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発想その1 事件は会議室で起こらない

600点ってまた微妙にちっさいなあ、という突っ込みがあって成り立つ連載です。

100点でも俺にとっては目標だよ!という底辺仲間が見に来るのかと思いきや、二桁多い方などからコメントいただいたりしてちょっとビックリしているこの頃です。

考えすぎると難しくなってしまうので、勢いで……




今回のお題ですが、しくじりの例として、一人で書いてる作者にありがちな、「作者脳内会議を文中に書いてしまう現象」をとりあげます。

かんたんに言っちゃえば、「その設定、考えついたからって書かなくていいよ」って話ですね。


本題に入る前に軽く自己紹介しておきますと、私の場合、初めて小説を書いてから、一年ほど経ちました。

なろうに投稿するのが初めてって意味じゃなくて、純粋に小説を書くのが初めてでしたが、中の人はおっさんです。


中年のおっさんが、なんでまた急に小説を書き始めたかというと、最初は息子が読んでるネット小説を見ていて、これなら俺にも書けるんじゃね?って思って、ちょっと何か書いて投稿して、息子に見せて「父さんもちょっとしたもんやろ(ドヤァ)」ってしたかったっていう、しょうもない動機です。

この辺は、「父が息子に、オンライン小説を書く。」とか別のエッセイにも書いてるんですけどね。

他の作品を読まなくても済むよう、この作品の中でも、ちょっとずつ自己紹介していきます。


本題に戻ります。


「作者脳内会議~現象」というのは、「自分の考えたこと」と「作品として他の人に見せる文章」との切り分けができていない、もしくは切り分けようとしていないときに発生します。

というか、そういう「しくじり」に対して、私が命名しました。いま。


お芝居の舞台で、舞台裏から見ている光景と、客席から見ている光景と言ってもいいでしょうか。

そこにあるものは同じです。

でも、表現には裏と表があって、同じ場合もあればつくりが違う場合もあります。

見え方は当然違います。

張りぼての森や木の裏側には、支えの棒や足があるかもしれません。


ですが、大道具のスタッフ向けの講習会ならばともかく、普通の観客は、その張りぼての構造や工夫には興味などありません。

その場面がどういう場所でどんな雰囲気なのかが伝わってこれば、それで十分なのです。


と、よくある話を改めて書いていても仕方がないので、実例で何がまずかったのかを示します。


単なる例なので、さらっと読み飛ばしてもらって結構です。

「どういう印象、感想を持ったか」だけ、ぼんやりと覚えてもらえばよいでしょう。


第一作目である「疑似人格がクラフトしたり冒険したりする話 ★1」から、第2部分の中盤部分です。


ちなみに、★1~★3という印が付いている作品を使って、しくじりや力量不足の実例としていくつもりです。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


そのウェブサイトの片隅に、テスター募集の小さなバナー広告を見かけたことが一つの始まりだった。

小規模VR環境のテスター兼データ収集の人員募集であった。


オンラインでの募集告知なのにオフラインでの採用試験と面接があり、それでいて時給も今一つ。短時間の不規則勤務でよい点がかろうじて一般的なメリットとも言えたが、村雨にとっては大きなアドバンテージがあった。勤務地まで徒歩で数分という圧倒的地の利である。

自宅で過ごす暇な時間帯を現金化できると思えば単価の低さは気にならなかったし、ネット小説サイトのリンクという意味では、新しい物語を試し読みするような感覚さえあった。


そして説明会兼採用試験当日。

募集は不定期かつ何度も行われている雰囲気で、会社側の案内も手慣れている。今回は村雨のほかに8人が会場に集まっていた。会場はそれほど大きくないオフィスビルの会議室で、同じフロアにオフィスがある。

高校生や大学生くらいの年代を中心に、スーツを着て社会人っぽい女性もいるが、部屋着に近いレベルのカジュアルな服装が多い中で、少々浮いている。


時間になり、スタッフが会社の業務内容について簡単な説明を始める。

いわゆるVRMMOそのものではなく、その前提となる各種エンジンを構築するための、それも予備的な調査を実施している会社であること。


取引先としては、マスメディアでVR関連のニュースをふんだんに振りまいている有名企業もあり、今回のアルバイトで集められたデータも、そちらの開発事業で使われる可能性があること。


応募者たちは会議室の机で思い思いの姿勢で席に着きつつ、VRと聞いて興奮を隠せない者もいる。


「では、皆さんに従事していただく業務内容について具体的に説明していきます。」

スタッフの声に、ゴクリと誰かがつばを飲み込む音が聞こえてきた。


「大きく分けて、二つの業務があります。

一つがVR環境で様々な活動を行っていただき、そのデータを収集すること。

もう一つが、皆さんの『ゴースト』の複製を行い、提供していただくことです」


「VR環境での活動というのは、ゲームのテスターに近い内容ですが、ゲームのテスターとの違いとしては、VR環境を皆さん側がどのように認識し、解釈するかを測定して記録していくことにあります。


難しく考えていただく必要はありません。

様々なVR環境でいろいろな体験をしていただき、どんな環境を整えれば皆さんが満足できる疑似体験ができるか、その仕様を想定するためのデータ収集ということです」


「実際の勤務としては、お好きな時間にこちらに出社していただき、専用端末でログインして、用意されたワールドで簡単なミッションを順番にこなしていく形になります。

時給で給料が支給されるほか、レポート等の提出でわずかですが追加の手当もあります。」


「同時に、皆さんの『ゴースト』の複製の準備をします。

こちらは、脳神経の構造の撮影が数回、あとはテスターとしての活動中に脳波のモニタリングを行い、のちにそれらを一体化して、『ゴーストイメージ』と呼んでいますが、一種のプログラムとして固定するものです。

撮影は、高精細MRIを利用しますが、感度の高いものを用意していますので健康への影響はほとんどありません。撮影以外の作業は、特に皆さんに意識していただくことはありません。」


「ダビングしたゴーストには、皆さんの部分的な記憶や思考パターンなどが反映されます。

記憶は、ごく最近のものについてはある程度鮮明に、それ以外は日常生活に強く結びついた安定的なものだけが転写されると考えられています」


「ゴーストは、各種テストやシミュレーションを高速かつ長時間連続で稼働させるために使用します。

ゴーストは、クローズド環境で構成される当社のサーバ内のみで稼働させ、記憶に含まれる個人情報等の機密は保持されます。

プログラムそのものに対する皆さんの権利は放棄していただくことになりますが、記憶の内容の著作権等は皆さんに帰属します」



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


こんな感じで、あと2話にわたって、五千字くらい会議室や別室での質疑応答の形で、設定の説明が繰り広げられます。


さて、いかがでしょうか。

お仕事の説明を受けている場面なので、実際楽しい状況ではないわけですが、多くの人にとっては、ぶっちゃけ何故これを読まされるのか? これ、どこまで覚えとかなきゃならないん? と疑問を抱くレベルでしょう。


挿絵として、17部分まで投稿した時点での、アクセス解析の結果も載せておきます。

一桁の数字が大半で、そこそこの作品を書いている方からは苦笑が漏れるような表ですが、ポイントが付かない作品なんてこんなものです。

少ない日はもっともっと少ないです。


挿絵(By みてみん)


部分別アクセスで言うと、1部分目を読んだのが4人、ここに紹介した2部分まで行ったのが3人、これを超えて3部分目に進んだのは1人です。

グイグイ減っていますね。

これが、二作目、三作目になるにつれ、序盤で減らなくなっていくのですが、それはまた別の回で。


ちなみに、この時は、初日に露出度を高めた方が良かろうという考えと、最初の方は設定の説明ばかりで読み飛ばしたい人もいるだろうと考えて、5話分を一日で投稿しています。


挿絵(By みてみん)


土曜日の午前中に4回投稿、夕方に1回投稿です。

当日の部分別アクセスが、以下のような結果です。


挿絵(By みてみん)


第1部分「プロローグ」     :29人

第2部分「採用試験の日」    : 8人

第3部分「採用試験の日(2)」 :15人

第4部分「採用試験の日(3)」 : 8人

第5部分「異世界転生したのに無双というにはちょっと… ─アインの章─(1)」    :21人


ジャンルがVRなのと、今よりもっとSF寄りのタイトルだったこともあって、初日でもアクセスは少なめです。

5話目からサブタイトルに「転生」と入れているので、プロローグを見て、第3部分をちらっと見て、第5部分を見て、というチェックの仕方をした人が多かったことが見て取れます。

第5部分を投稿したのが夕方だったことを考えれば、最初から第5部分を見に行った人も多いかもしれません。


ちなみに、VRなの?転生なの?と混乱するかもしれないので補足しておきますと、このシリーズでは「ゴースト」という疑似人格がシミュレーター上で色々な体験(冒険)をするという無駄に複雑な形を取っていて、この作品の主人公である「アイン」は、自分がゴーストであることも架空世界であることも知らず、「異世界に転生した」と思い込んでいます。


で、次の作品の主人公である「ツヴァイ」は、同じオリジナルから作られた二番目のゴーストで、自分を人間と思い込んでいるのはアインと共通しているものの、作られた世界に入り込んでいるという認識はあるという違いが設定されています。

この辺りは、「自分の構成力もわからないのに凝った世界観や構造を持ち込むというしくじり」として別の回で取り上げたいですが……


スタートダッシュを掛けたい方は、最初数話のサブタイトルの見せ方も重要なのでしょうね。


ちなみに、この時点でブクマは0だったと思いますが、その原因は、いま上に書いた要素も大きいでしょう。

「転生」と書いてあれば、その前までは転生前の生活のちょっとした小話という作りがテンプレだと思われます。


序盤を読み飛ばしている読者からすれば、まさか、「転生したと思っている疑似人格」の話だとは思うまい……


ごちゃごちゃとした展開になってしまいましたが、本題に戻ります。


物語を書き始めたときに、つい、現実の仕事のように流れを考えてしまったのは、小説を書く経験がないのに文章は仕事でよく書いていることの副作用でしょう。

自分がこんな仕事をするなら、何を考えるか、という、先ほどの例で言えば大道具のスタッフの視点なのです。


「現実感」は出るかもしれませんが、そこでは物語は始まらないのです。


事件は会議室で起こらない。

起こるとしたら、その部屋は会議室としての機能ではない何かの働きをしているんです。

お弁当食べたりとか。


書いてみたら意外と大変で!

思い付き書き殴るだけでいいかな、ってならなかった……

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