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君が成す名を  作者: 岩木 久四郎
4/5

3人

今日も学校。いつも通りに適度にノートをとりながら、ときどき窓の外を見て過ごす。何かを思う訳では無いが、悪くない時間だと感じる。


そういえば、今日は島中さんって人と会うんだったな。確か部活を作りたいとか。


作らなきゃいけないってことは、やる人が少ないことで、今は学校にない、という条件があるが、思い当たるようなものは特にない。

運動部でも王道的なバスケ、野球、サッカー、テニス、陸上、水泳、柔道などはあった。


文化部でも軽音部、演劇、吹奏楽、美術、新聞などもあったはずだ。個人的に帰宅部もこの中に入れてほしい。ありえないが。

まぁ考えても答えは出ない、話を聞いてみよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昼休みになり、俺は昨日と同じように、購買で鮭おにぎりとコロッケパン、カフェオレを買った。そして屋上へ行き、桜井さんを待つことにした。

5分ほどたち、出入口のドアが開く


「あ!憂依くんいたよ。花凛ちゃん!」

桜井さんが後ろに呼びかけながら出てくると、後ろから黒髪ポニーテール姿の女の子が現れた。


「君が榊くんか。私、島中花凛です。よろしく」


「あ、はい、榊です。よろしく」

礼儀正しくお辞儀する島中さんにつられて、俺も頭を下げる。


「えっと、流子ちゃんから話は聞いたと思うんだけど···」


「うん、部活を作りたいって話だろ?」


「そうそう!花凛ちゃん話してあげてよ」


「うん、私が作りたい部活はね······ボランティア部、なの」


「ボランティア?ボランティアって、あの?」


「どのかわからないけど、多分あってるよ」


「どんなことするの?」


「内容は想像してるのとそんなに変わんないかな。地域での清掃に参加したり、イベント企画手伝ったり。ひとつ違うのは、学校内でも活動するってことかな」


「なるほど、そりゃなかなか人集めが大変だな」


「え?」


「ボランティア、学生が進んでやりそうもないことだ」


「そう、今の一番の問題はそれ。今入ってくれるって言ってるのは、桜井さんだけかな」


「へぇ、桜井さんは入ることにしたんだ」


「うん!私も別にやりたいことなかったし、花凛ちゃんは高校で初めてできた友達だしね!」


「できたらそういうのは無しでお願い。流子ちゃん」


「わかってるって、人の役に立ちたいってボランティア精神に心を任せてみるよ」


「そう、それならよかった。嫌なのに参加してもらってもボランティアの意味なしだからね。あ、それでどうかな、榊くん。もちろん断ってくれてもいいからね」


「そうだな···。まぁ人が足りないんなら、入るよ」


「いいの!?」

「ああ」


「場合によっては休日返上かもしれないよ?」


「休日も特にやることないしな、別にいいよ」


「ありがとう!助かるよ!よーし、これで部員3人だ!」


立ち上がり、嬉しそうに跳ねる桜井さん


「って、なんで私より先に流子ちゃんがお礼言うの!?」


「あはは、紹介する立場だったから、どうなるのか少し緊張してたんだよねぇ」


「なにそれ」


3人で笑いながら、俺は桜井さんが以前話していた「名前の意味」が少しわかった。流子に使われた、流という漢字についても。


「それはさておき、あと一人ってことは、部員は4人必要なのか?」


「うん、規定で4人以上じゃないと部活としては認められないって」


「へぇ、もう誰かあてはあるのか?」


「ぜーんぜん。さっき言ったように、みんなボランティアやりたがらなくってさ」


「ん、まぁ当然か。普通なら好きなことしたいしな」


「でも今日は榊くんのおかげで本当に助かった!ありがと!」


「ああ。ふたりとも、これからよろしくお願いします」


「うん!」「こちらこそ!よろしく」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あの後も普通に授業を受け、放課の時間となった。家に帰りながら、昼休みのことを思い出していた。


ボランティア部か···俺がなぁ…。

なんにしろ、部活に入るんなら親父に言わなきゃ、だよな···。


玄関の戸を開け、「ただいま」と一言。返事が返ってくることは無い。

母の死から10年、親父は俺を養うために仕事ばかりになっていったからだ。

俺のためとわかってはいても、幼少期の俺に、誰もいない家に帰るのは少しきつかった。


今ではもう慣れたものだが、俺と親父の間には、大きいという程ではないかもしれないが、確かな溝ができていた。

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