい!おっぱいって現実にあったんだ!



 無視されてイラっとしたのは事実だけど、このやり取りで彼女が良い人であることを知れたのは収穫だった。ほら、よくあるじゃん?王女様が腹黒っていう展開。そうじゃ無いのが知れたのは今後の生活で重要な事だと思った。後おっぱい。まる。



 まあなんやかんやで俺が認識されるようになり、ようやく話は本題へと進む。



「よく来てくれた勇者諸君」



 と王様、アルカディア王国国王、アルカディア十七世=サンが開口一番に口を開いた。そしてそこから始まる世界観説明とどうして俺らを召喚したかの理由を1時間くらいかけてたっぷりと話聞かせてくれた。



 正直途中から眠たくなったけど、自分にかかわることだから何とか眠けに抗うことが出来た。



 要約するとこの世界、≪リーンフォーサーズ≫に突如魔王が出現し、この世界はこの魔王が世界を支配する~って一方的に近隣の国々に対し戦線布告。大国たちは鼻で笑って塩対応するけど、こいつがまたべらぼうに強いこと。これやばくね?って一つの大国が落とされたのを皮切りに焦り始めた国々は連合軍を編成。魔王討伐に勢い込んだが…全然倒せねぇ!



 魔王の強さもさることながらその直属の配下、将軍共も超強い。しかも魔王は魔物を従える固有能力(オリジナル)(これは後で説明するぜ!)があって、その上強化も出来るときてる。朝も夜も途切れの無い魔物の襲撃、とんでもなく強い魔王に将軍たち。



 連合軍はわずか半年で壊滅。その後何度か戦力集めて魔王と戦ったけど、結果は全戦全敗の燦燦たる有り様。人類はどんどん負け続け、ついにはこの大陸からアルカディア王国以外全部消え去ってしまいましたとさ。えぇ…(困惑)。



 それを上から見ていた神様はさすがにこれ以上人類を減らすのはマズい、とついに重い腰を上げたわけだ。 (おせぇよバカ。)



 そこからの神様の行動は早かった。今から3日前に王女様の夢に神様が現れた。そいで神様は今から手順教えっからその通りにやると良い事あるかもよ(もちろんこれは俺の脚色、本当はもっと長ったらしかったから、要約してみたよ!まあ本筋にはあんま影響ないし、ままえぇやろ)て言われた。



 王女様は跳び起きて城中を駆け回り、その事をみんなに話した。話を聞いた一同驚愕!これマジ!?神様が俺たちを助けてくれるぞ!皆さん大喜び。急ピッチで勇者召喚の準備は整えられ、そして今に至るというわけだ。



 正直そんなこと言われても妄想の類と一蹴されそうなもんだけど、そこは王女様の人柄が力を発揮したわけだ。すごいなぁ。見た目が良いうえ性格まで良いとかこの人弱点あるの?



 これが話の要約になる。頑張って聞いたんだぜ。褒めてくれてもいいのよ?



「以上が今の世界の置かれている状況と諸君らを召喚した理由だ、身勝手は百も承知、しかし、今はなりふり構っている状況ではない、この世界に生きる人類存亡の危機なのだ、どうか私たちに力を貸してくれ」

「えぇ、わかりました、お引き受けします」


 新藤君は特に何か文句を言うことなく二つ返事で王様の頼みを引き受けた。



「…いいのかそんな即決して?」

「言いも何も陛下、私たちは神様に直接頼まれた上こんな事情を聴かせられたら断るに断れませんよ」



 岩井さんは苦笑いを浮かべながら王様に言う。彼女の言い分はもっともだ。人類滅亡の危機。だから王様も切羽詰まってる。心なしか配下の騎士様たちも殺気立ってるし、王女様も良く見るとあまり顔色に優れていないようだった。



 だから説明中すごい必至さが伝わって来たし、だからこそ神頼みしてまで召喚された俺ら(尤も、彼らが期待してるのは新藤君と岩井さんの二人だけだろうけど)に彼らはとんでもなく期待してる。 (いい迷惑だ。)



「そう…か、すまない…」


 王様は頭を下げて俺たちに謝罪した。この娘にしてこの親あり。すごい律儀な人だと思った。同時にこれなら大丈夫そうだという安堵も同時に感じた。



「謝らないでください、悪いのは陛下たちでは無くてその魔王という人なんですから」



 そう言って素晴らしいイケメンスマイルを披露する新藤君。さっきまでの不服気な表情が嘘みたいだ。この切り替えの早さ見習いたいなぁ。



 彼の笑みは何というかものすごく安心できる笑みだった。根拠は無いんだけど、彼なら何とかしてくれるんじゃないかって思えるような、そんな笑みだった。



 騎士様たちはその笑顔に当てられ、どこか暗かった表情はすっかり消し飛んでいた。王女様なんて顔を赤らめて、恥ずかしそうに顔を背けた。あら^~。隣にいる岩井さんはものすごい形相で新藤君を睨んでるけど、当の本人は気付いていない様子だ。これは…鈍感系じゃな?すげー!現実にそんな奴存在するんだ!と俺は一人感動した。



「悪いのは魔王…か、確かにその通りだな」

「そうです、僕たちもあなたたちも魔王の被害者なんです」



 そう言って二人はしばらく笑いあった。



「ふぅ…さて、では説明の方はこのくらいでいいだろう、では次に諸君の神の使途としての力を調べるとしよう、おい、あれを」

「「はっ!」」



 ひとしきり笑い終えた王様は近くにいる騎士様に何かを持ってくるように命令した。騎士様たちは王様に敬礼すると、えっちらおっちら俺たちの前に大きな鏡台を持ってきた。鏡は金の縁取りが施されていて、天使の羽のような飾りが左右についており、見るからに神聖そうな雰囲気を放っていた。うへぇ、あれ絶対高いぜ!



「これは真実の鏡という魔道具だ、こいつを使って君たちが持っている能力を確認する」

「神様が言っていた目覚めさせていた能力というやつですね?」



 岩井さんが確認するように王様に言う。



「む?知っていたか、なら話は早い、早速だがその鏡の前に立ってくれ、そうすれば君たちの力がその鏡に映ってくれるはずだ」

「じゃあ僕が一番だ」

「次がわたしで、申し訳ないけど抜打さんは最後でいいですか?」

「いいですぜ」

「決まりだね、では失礼してっと」



 新藤君は軽く断りを入れてから、鏡の前に立った。しばらくは何も起きなかったけど、次第に鏡がうっすらと光始めた。光はどんどん強くなり、最高潮に達すると爆発の様な強烈な閃光が放たれた。俺たちはその光量に思わず目を瞑る。



 光が収まり、新藤君は恐る恐る鏡の方へ目を開ける。鏡は未だ光っていて、薄っすらと文字らしきものが浮かんでるけど、まだ変別出来るほど光は弱まっていなかった。困惑して俺たちに振り替える新藤君だけど、その直後に鏡から祝福のファンファーレが聞こえた。



「わ、何だ!?」



 新藤君はびっくりしながら顔を鏡に戻すと、その鏡面にはうすぼんやりとしか見えなかった文字がはっきりと見えるようになっていた。なんというかマジでガチャの演出みてーだな!



「おぉ…今までこの鏡で能力を映したことは数あれど、これほど大掛かりな演出が出た例は近年ではわが娘くらいだ…!これは期待できるぞ!さあ響、君の能力を確認してみてくれ!」

「は、はい!」



 言われるまでも無く、新藤君はもうとっくに鏡に出た内容を読み始めていた。




 |・新藤響

 |・♂

 |・18歳

 |・レベル1

 |・次のレベルまであと5EXP

 |・ちから60

 |・ぼうぎょ50

 |・まりょく20

 |・すばやさ60

 |汎用能力(コモン)『剣術3』『身体強化1』『直観4』『光魔法1』

 |固有能力(オリジナル)神の剣(ブレイブ・ソード)

 |称号 

 |神の使徒 英雄 剣の達人 博愛主義者 鈍感者 極東のサムライ



「何だと!?」

「これがレベル1のステータスだって!?馬鹿な!」

「なんと高いパラメーターか!」

「これが神の使途だというのか…!」

「いける、いけるぞ…!」



 鏡に映った新藤君の情報を見るや、王様たちはやにわにざわつきだした。異常な熱気に包まれた空間の中、俺は彼のステータスの一部が気になって仕方が無く、その部分を凝視しながら思った。



(と、年上…だと…!?)



 思わず新藤君を仰ぎ見る。彼のイケメン(フェイス)をよく見れば見れば、確かに年上っぽい雰囲気がある様な気がしないでもない。が、うむむむむ…、何か釈然としないぞ。



 しょうもない事で硬直している俺のことなど知ったこっちゃなく、当の本人はというと何が凄いのか凄くないんだよくかわかっていない様子で岩井さんに振り返った。



「ね、ねぇ輝美、僕のこれってすごいのかなぁ?」

「比較対象もありませんし私には何とも言えません、ただこの反応を見るに、悪くないのではないですか?」

「よくわからないや」

「いえ響さん、これは凄い事ですよ!」



 そう言って頬をかく新藤君に、興奮した様子のお姫様が力説する。



「そうなの?」

「そうです!本来レベル1で全パラメーターが2桁なんてありえないんです、精々1つ2つが10あればいい方なのです!なのに響さんときたら!これは神様の召喚的にも大成功ですよ!」

「この汎用能力(コモン)っていうのと固有応力(オリジナル)っていうのは?」

「汎用能力というのは文字通り、誰でも訓練次第で習得可能な能力です、汎用能力にはランクが存在し、鍛えれば上がり、その効果も増大していくのです!ちなみに上限は5までです」

「固有能力は?」

「固有能力は汎用能力と違い、素質ある限られた人しか持たない特別な能力の事です、固有能力は人によって千差万別、同じものが一つとして無く、そのどれもが強力であり、まさに特別、まさにその人だけの能力(オリジナル)!」



 あらお姫様が全部説明しちゃったや。まあいいか。



 鼻息荒く語る王女様に若干引き気味な新藤君を横目に、今度は岩井さんが鏡の前に立った。鏡はまた強烈な閃光を放ち、岩井さんの能力を映しだしてくれた。




 |・岩井輝美

 |・♀

 |・18歳

 |・レベル1

 |・次のレベルまであと5EXP

 |・ちから30

 |・ぼうぎょ30

 |・まりょく80

 |・すばやさ70

 |汎用能力(コモン)

 |『弓術3』『身体強化1』『結界術1』『光魔法1』『風魔法1』

 |固有能力(オリジナル)

 |『神の弓(セイントアロー)

 |称号 

 |神の使徒 弓術の達人 極東の巫女 恋に燃ゆる乙女 幼馴染ヒロインは…。



 岩井さんも例にもれず能力ガチャSSRを引き抜き、またも大興奮の嵐が巻き起こった。さっきまでの暗い顔は何処へやら。まだ戦ってもいないのに勝ったな(確信)、とまで言う人が出る始末。何だこれ。



 はえ~岩井さんは弓道部だったんだねぇ~。確かによく見てみれば、何というかたたずまいがそれっぽいというか何というか。背筋とか女の子と思えないくらい発達してそう。(糞偏見)  



 それに巫女属性持ちじゃったか。ていうか新藤君と幼馴染なのね。ならあの距離の近さも納得だ。いいなぁ幼馴染巫女ヒロイン。…幼馴染ヒロインは勝つ。これは絶対だ。当り前だよなぁ。



 ひとしきり岩井さんのステータスで盛り上がったところで、とうとうおいらの番が回ってきた。連続でとんでも無い結果が出たためか、みんな期待に満ちた目で俺を見ている。ものっそい体をがちがちに緊張させながら、俺は鏡の前に立つ。



 鏡が岩井君たちと同じような閃光を放つのを確認しながら、どうか俺もSSR能力の神引きでありますようにと一心不乱に心の中で祈った。



 光が収まるまで俺は目を閉じ、あのファンファーレが聞こえると俺はゆっくりと目を開けて自分の能力を確認した。



「な…!?こ、これは…!」



 能力を見た俺は思わず目を見開いた。



 |・抜打弾輝

 |・♂

 |・17歳

 |・ランク-

 |・ライフ■■■■■

 |・命中率-%

 |・総スコア-

 |・次の報酬獲得まで100ポイント

 |アビリティ-

 |使用可能武器 初期リボルバー

 |固有能力(オリジナル)

 |『ガン・シューティング・アクション・リアル』

 |称号

 |神の使徒 ふにゃふにゃした来訪者 射撃の初心者



「えぇええええええええええ!!?」



 次に口から出たのは驚愕の絶叫。



 そりゃそうでしょ!確かに俺はガンシュー好きよ。下手だけど。でも自分の能力にしたいだなんて思ったことはこれっぽっちも無いぞ!ナンデ!?ガンシューナンデ!?アババババーッ!!!サヨナラ!(現実逃避)



 え?もしかして召喚される前にガンシューやってたからこの能力が出たの?そんな!もしそうなら俺絶対他のゲームやってたのに!絶対ギンダムとかロボアクション系やってたのに!!!嫌あああああああ!リセマラさせてええええええええ!!!



 もちろん俺の願いなど聞き届けられることなく、話はどんどん進んでいく。



「ガン・シューティング…?何だそれは?」

「汎用能力が一つも無いな、う~むこれは…これは?」

「ところどころ見慣れない欄があるな、命中率?ランク?ダメだ、分からん」

「なんかしょぼいなぁ~、何かの間違いじゃないか?」

「いや間違いではないだろう、称号の欄に神の使徒とある、ならこれは疑いようがない」

「ふにゃふにゃってなんだよ?(当然の疑問)」



 新藤君や岩井さんの時と打って変わって場は完全に困惑ムードに切り替わっていた。皆さんもすごく困惑してる。うん、気持ちは分るよ。ていうか俺が一番よくわかってないもん。何だよガン・シューティングって。何だよリアルって。馬鹿にしてんのか。



「あ、あの~弾輝さん、ガン・シューティング?とは一体どんなものなんですか?」



 頭の上にいっぱい?マークを浮かべた王女様はおずおずといった様子でガンシューがどんなものか聞いてきた。



「え?あ~はい、あのですね、ガンシューとはですね」



 聞かれたからには答えねばならない。俺はガンシューの大まかな概要をお姫様に伝えて見せるけど、やっぱよく分かっていない様子だった。そもそも理解してくれてるのかすら怪しかった。



 まあそうだよね。そもそもこの世界にゲーム何てそれこそチェスとかトランプくらいしかなさそうだもん。ガンシューなんて言われたってちんぷんかんぷんだよね。色々説明したけどあまり反応が芳しくなかったから、結局何世代か後のゲームの一種ですと言うしかなかった。



「あ~…その、だ、大丈夫だよ!人の魅力はステータスだけじゃないから!きっとこれから先良い事あるって!」

「ま、まぁ字面だけではどんなものかはわかりませんし、そう悲観することは無いのでは?」



 そう言って肩に手を置いて二人は慰めてくれるけど、全然うれしかないや!



「そ、そうですよ!少なくとも弾輝さんは神の使徒であることは証明されてるんですから、そんなに気を落とさないでください!」



 王女様も困惑しながら俺を慰めようとしてくれるけど、半ば呆然としている俺の心にはまったく響いてこなかった。



「ひ、引き直し、引き直しを所望する!」

「む、無理です!固有能力はその人の素質そのものなんです!弾輝さん負けを認めてください!」



 鏡に掴み掛って能力の引き直しを渇望する俺を、お姫様は引きはがしながら残酷な真実を告げた。ていうか力つよ!?俺結構な力でしがみついてたのにあっさりと引きはがされたぞ!ゴリラかよ。



「うぉおおおおおおん!!!」

「往生際の悪い…」

「うわぁ…すごい必至さだ…」



 それでもまだ現実を認められない俺は鏡に縋りつこうとするけど、王女様の力はものすごく強くて俺は無様に引きずられるばかりだった。新藤君と岩井さんは泣き叫ぶ俺をみてドン引きしてるけど、逆の立場だったら君たちだって似たようなことになるんだからな!



「うわああああああん!!」

「あ、あわわ…」



 困惑ムードの空間に、俺の慟哭が響き渡った。






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